第105回

105AM035|第105回 助産師国家試験 過去問

2つ選択

骨盤隔膜を形成している筋はどれか。2つ選べ。

解答・解説を見る

正解2・4

正答

2.尾骨筋、4.肛門挙筋

この問題のポイント

骨盤底を層に分けたとき、最も深い層(骨盤腔に面する層)である骨盤隔膜を構成する筋を問う問題です。骨盤隔膜は肛門挙筋と尾骨筋、およびそれらを上下から覆う筋膜でできています。骨盤周囲にある骨盤壁の筋(梨状筋)、殿部の筋(大殿筋)、会陰の浅い層の筋(外肛門括約筋)と区別できるかが鍵になります。

解説

骨盤底の層構造

骨盤の下口は、筋と筋膜が重なった「骨盤底」で閉じられています。骨盤底は、骨盤内臓器(膀胱・子宮・腟・直腸)を下から支えます。また、尿道・腟・直腸を通しながら、排尿・排便の保持にも関わります。国家試験では、深い層から次のように整理します。

  • 骨盤隔膜(深層):肛門挙筋と尾骨筋、これを覆う上・下骨盤隔膜筋膜から成ります。恥骨から尾骨まで、左右の骨盤壁の間に漏斗状に張っています。
  • 尿生殖隔膜(中層):深会陰横筋と尿道括約筋から成ります。前方の尿生殖三角で、左右の坐骨恥骨枝の間に張り、尿道と腟が貫きます。
  • 会陰浅層(浅層):球海綿体筋、坐骨海綿体筋、浅会陰横筋、外肛門括約筋などから成ります。

なお、近年の解剖学では「尿生殖隔膜」を会陰膜や深会陰隙として記述することもあります。ただし試験対策としては、「骨盤隔膜と尿生殖隔膜の2つの隔膜+会陰の浅層」と整理しておけば十分です。

肛門挙筋

肛門挙筋は骨盤隔膜の主体で、恥骨尾骨筋・恥骨直腸筋・腸骨尾骨筋の3部に分けられます。起始は次の3か所です。

  • 恥骨体の後面
  • 肛門挙筋腱弓(内閉鎖筋を覆う筋膜が肥厚した部分)
  • 坐骨棘

停止は会陰体、肛門尾骨靱帯、尾骨です。左右の肛門挙筋の間には肛門挙筋裂孔があり、女性では尿道・腟・直腸がここを通ります。恥骨直腸筋は直腸肛門移行部の後ろをU字形に取り巻き、前方へ引いて直腸肛門角をつくります。これにより排便の保持に働きます。

尾骨筋

尾骨筋は坐骨棘から起こり、仙骨下部と尾骨の外側縁に付く三角形の筋です。仙棘靱帯の骨盤面に密着しています。肛門挙筋(腸骨尾骨筋)のすぐ後方にあり、骨盤隔膜の後部を補って隔膜を完成させます。

助産の実践とのつながり

分娩第2期には、下降する児頭が骨盤隔膜を強く押し広げます。特に肛門挙筋は大きく伸展されます。骨盤底の漏斗状の形と抵抗は、児頭の内回旋を助ける要素の一つとされています。一方、肛門挙筋が過度に伸展・断裂すると、産後の腹圧性尿失禁や骨盤臓器脱の要因になります。このため、産褥期の骨盤底筋訓練の指導は助産師の重要な役割です。

また、外肛門括約筋の損傷の有無は会陰裂傷の分類に直結します。どの筋がどの層にあるかを理解しておくと、分娩介助や裂傷の評価にも役立ちます。

選択肢の確認

1.大殿筋:殿部の表層を覆う大きな筋で、下殿神経に支配され、股関節の伸展と外旋に働きます。肛門の後外側に近い位置にありますが、骨盤の外にある下肢帯の筋です。骨盤腔の底を閉じる骨盤隔膜には含まれません。骨盤底筋群を意識する運動で「お尻を締める」動作と混同しやすいので、殿筋と骨盤底筋は別物と押さえます。

2.尾骨筋:正答。坐骨棘から仙骨下部・尾骨に付く三角形の筋で、仙棘靱帯の骨盤面に沿って走ります。肛門挙筋の後方を補い、骨盤隔膜の後部を形成します。

3.梨状筋:仙骨前面から起こり、大坐骨孔を通って大腿骨の大転子に付く筋で、股関節の外旋に働きます。内閉鎖筋とともに骨盤の後外側の壁をつくる筋であり、骨盤の底をふさぐ骨盤隔膜ではありません。梨状筋は大坐骨孔を梨状筋上孔と梨状筋下孔に分けます。梨状筋下孔を坐骨神経や陰部神経が通る点も、関連知識として押さえておくとよいでしょう。

4.肛門挙筋:正答。恥骨尾骨筋・恥骨直腸筋・腸骨尾骨筋から成る骨盤隔膜の主体です。骨盤内臓器を下から支え、肛門挙筋裂孔を通る尿道・腟・直腸の支持と括約にも関わります。

5.外肛門括約筋:肛門管を取り巻く横紋筋(随意筋)で、陰部神経の枝である下直腸神経に支配されます。会陰の浅層(肛門三角)に属し、骨盤隔膜より浅い位置にあります。深部は恥骨直腸筋と接して一体となって働くため、肛門挙筋と混同しやすい筋です。分娩時にこの筋まで裂けると第3度会陰裂傷に分類されます。なお、内肛門括約筋は平滑筋で、自律神経に支配される不随意筋です。

覚えるポイント

  • 骨盤隔膜=肛門挙筋(恥骨尾骨筋・恥骨直腸筋・腸骨尾骨筋)+尾骨筋+上下の骨盤隔膜筋膜。
  • 尿生殖隔膜=深会陰横筋+尿道括約筋です。会陰浅層の筋は、球海綿体筋・坐骨海綿体筋・浅会陰横筋・外肛門括約筋です。
  • 梨状筋・内閉鎖筋は「骨盤壁」、大殿筋は「殿部」の筋です。いずれも骨盤底(隔膜)の構成筋ではありません。
  • 恥骨直腸筋は直腸肛門角をつくり排便の保持に働きます。外肛門括約筋は横紋筋、内肛門括約筋は平滑筋です。
  • 会陰裂傷は次の4段階に分類されます。
    • 第1度:会陰の皮膚・腟粘膜のみ
    • 第2度:会陰の筋層まで(肛門括約筋は無傷)
    • 第3度:肛門括約筋の損傷
    • 第4度:肛門・直腸粘膜まで
  • 分娩時の肛門挙筋の過伸展・損傷は、腹圧性尿失禁・骨盤臓器脱の要因になります。予防と回復には骨盤底筋訓練を指導します。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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