38Q124|第38回 介護福祉士国家試験 過去問
次の事例を読んで、問題123から問題125までについて答えなさい。 〔事 例〕 Aさん(50歳、男性、障害支援区分4)は、1年前の交通事故の後遺症で、右片麻痺{みぎかたまひ}、高次脳機能障害(higher brain dysfunction)、失語症(aphasia)となった。現在は障害者支援施設で生活している。日中は、車いすに座って過ごしているが、すぐに右肩が下がり上半身は右へ傾いた姿勢になる。ある日、B介護福祉職がAさんに姿勢の傾きを直す方法を伝えようとすると、Aさんは大声でどなり、物を投げた。B介護福祉職は、以前からAさんとのコミュニケーションに悩んでいたため、C介護主任に相談することにした。C介護主任の問いかけに答えるなかで、B介護福祉職は自分自身の言動を振り返ることができ、Aさんに伝わらない焦りと、子どもに言い聞かせるような口調が、Aさんの感情を害していたことに気づいた。その後、コミュニケーション方法を工夫し、Aさんに姿勢の傾きを直す方法を説明し、同意を得ることができた。 毎週、Aさんは妻との面会を楽しみにしている。しかし、妻はAさんの将来に不安を感じて、B介護福祉職に、「夫の障害について、情報交換や勉強がしたい。そのようなところがあれば紹介してほしい」と相談した。 B介護福祉職は、Aさんが車いすで良肢位を保つことができるように、クッションを使用することにした。まず、B介護福祉職はAさんの上半身を起こし深く座り直してもらった。 次のうち、B介護福祉職がクッションを挿入する位置として、最も適切なものを1つ選びなさい。
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正解: 5
正答
5.右上肢と右アームサポートの間
この問題のポイント
右片麻痺のあるAさんにみられる「右肩の下がり」と「上半身の右への傾き」に対して、どこを支持すればよいかを判断する問題です。
右上肢を右アームサポート上でクッションによって支えると、麻痺側上肢の重みを受け止め、右肩の下垂と体幹の右傾きを軽減しやすくなります。
解説
車いすで安定した座位を保つためには、まず骨盤を起こし、臀部を座面の奥まで入れて深く座ることが基本です。事例では、B介護福祉職がAさんの上半身を起こし、深く座り直してもらっています。この基本姿勢を整えたうえで、残っている左右差に合わせて支持を加えます。
Aさんは右片麻痺があり、右肩が下がって上半身が右へ傾きます。麻痺側の右上肢が十分に支えられていないと、腕の重みが右肩を下方へ引き、体幹も右へ傾きやすくなります。右上肢と右アームサポートの間にクッションを入れて、前腕や肘を適切な高さで支えると、右上肢の重みを受け止め、肩の位置と体幹の左右バランスを整えやすくなります。
クッションは、ただ厚いものを入れればよいわけではありません。高すぎると肩を持ち上げて痛みや緊張を起こし、低すぎると十分に支えられません。肩、肘、手関節が無理のない位置になっているか、右肩の痛み、皮膚の圧迫、手のむくみ、指の色、体幹の傾きなどを観察します。
右片麻痺のある人の上肢を移動させるときは、腕や手だけを引っ張ってはいけません。肩関節を傷めるおそれがあるため、肩甲帯や肘、前腕を支えながら、本人へ説明してゆっくり位置を整えます。必要に応じて、理学療法士、作業療法士、看護職、福祉用具専門相談員などと連携し、車いすの座幅、座奥行き、アームサポートの高さ、クッションの形状を調整します。
ひっかけポイント
体幹が右へ傾いているからといって、反対側の左大腿部の下へクッションを入れればよいわけではありません。原因の一つである「支えられていない右上肢」を支持することが重要です。
介護実践でのポイント
良肢位は介護者が一方的に形をつくるものではありません。Aさんへ目的と方法をわかりやすく伝え、痛みや違和感を確認し、同意を得ながら調整します。長時間同じ姿勢にせず、定期的に姿勢と皮膚の状態を見直します。
選択肢の確認
1.背中とバックサポートの間
適切ではありません。
背部の隙間を埋めるクッションは、円背などに応じて使用することがありますが、この事例で中心となる問題は、右上肢が支えられず右肩が下がっていることです。背中全体を前へ押すと、かえって浅く座る姿勢になることもあります。
2.左大腿部{ひだりだいたいぶ}と座面の間
適切ではありません。
左大腿部の下へクッションを入れると、骨盤や大腿部に新たな左右差をつくり、圧が偏るおそれがあります。右肩の下がりと右上肢の支持不足を直接改善する位置ではありません。
3.両下腿{りょうかたい}とレッグサポートの間
適切ではありません。
両下腿とレッグサポートの間のクッションは、下腿の支持や圧迫の調整に用いることがありますが、右肩の下垂と体幹の右傾きへの直接的な対応にはなりません。
4.右大腿部{みぎだいたいぶ}と左大腿部{ひだりだいたいぶ}の間
適切ではありません。
両大腿部の間のクッションは、股関節の内転が強い場合などに脚の位置を保つ目的で使用することがあります。Aさんの右上肢の重みや右肩の下がりを支える位置ではありません。
5.右上肢と右アームサポートの間
正答。最も適切です。
クッションで麻痺側の右上肢を支えることで、腕の重みを受け止め、右肩の下垂を軽減し、体幹を中央に保ちやすくなります。本人の痛みや皮膚状態を確認し、適切な高さに調整します。
覚えるポイント
車いす座位では、まず骨盤を起こして深く座り、足底や上肢を安定して支持します。
片麻痺側の上肢が支えられていないと、肩の下垂や体幹の傾きにつながります。
右肩が下がる右片麻痺では、右上肢と右アームサポートの間にクッションを入れて支持します。
クッションの高さは、肩を押し上げすぎず、肘や前腕を自然に支えられるように調整します。
麻痺側上肢を引っ張らず、痛み、皮膚、むくみ、姿勢を観察し、多職種と連携して調整します。