第105回
105AM034|第105回 助産師国家試験 過去問
卵管性不妊の原因となるのはどれか。2つ選べ。
解答・解説を見る
正解1・5
正答
1.淋菌
5.クラミジアトラコマティス
この問題のポイント
卵管性不妊を起こす病原体を選ぶ問題です。判断の鍵は、その病原体が子宮頸管から子宮内膜、卵管、骨盤腹膜へと上行感染し、卵管に炎症と癒着を残すかどうかです。骨盤内炎症性疾患(PID)の代表的な起因菌であるクラミジアトラコマティスと淋菌を、腟・外陰にとどまる感染症や、母子感染が主な問題となるウイルスと区別できるかが問われています。
解説
卵管の働きと卵管性不妊
卵管は、排卵された卵子を卵管采で取り込み(ピックアップ)、卵管膨大部で精子と受精させ、受精卵を線毛運動と蠕動で子宮腔へ運ぶ器官です。卵管の内腔が閉塞・狭窄したり、卵管采や卵管周囲に癒着が生じたりすると、卵子と精子が出会えなくなったり受精卵が運ばれなくなったりして、不妊になります。これが卵管性不妊(卵管因子)で、女性側の不妊原因のなかでも頻度の高いものです。卵管が完全には閉塞せず通過障害にとどまる場合は、受精卵が卵管内で着床し、異所性妊娠(卵管妊娠)の原因にもなります。
卵管障害の原因には、性感染症による卵管炎・PIDのほか、子宮内膜症、骨盤内手術後の癒着、虫垂炎穿孔などによる腹膜炎があります。このうち病原体として代表的なのが、クラミジアトラコマティスと淋菌です。
上行感染の経路
腟・子宮頸管に感染した病原体は、次の順に上行して炎症を広げます。
- 子宮頸管炎 → 子宮内膜炎 → 卵管炎 → 卵管留膿腫・卵管卵巣膿瘍 → 骨盤腹膜炎
- さらに腹腔内を広がって肝臓の表面に達すると肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)となり、右上腹部痛を起こします。
PIDでは下腹部痛、発熱、帯下の増加、内診時の子宮頸部の移動痛や付属器の圧痛がみられます。炎症が治まっても、卵管の線毛上皮の障害、内腔の線維化と閉塞、卵管采の癒着、卵管留水腫が残り、これが不妊や異所性妊娠につながります。
2つの起因菌の特徴
クラミジアトラコマティスは、日本で最も多い性感染症である性器クラミジア感染症の原因菌です。女性では無症状か軽い帯下の増加程度にとどまることが多く、治療されないまま上行して卵管を障害します。不妊の検査で初めて感染の既往が疑われることも多く、不妊外来ではクラミジア抗体検査が卵管障害を推測する手がかりになります。
淋菌も子宮頸管炎から上行して卵管炎・PIDを起こします。男性の尿道炎は強い排尿痛と膿性分泌物で気づかれやすい一方、女性は症状が軽く見逃されやすい点はクラミジアと共通で、両者の重複感染も少なくありません。どちらも再感染を防ぐため、パートナーの同時検査・治療が必要です。
実践とのつながり
卵管の通過性や卵管周囲の癒着は、子宮卵管造影検査(HSG)などで評価します。治療には腹腔鏡下の癒着剥離や卵管鏡下卵管形成術があり、卵管の回復が見込めない場合は、卵管を経由せずに受精と着床を成立させる体外受精・胚移植が選択されます。助産師は、若年層への性感染症予防の健康教育(コンドームの使用、症状がなくても検査を受けること、パートナーとの同時治療)を通じて、将来の不妊や異所性妊娠を防ぐ役割を担います。妊婦健康診査では性器クラミジアの検査が行われ、産道感染による新生児の結膜炎・肺炎の予防につなげています。
選択肢の確認
1.淋菌:正答。グラム陰性の双球菌で、子宮頸管に感染したのち子宮内膜から卵管へ上行し、卵管炎やPIDを起こします。治癒後に卵管の閉塞や卵管周囲の癒着が残り、卵管性不妊や異所性妊娠の原因となります。女性では症状が軽く見逃されやすいこと、クラミジアとの重複感染が多いことも押さえておきます。新生児では産道感染による結膜炎が重症化すると角膜穿孔や失明に至るおそれがあります。
2.カンジダ菌:カンジダ(主にCandida albicans)は細菌ではなく真菌で、腟・皮膚・口腔に常在し、妊娠、糖尿病、抗菌薬やステロイドの使用、免疫低下などをきっかけに増えて外陰腟カンジダ症を起こします。強い瘙痒感と、酒粕状・カッテージチーズ様の白色帯下が特徴です。炎症は腟と外陰にとどまり、卵管まで上行して卵管障害を残す病原体ではありません。多くは自身の常在菌による内因性感染で、周産期では産道感染による新生児の鵞口瘡が問題になります。
3.トリコモナス原虫:鞭毛をもつ原虫(Trichomonas vaginalis)で、主に性行為で感染して腟トリコモナス症を起こします。黄緑色で泡沫状の悪臭のある帯下、外陰の瘙痒感、子宮腟部の点状出血(いちご状)が特徴です。病変は腟・外陰・尿道が中心で、卵管性不妊の代表的な原因とはされていません。タオルや浴槽などを介した感染もあるため、性交経験のない女性にもみられます。治療はメトロニダゾールなどのニトロイミダゾール系薬で、パートナーの同時治療が必要です。
4.サイトメガロウィルス:ヘルペスウイルス科のDNAウイルスで、唾液や尿などの体液を介して感染します。周産期で問題になるのは胎内感染(先天性CMV感染症)で、感音難聴、小頭症、頭蓋内石灰化、網脈絡膜炎、肝脾腫、胎児発育不全などを起こします。TORCH症候群の一つとして母子感染の分野で問われる病原体であり、卵管に炎症を起こして卵管性不妊を招くものではありません。妊婦には、乳幼児の唾液や尿に触れた後の手洗いなど、感染予防の保健指導を行います。
5.クラミジアトラコマティス:正答。偏性細胞内寄生性の細菌で、日本で最も多い性感染症の原因です。女性では無症状のことが多いため、治療されないまま上行して卵管炎、PID、肝周囲炎を起こします。卵管の閉塞や卵管采周囲の癒着を残し、卵管性不妊と異所性妊娠の代表的な原因となります。産道感染では新生児結膜炎や新生児肺炎を起こします。
覚えるポイント
- 卵管性不妊・異所性妊娠を起こす上行感染の代表はクラミジアトラコマティスと淋菌です(PIDの主な起因菌)。
- クラミジアは女性では無症状が多く、気づかないうちに卵管障害が進みます。肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)による右上腹部痛にも注意します。
- 腟炎の鑑別として、カンジダは真菌・強い瘙痒感・酒粕状の白色帯下・常在菌による日和見感染、トリコモナスは原虫・泡沫状の黄緑色で悪臭のある帯下・パートナー治療が必要、と整理します。
- サイトメガロウイルスは先天性感染(感音難聴、小頭症、頭蓋内石灰化など)の病原体で、TORCH症候群の一つです。
- 新生児への影響は、クラミジアが結膜炎・肺炎、淋菌が結膜炎(重症化すると失明)、カンジダが鵞口瘡です。
- 卵管性不妊の検査は子宮卵管造影検査、治療は腹腔鏡下手術や卵管形成術、回復が見込めない場合は体外受精・胚移植です。
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