35Q2|第35回 介護福祉士国家試験 過去問
Aさん(25 歳,男性,障害支援区分 3 )は,網膜色素変性症(retinitis pigmentosa)で,移動と外出先での排泄時に介助が必要である。同行援護を利用しながら,自宅で母親と暮らしている。音楽が好きなAさんは合唱サークルに入会していて,月 1 回の練習に参加している。合唱コンクールが遠方で行われることになった。同行援護を担当する介護福祉職は,Aさんから,「コンクールに出演したいが,初めての場所に行くことが心配である」と相談を受けた。 介護福祉職のAさんへの対応として,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
解答・解説を見る
正解: 3
正答
3.一緒に交通経路や会場内の状況を確認する。
この問題のポイント
Aさんは、合唱コンクールへの出演を希望しています。困っているのは「参加したくないこと」ではなく、初めての場所へ安全に行き、会場内で行動できるかという不安です。
本人の希望を諦めさせるのではなく、不安の内容を具体化し、必要な情報と支援を一緒に準備することが自立支援です。
解説
同行援護は、視覚障害によって移動に著しい困難がある人の外出に同行し、移動に必要な情報の提供、移動の援護、外出先での排泄や食事などの介助を行う障害福祉サービスです。社会参加や余暇活動のための外出も支援の対象になります。
Aさんは、合唱活動を大切にし、コンクールに出演したいという明確な意思をもっています。介護福祉職は、その意思を出発点にして、何が心配なのかを具体的に確認します。例えば、利用する交通機関、乗換え、駅から会場までの経路、会場の入口、受付、控室、舞台、座席、トイレの位置、混雑状況などです。
事前に交通経路や会場内の状況を調べ、必要に応じて主催者へ問い合わせることで、不確実な点を減らせます。Aさんが理解しやすい方法で情報を伝え、当日の支援方法を一緒に決めることが重要です。
同行援護を利用しているからといって、介護福祉職がすべてを決めるのではありません。Aさんが選択し、準備に参加できるように支援します。また、家族やサークル仲間の協力を得る場合も、まず本人の希望と同意を確認します。
ひっかけポイント
危険を避けるために活動を諦めさせることは、自立支援ではありません。危険や不安の内容を具体化し、環境調整と必要な支援によって、本人の希望を実現できる方法を検討します。
介護実践でのポイント
初めての場所への外出では、移動経路だけでなく、トイレ、休憩場所、混雑、緊急時の連絡方法まで確認します。本人が不安に感じている点を一つずつ聞き、本人と一緒に準備します。
選択肢の確認
1.合唱コンクールへの参加を諦めるように話す。
適切ではありません。
Aさんは出演を希望しており、参加が不可能である事情は示されていません。不安を理由に希望を断念させるのではなく、安全に参加するための情報と支援を整えます。
2.合唱サークルの仲間に移動の支援を依頼するように伝える。
適切ではありません。
仲間の協力が役立つ場合はありますが、同行援護を担当する介護福祉職が支援を仲間へ一方的に委ねる対応ではありません。まずAさんの希望を確認し、専門的な移動支援を含めた方法を一緒に検討します。
3.一緒に交通経路や会場内の状況を確認する。
正答。最も適切です。
Aさんの参加希望を尊重し、初めての場所に対する不安を具体的な準備によって軽減する対応です。本人と一緒に確認することで、自己決定を支えながら安全な外出につなげられます。
4.合唱コンクールに参加するかどうかは,母親に判断してもらうように促す。
適切ではありません。
Aさんは成人であり、参加するかどうかを決める主体はAさん本人です。必要に応じて母親の意見や協力を得ることはあっても、本人の意思を確認せずに判断を母親へ委ねてはいけません。
5.日常生活自立支援事業の利用を勧める。
適切ではありません。
日常生活自立支援事業は、判断能力が不十分な人に対して、福祉サービスの利用援助や日常的な金銭管理などを行う事業です。初めての会場への移動や外出先での介助に関する今回の相談には、同行援護による準備と支援が適しています。
覚えるポイント
同行援護は、視覚情報の提供、移動の援護、外出先での排泄・食事などの介助を行います。
本人の社会参加の希望を尊重し、不安や障壁を具体化して取り除きます。
成人利用者の意思決定を、家族や支援者が当然のように代行してはいけません。
外出支援では、経路、会場内の配置、トイレ、混雑、休憩、緊急時対応を本人と一緒に確認します。