第105回
105AM033|第105回 助産師国家試験 過去問
百日咳で正しいのはどれか。
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正解1
正答
1.飛沫感染する。
この問題のポイント
百日咳の病原体、感染経路、特徴的な咳、治療、重症化しやすい年齢という基本事項を問う知識問題です。混同しやすいクループ(犬吠様咳嗽)やインフルエンザ菌b型(Hib)と区別できるかが鍵になります。助産師としては、新生児・早期乳児が最も重症化しやすいことを確実に押さえておく必要があります。
解説
病原体と感染経路
百日咳は、グラム陰性桿菌である百日咳菌(Bordetella pertussis)による急性の気道感染症です。
- 主な感染経路は、患者の咳やくしゃみで飛び散る飛沫による飛沫感染です。
- 気道分泌物を介した接触感染も起こります。
- 感染力はきわめて強く、家族内など濃厚接触者の間で広がりやすい疾患です。
- 医療機関では、標準予防策に加えて飛沫予防策(サージカルマスクの着用、個室またはベッド間隔の確保など)をとります。有効な抗菌薬治療を始めてから5日間が経過するまで続けるのが目安です。
臨床経過
経過は3つの時期に分けて理解します。
- カタル期(約2週間):鼻汁や軽い咳が出る時期で、普通のかぜと区別しにくいのが特徴です。菌の排出が多く、最も感染力が強い時期でもあります。
- 痙咳期(約2〜3週間):短い咳が途切れなく続き(スタッカート)、続いて息を吸うときに笛のような音が出ます(ウープ、吸気性笛声)。この咳発作を繰り返すことをレプリーゼと呼びます。咳き込みによる顔面紅潮、眼瞼浮腫、結膜出血もみられます。発熱はないか、あっても軽度です。
- 回復期:咳発作は2〜3週間かけて次第に軽くなりますが、その後も時折咳発作が出ることがあります。全経過はおよそ2〜3か月に及び、この長い経過が「百日」咳という名前の由来です。
検査では、リンパ球優位の白血球増多が特徴的な所見です。
新生児・早期乳児での重症化
百日咳では、母体からの移行抗体による防御が十分に期待できません。そのため新生児期から感染することがあります。
- 早期乳児では、典型的な咳発作やウープが目立たないことがあります。
- 代わりに、無呼吸発作、チアノーゼ、けいれんで発症することがあります。
- 肺炎や脳症を合併し、死亡に至る例もあります。
- ワクチン接種を始める前の月齢の乳児が、最もリスクの高い集団です。
感染源になりやすいのは、同居する家族(年長のきょうだいや成人)です。ワクチンによる免疫は年数とともに弱まるため、年長児や成人も感染します。ただし成人では典型的な症状が乏しく、「長引く咳」として見過ごされがちです。
助産の実践では、次のような対応につながる知識です。
- 咳のある家族には、面会時のマスク着用や児との接触への配慮を促します。
- 退院指導では、家族に咳が続く人がいれば早めに受診するよう伝えます。
- 児に無呼吸や顔色不良がみられたら、すぐに受診するよう指導します。
治療・予防・制度
治療の第一選択は、マクロライド系抗菌薬(エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン)です。
- カタル期に治療を始めると、症状を軽くする効果が期待できます。
- 痙咳期以降は咳そのものへの効果は限られますが、除菌によって周囲への感染拡大を防ぐ意義があります。
- 家族内の濃厚接触者、特に乳児や乳児と接する人に、予防的に抗菌薬を投与することがあります。
予防は、百日咳・ジフテリア・破傷風を含む混合ワクチンの定期接種で行います。出題当時の定期接種では、主に四種混合ワクチン(DPT-IPV)が用いられていました。現在は、2024年4月からHibを加えた五種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)も定期接種に用いられています。
制度上の位置づけは次のとおりです。
