115A082第115回 歯科医師国家試験 過去問

歯科臨床歯科補綴学

80 歳の男性。上下顎全部床義歯の動揺を主訴として来院した。義歯は 3年前に 製作し問題なく使用していたが、半年前から口を閉じていても勝手に顎が左右に動 いて義歯が外れやすくなったという。診察の結果、全部床義歯を新製することと し、臼歯部人工歯の選択を行うこととした。臼歯部人工歯の写真 (別冊No. 29 )を別 に示す。 本症例に適切なのはどれか。 1つ選べ。

115A082の問題画像
解答・解説を見る

正解: c

正答

c

この問題のポイント

口を閉じていても顎が左右へ不随意に動く患者では、義歯へ加わる側方力をできるだけ小さくする人工歯を選びます。咬頭傾斜の小さい無咬頭人工歯が適しています。

解説

症例は80歳で、これまで問題なく使用していた全部床義歯が、半年前から生じた顎の不随意な左右運動によって外れやすくなっています。問題の中心は顎堤への垂直的な咬合力だけではなく、義歯を横方向へ動かす力です。

咬頭傾斜の大きい解剖学的人工歯では、上下の咬頭斜面が接触した際に、咬合力の一部が水平方向の分力となります。顎が不随意に左右へ動く症例では、この側方分力が義歯の転覆や離脱を助長します。

画像のは、咬頭傾斜が小さく、咬合面が比較的平坦な無咬頭人工歯、いわゆる0度人工歯です。咬頭干渉を起こしにくく、異常な側方運動があっても義歯へ加わる水平力を抑えやすいため、本症例に適しています。

治療選択のポイント
全部床義歯の人工歯は、咀嚼能率だけでなく、顎堤条件、顎運動、筋機能、義歯の安定性を考えて選びます。不随意運動が強い症例では、鋭い咬頭による咀嚼能率よりも、側方力を減らして義歯を安定させることを優先します。

画像の確認

実画像では、複数の臼歯部人工歯形態が並び、ウは他の候補に比べて咬合面が明瞭に平坦で咬頭傾斜がほとんどない。側方力を小さくするゼロ度・無咬頭歯の形態に一致するため、ウが正答となる。

選択肢の確認

a.ア
誤り。
アはウと比べて咬頭形態が明瞭で、咬頭斜面による側方分力が生じやすい人工歯です。通常の咀嚼運動では機能的な形態ですが、不随意な左右運動を繰り返す本症例では義歯の転覆を助長する可能性があります。

b.イ
誤り。
イも咬頭傾斜を有する人工歯です。咬頭嵌合による咀嚼能率は得られますが、左右への異常運動がある患者で水平力を最小限にするという目的には、ウの方が適しています。

c.ウ
正答。最も適切です。
ウは咬合面が平坦で咬頭傾斜の小さい無咬頭人工歯です。咬頭斜面による側方力と咬頭干渉を抑え、顎の不随意運動による義歯の動揺や離脱を軽減しやすくなります。

d.エ
誤り。
エは咬頭を備えた解剖学的形態の人工歯です。審美性や咀嚼能率を得やすい一方、強い側方運動では咬頭斜面が義歯を横へ動かす力を発生させるため、本症例の第一選択ではありません。

e.オ
誤り。
オは金属を用いた咬合面を含む特殊な人工歯で、耐摩耗性の確保などを目的として選択されることがあります。しかし、顎の不随意な左右運動に対して側方力を最小にするという本症例の主目的には、無咬頭人工歯であるウが適しています。

覚えるポイント

  • 顎の不随意な側方運動がある場合は、咬頭傾斜の小さい無咬頭人工歯を選びます。
  • 咬頭斜面は咬合力を水平分力へ変え、全部床義歯の転覆を起こすことがあります。
  • 人工歯選択では、咀嚼能率だけでなく顎堤条件と義歯の安定性を優先します。

関連問題

115A081115A083
学習アプリでこの問題を解く(記録・メモ・カード化)