115A043|第115回 歯科医師国家試験 過去問
88 歳の女性。食べ物がうまく嚙めないことを主訴として訪問歯科診療の依頼が あった。使用中の義歯は 5年前に製作したものである。認知機能の低下が認めら れ、変化に対応することが難しい。義歯床下粘膜に異常を認めなかった。義歯装着 時の口腔内写真 (別冊No. 12A と義歯の写真 (別冊No. 12B を別に示す。 適切な対応はどれか。 1つ選べ。

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正解: d
正答
d
この問題のポイント
高齢で認知機能が低下し、新しい環境への適応が難しい患者では、使い慣れた義歯をできるだけ活用し、問題のある部分だけを修正するという考え方が重要です。
解説
症例は88歳で、使用中の義歯は5年前に製作されています。主訴は咀嚼困難ですが、義歯床下粘膜に異常はありません。また、認知機能の低下があり、大きな変化への適応が困難です。
この状況では、まず現在の義歯の適合、人工歯の摩耗、咬合接触、咬合平面などを確認します。
咬合面再形成は、既存義歯の人工歯咬合面を修正または再構成し、咬頭形態や咬合接触を回復させる処置です。使い慣れた義歯床を維持できるため、新義歯への適応が難しい患者に適しています。
治療選択のポイント
高齢者や認知症患者では、理想的な新製だけでなく、治療負担、通院回数、学習能力、現在の義歯への慣れを含めて現実的な方法を選びます。
画像の確認
実画像では、使用中の義歯の臼歯部人工歯が広く平坦化し、咬頭や溝の形態が著しく失われている一方、床自体は残存している。既存床を生かしつつ失われた咬合面形態を回復する対象が明瞭なため、咬合面再形成を選ぶ根拠になる。
選択肢の確認
a.リライン
誤り。
リラインは、義歯床内面を裏装して顎堤粘膜との適合を改善する処置です。義歯床の不適合が主因なら有効ですが、本症例では床下粘膜に異常がなく、主たる問題は咬合面にあると判断します。
b.粘膜調整
誤り。
粘膜調整は、義歯によって傷害された粘膜を粘膜調整材で休ませ、組織を健全化する処置です。床下粘膜に異常を認めない本症例では適応になりません。
c.新義歯製作
誤り。
新義歯製作が必要となる場合もありますが、認知機能低下により新しい義歯への適応が難しく、既存義歯を修正して使用できるなら最初に選ぶ方法ではありません。
d.咬合面再形成
正答。最も適切です。
既存義歯の人工歯咬合面を再構成し、咀嚼に必要な咬合接触と咬頭形態を改善します。使い慣れた義歯床を保てる点も本症例に適しています。
e.前歯部での咀嚼指導
誤り。
咀嚼は主に臼歯部で行います。前歯部での咀嚼は義歯の転覆や不安定化を招きやすく、咀嚼困難の適切な解決になりません。
覚えるポイント
- リラインは床内面の適合改善、粘膜調整は傷害された粘膜の回復が目的です。
- 咬合面再形成は、摩耗した人工歯の咬合形態と接触を回復します。
- 認知機能低下例では、使い慣れた義歯を活用する低侵襲な修正を優先します。