- 感染症法では五類感染症です。2018年1月から、小児科定点把握から全数把握に変更されています。
- 学校保健安全法施行規則では第二種の感染症に分類されます。出席停止期間の基準は「特有の咳が消失するまで又は5日間の適正な抗菌性物質製剤による治療が終了するまで」です。
選択肢の確認
1.飛沫感染する。:正答。百日咳菌は、咳やくしゃみの飛沫とともに気道に入って感染します。気道分泌物を介した接触感染もあり、感染力はきわめて強い疾患です。特に、かぜと区別しにくいカタル期に最も感染性が高いため、気づかないうちに周囲へ広がりやすい点が重要です。なお、空気感染(飛沫核感染)する代表は麻疹・水痘・結核で、百日咳はここに含まれません。
2.抗菌薬投与は無効である。:百日咳は細菌感染症であり、マクロライド系抗菌薬が第一選択として有効です。カタル期に開始すれば症状の軽減が期待でき、痙咳期以降に開始しても、除菌して周囲への感染を防ぐ意味があります。学校保健安全法施行規則の出席停止期間の基準に「5日間の適正な抗菌性物質製剤による治療」が挙げられているのも、抗菌薬治療で感染性を抑えられることを前提にした規定です。抗菌薬が効かないのは、かぜ症候群やウイルス性クループなどのウイルス感染症であり、これらと混同しないようにします。
3.特徴的な症状に犬吠様咳嗽がある。:犬が吠えるような咳は、クループ症候群の特徴です。クループの多くはパラインフルエンザウイルスなどによるウイルス性のもので、喉頭(声門下)の炎症と浮腫により、嗄声や吸気性喘鳴を伴います。百日咳に特徴的なのは、短い咳が連続するスタッカートと、その後の吸気時の笛声(ウープ)で、この咳発作の反復がレプリーゼです。どちらも「咳」と「吸気時の音」を伴うため取り違えやすく、咳の性質で見分けることが大切です。
4.インフルエンザ菌b型の感染症である。:百日咳の病原体は百日咳菌(Bordetella pertussis)で、インフルエンザ菌とは別の細菌です。インフルエンザ菌b型(Hib)は、乳幼児の細菌性髄膜炎や急性喉頭蓋炎の代表的な原因菌です。名前に「インフルエンザ」とありますが細菌であり、インフルエンザの原因であるインフルエンザウイルスとは別の病原体です。2024年4月からは五種混合ワクチンで両方を同時に予防できるようになりましたが、病原体はあくまで別です。
5.新生児期の感染例は重症化するリスクがない。:新生児や早期乳児こそ、百日咳で最も重症化しやすい年齢層です。移行抗体による防御が不十分で、ワクチン接種もまだ始まっていないためです。典型的な咳発作が目立たないまま、無呼吸発作、チアノーゼ、けいれんで発症することがあり、肺炎や脳症を合併して死亡に至ることもあります。麻疹のように母体からの移行抗体が生後数か月間の感染を防ぐ疾患とは異なり、百日咳では新生児期こそ最も警戒すべき時期です。
覚えるポイント
- 百日咳の病原体は百日咳菌(グラム陰性桿菌)で、飛沫感染と接触感染で広がります。空気感染の代表は麻疹・水痘・結核です。
- 経過はカタル期、痙咳期、回復期の順です。感染力が最も強いのは、かぜと見分けにくいカタル期です。
- 痙咳期の咳は「スタッカート→ウープ(吸気性笛声)」で、この発作の反復がレプリーゼです。犬吠様咳嗽はクループの特徴です。
- 治療はマクロライド系抗菌薬、予防はDPTを含む混合ワクチンの定期接種です。早期(カタル期)の治療なら症状を軽くでき、その後の時期でも感染拡大の防止に役立ちます。
- 新生児・早期乳児は、無呼吸やチアノーゼで発症して重症化しやすい集団です。家族(きょうだいや成人)の長引く咳が感染源になりやすいことも押さえます。
- 制度面では、感染症法の五類感染症(2018年から全数把握)で、学校保健安全法施行規則の第二種の感染症です。出席停止の基準は、特有の咳が消失するまで、または5日間の適正な抗菌性物質製剤による治療が終了するまでです。
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