第105回
105AM036|第105回 助産師国家試験 過去問
妊娠前のBMIが18.5未満であった妊婦に出現しやすいのはどれか。2つ選べ。
解答・解説を見る
正解1・2
正答
1.貧血
2.切迫早産
この問題のポイント
妊娠前の体格(BMI)ごとに、妊娠中に起こりやすい合併症を問う問題です。BMI18.5未満は低体重(やせ)にあたり、栄養の蓄えが少ないことから貧血、切迫早産・早産、低出生体重児が増えます。妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群のように肥満で増える合併症と分けて整理できるかが鍵です。
解説
BMIによる体格の区分
BMIは体重(kg)÷身長(m)²で求めます。日本肥満学会の基準では、18.5未満が低体重(やせ)、18.5以上25未満が普通体重、25以上が肥満です。妊娠中は体重が増えていくため、妊婦の体格は妊娠前(非妊時)の体重で評価します。問題文が「妊娠前のBMI」と明示しているのはこのためです。
やせの妊婦で起こりやすいこと
- 貧血:妊娠中は循環血液量が増え、妊娠32週前後で最大(非妊時の40〜50%程度の増加)になります。血漿量の増え方が赤血球量の増え方を上回るため、血液は生理的に薄まります(水血症)。同時に、母体の赤血球量の増加と胎児・胎盤の発育のために鉄の需要も大きく増えます。やせの女性は食事量が少なかったりダイエットで食事が偏っていたりして、鉄やたんぱく質の摂取が不足しやすく、もともと貯蔵鉄が少ないことが多いです。そのため需要の増加に供給が追いつかず、鉄欠乏性貧血になりやすくなります。
- 切迫早産・早産:やせの妊婦では、切迫早産、早産、前期破水が多いことが知られています。機序は一つに定まっていませんが、栄養状態の不良、子宮胎盤への供給不足、感染への抵抗力の低下などが関わると考えられています。
- 低出生体重児・胎児発育不全:母体の栄養の蓄えや妊娠中の体重増加が足りないと、胎児への栄養供給も不足し、出生体重が小さくなりやすくなります。胎児期の低栄養は、将来の糖尿病や高血圧などの生活習慣病のリスクを高めるという考え方(DOHaD)が示されています。やせへの対策は次世代の健康にも関わる課題です。
一方、BMI25以上の肥満では、インスリン抵抗性の増大を背景とする妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、巨大児、分娩遷延や帝王切開、血栓塞栓症などが増えます。選択肢3と5は肥満で増える合併症です。選択肢4の羊水過多症は、胎児の嚥下障害や母体の糖代謝異常などを原因とするため、やせとの関連は乏しいといえます。
実践での生かし方
出題当時(2022年2月)には、2021年3月に改定された厚生労働省の「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」が示されていました。この指針では、妊娠中の体重増加量の目安を、低体重12〜15kg、普通体重10〜13kg、肥満(1度)7〜10kg、肥満(2度以上)は個別対応(上限5kgまでが目安)としています。やせの妊婦ほど多めの増加が望ましいという考え方です。
助産師は妊婦健康診査で、体重の推移、Hb値、子宮収縮の自覚や頸管長の変化を継続して確認します。そのうえで、主食をしっかりとることや、鉄・たんぱく質を多く含む食品をとることなど、具体的な食事指導を行います。国民健康・栄養調査では、20歳代を中心に若年女性のやせの割合が高い状態が続いています。プレコンセプションケアとして、妊娠前から適正体重を保てるよう支援することも大切です。
選択肢の確認
1.貧血:正答。やせの女性は鉄やたんぱく質の摂取が少なく、貯蔵鉄も乏しいことが多いです。そこへ妊娠による循環血液量の増加と胎児・胎盤への鉄の供給が加わり、需要が急に増えるため不足しやすくなります。妊娠中の貧血の大部分は鉄欠乏性で、Hb11g/dL未満またはHt33%未満が目安です。水血症による見かけ上の低下と区別するため、フェリチンなどで鉄欠乏を確認します。
2.切迫早産:正答。切迫早産とは、妊娠22週以降37週未満に規則的な子宮収縮や子宮頸管の短縮・開大がみられ、早産の危険が高い状態をいいます。やせの妊婦では切迫早産、早産、前期破水が増えます。栄養状態の不良や感染への抵抗力の低下などが関わると考えられています。低出生体重児の増加とあわせて、やせのリスクとして押さえます。
3.妊娠糖尿病:妊娠中は胎盤由来のホルモン(ヒト胎盤性ラクトゲンなど)によってインスリン抵抗性が高まり、肥満があるとさらに強まります。そのため肥満の妊婦で増える合併症であり、やせで出現しやすいものではありません。75gOGTTで空腹時92mg/dL以上、1時間値180mg/dL以上、2時間値153mg/dL以上のいずれか1点以上を満たすと診断されます。肥満のほか、高年妊娠、糖尿病の家族歴、巨大児分娩の既往なども危険因子です。
4.羊水過多症:羊水量が800mLを超える状態です。主な原因は、胎児の消化管閉鎖や中枢神経系の異常による嚥下障害、母体の糖尿病に伴う胎児の多尿、双胎間輸血症候群の受血児などです。母体のやせとの関連は乏しく、むしろ糖代謝異常を介して肥満側と結びつきます。羊水過少症(100mL以下)は、前期破水、胎児の腎・尿路の異常、胎盤機能不全と関連するので、対比して覚えます。
5.妊娠高血圧症候群:肥満はこの疾患の代表的な危険因子です。ほかに高年妊娠、初産、多胎妊娠、糖尿病・腎疾患・高血圧の既往、前回妊娠での発症などがあります。やせで頻度が高くなる合併症ではありません。妊娠時に収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上を認めた場合に診断されます。
覚えるポイント
- BMI=体重(kg)÷身長(m)²。18.5未満が低体重(やせ)、25以上が肥満。妊婦の体格は妊娠前の体重で評価する。
- やせで増える:貧血、切迫早産・早産、前期破水、低出生体重児・胎児発育不全。
- 肥満で増える:妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、巨大児、分娩遷延・帝王切開、血栓塞栓症。
- 妊娠中の体重増加の目安(2021年改定):低体重12〜15kg、普通体重10〜13kg、肥満1度7〜10kg、肥満2度以上は個別対応(上限5kgが目安)。
- 妊娠中の貧血はHb11g/dL未満またはHt33%未満。循環血液量は妊娠32週前後で最大(非妊時の40〜50%増)となり、水血症が生じる。
- 羊水過多は800mL超(胎児の嚥下障害・母体糖尿病・双胎間輸血症候群の受血児など)、羊水過少は100mL以下(前期破水・胎児の腎尿路異常・胎盤機能不全など)。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する(medixmatch2025@gmail.com)までお知らせください。確認して修正します。
解いた記録を残して、苦手な問題をもう一度。
学習アプリなら、この問題の解答記録・メモ・暗記カード化を使えます。