37Q110|第37回 介護福祉士国家試験 過去問
次の事例を読んで、問題110、問題111について答えなさい。 〔事 例〕 Aさん(78歳、男性、要介護1)は、一人暮らしで、脳梗塞(cerebral infarction)を発症し入院した。その後、リハビリテーションを経て、自宅に戻った。利き手の右手に麻痺{まひ}が残ったため、左手を使った調理の自立を目的に、訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用することになった。サービス利用時は、訪問介護員(ホームヘルパー)の協力を得ながら、孫からプレゼントされた包丁を使って、調理に取り組んでいた。 ある日、好物の牛肉をうまく押さえることができず、切ることができなかった。すると、Aさんは包丁を置き、部屋で横になってしまった。心配した訪問介護員(ホームヘルパー)が声をかけ、バイタルサインを確認したところ変化はなかった。Aさんは、「右手が思うように動いてくれない。悔しい。でも、もう一度ひとりで作れるようになりたい」と話した。 次の日、Aさんは、「今日も手伝って」と訪問介護員(ホームヘルパー)に話した。 調理中にAさんが包丁を置き、部屋で横になってしまった行動に対する解釈として、最も適切なものを1つ選びなさい。
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正解: 5
正答
5.調理がうまくできないことに対する苛立{いらだ}ち
この問題のポイント
利用者の行動を解釈するときは、行動だけを見て決めつけず、その前後の状況、本人の言葉、心身の状態などを関連づけます。Aさんは調理に失敗した直後に横になり、「悔しい」と話しているため、調理がうまくできないことへの苛立ちと解釈できます。
解説
Aさんは脳梗塞によって利き手の右手に麻痺が残り、左手で調理できるようになることを目指しています。孫からプレゼントされた包丁を使い、訪問介護員の協力を得ながら継続して調理に取り組んでいました。
この日は、好物の牛肉を押さえられず、切ることができなかった直後に包丁を置き、横になりました。訪問介護員がバイタルサインを確認しても変化はなく、Aさん自身が「右手が思うように動いてくれない。悔しい」と話しています。この発言は、調理が思うようにできないことへの苛立ちや悔しさを直接示しています。
一方、「もう一度ひとりで作れるようになりたい」と話し、翌日も「今日も手伝って」と依頼しています。調理への意欲は失われておらず、むしろ自立に向けて再び挑戦したいという意思があります。したがって、横になった行動を、調理への興味の喪失や単なる拒否と解釈するのは不適切です。
行動を解釈するときは、「包丁を置いて横になった」という客観的事実と、「苛立っている」という解釈を区別します。そのうえで、行動直前の出来事、本人の発言、バイタルサインなどの根拠を結びつけます。
ひっかけポイント
横になったという行動だけを見れば体調不良にも見えますが、事例ではバイタルサインに変化がなく、本人が「悔しい」と理由を語っています。事例問題では、本人の直接的な発言を重要な根拠として使います。
介護実践でのポイント
まず体調不良や再発などの可能性を確認した訪問介護員の対応は重要です。安全を確認した後は、「うまくできなくて悔しかったのですね」と気持ちを受け止め、本人の意欲やできていることを確認します。観察した事実と本人の言葉を記録し、サービス提供責任者へ共有します。
選択肢の確認
1.体調不良による休憩
誤りです。 訪問介護員が確認したバイタルサインに変化はなく、Aさんは体調不良ではなく、右手が動かず調理できないことへの悔しさを話しています。
2.食材に対する不満
誤りです。 牛肉はAさんの好物です。食材そのものへの不満を示す発言もなく、問題は牛肉をうまく押さえて切れなかったことにあります。
3.調理に対する興味の喪失
誤りです。 Aさんは「もう一度ひとりで作れるようになりたい」と話し、翌日も支援を求めています。調理への興味や意欲は保たれています。
4.包丁に対する不満
誤りです。 包丁は孫からプレゼントされたもので、Aさんは継続して使用しています。包丁への不満を示す発言はありません。
5.調理がうまくできないことに対する苛立{いらだ}ち
正しいです。 食材をうまく押さえて切れなかった直後の行動であり、Aさん自身も「右手が思うように動いてくれない。悔しい」と話しているため、調理がうまくできないことへの苛立ちと解釈できます。
覚えるポイント
- 行動だけで決めつけず、前後の状況、本人の言葉、心身の状態を関連づける。
- 客観的事実と介護福祉職の解釈を区別する。
- まず体調変化や安全上の問題を確認する。
- 「悔しい」という発言が、苛立ちを判断する直接的な根拠である。
- 一時的に行動を中断しても、意欲を失ったとは限らない。