第105回

105PM017|第105回 助産師国家試験 過去問

経過が良好である産褥早期の褥婦に対し、母子の愛着形成を促進するために助産師が行う支援として最も適切なのはどれか。

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正解1

正答

1.出産体験の振り返り

この問題のポイント

産褥早期の褥婦に対して、母子の愛着形成を直接促す関わりを選ぶ問題です。「経過が良好」「産褥早期」「愛着形成を促進」の3つの条件から、母親の心理過程(ルービンの受容期)に合った支援を選びます。スクリーニング(評価)や、家族・地域資源の調整(環境づくり)とは目的が違うことを見分けられるかが鍵です。

解説

問題文の手がかり

  • 「経過が良好である」:身体の合併症や精神面の危険徴候は示されていません。したがって、異常の早期発見よりも、正常な心理過程を支えることが支援の中心になります。
  • 「産褥早期」:分娩後数日間の入院中の時期を指し、母親は後述する受容期にあたります。
  • 「母子の愛着形成を促進する」:評価や環境調整ではなく、母親がわが子を受け入れる心の動きそのものに働きかける支援が求められています。

産褥早期の母親の心理と出産体験

ルービンは、母親役割を獲得していく過程を、受容期(taking-in)、保持期(taking-hold)、解放期(letting-go)に分けました。

  • 受容期(おおむね産褥1〜2日ごろ):母親は受身的・依存的になり、休息や食事など自分の欲求を満たすことが中心になります。自分の出産体験を何度も繰り返し話そうとするのが特徴で、語ることで体験を整理し、自分の中に統合していきます。
  • 保持期(その後、産褥10日ごろまで):関心が子どもや育児技術の習得へ向かいます。

出産を「自分なりに頑張れた」「この子はこうして生まれてきた」と肯定的に意味づけられると、母親としての自己評価が高まり、わが子への関心や愛情が育ちやすくなります。反対に、痛みや恐怖、予定外の医療処置、記憶の空白などが整理されないまま残ると、否定的な出産体験になります。これは自尊感情の低下や子どもへの否定的な感情、産後の抑うつにつながることがあります。

バースレビュー(出産体験の振り返り)の実際

出産体験の振り返りはバースレビューとも呼ばれます。分娩に立ち会った助産師が、褥婦の休息と体調の回復を確かめてから行うのが望ましい関わりです。主な内容は次のとおりです。

  • 陣痛開始から児の誕生までを、褥婦自身の言葉で時系列に語ってもらう
  • 記憶があいまいな場面や思い違いを、助産師が事実に基づいて補う
  • 呼吸法や姿勢の工夫など、褥婦の具体的な努力を認めて言葉で伝える
  • 産声や早期母子接触での児の様子を伝え、わが子との出会いを実感してもらう
  • 否定的な感情や不満も否定せずに受け止める

語りの内容は、母親の心理状態や支援の必要性を知る手がかりにもなります。出産を強く否定的に捉えている、児への関心が乏しいといった様子があれば、継続的な関わりや他職種との連携を検討します。

愛着形成を直接促すほかの支援には、早期母子接触、母子同室、授乳支援、児の能力(見つめる、声に反応するなど)を母親に伝えることなどがあります。一方、スクリーニングは状態を評価する手段です。祖父母との関係調整や社会資源の紹介は、母子を取り巻く育児環境を整える間接的な支援です。いずれも大切ですが、この事例の時期と目的に照らすと焦点が異なります。

選択肢の確認

1.出産体験の振り返り:正答。産褥早期の受容期は、母親が出産体験を繰り返し語って統合しようとする時期です。助産師とともに体験を振り返り、肯定的に意味づけることで母親の自己評価が高まり、わが子を受け入れる気持ちが育ちます。時期と目的の両方が設問の条件に最もよく合います。

2.うつ病スクリーニングの実施:EPDS(エジンバラ産後うつ病質問票)などによるスクリーニングは、産後うつ病の可能性を早く見つけるための評価です。それ自体が愛着形成を促すものではありません。EPDSは10項目・30点満点で、日本では9点以上を産後うつ病の疑いとする区切りが用いられます。産婦健康診査などで、産後2週間や1か月の時点で実施されることが多いツールです。精神疾患の既往や強い不安などのリスクがある場合や、母親のメンタルヘルスの評価を問う設問であれば適切な選択になります。愛着の状態を評価する「赤ちゃんへの気持ち質問票」も同様に評価の道具であり、促進の支援ではありません。

3.祖父母との良好な関係構築の支援:祖父母は産後の家事や育児の大切な協力者ですが、この支援は家族の支援体制づくりにあたり、母子間の愛着に直接働きかけるものではありません。家族関係に葛藤がある、支援者が足りないといった情報があれば、退院に向けた調整として検討します。しかし、経過良好な産褥早期に最優先で行う支援ではありません。祖父母が育児を担いすぎると、母親が自分で児に関わる機会が減ることもあります。

4.ファミリー・サポート・センター事業の紹介:この事業(子育て援助活動支援事業)は、市町村が実施する地域子ども・子育て支援事業の一つです。子どもの預かりや保育施設への送迎などを、援助を受けたい人と援助を行いたい人が会員となって助け合う仕組みです。退院後の育児環境を整えるための社会資源の情報提供であり、産褥早期の母子の愛着形成を促す支援とは目的も時期も異なります。産後の母子を対象とする事業には、母子保健法に基づく産後ケア事業があるので、混同しないようにします。

覚えるポイント

  • ルービンの母親役割獲得過程は、受容期(産褥1〜2日ごろ・依存的・出産体験を繰り返し語る)→保持期(育児技術の習得に関心)→解放期の順に進みます。
  • バースレビューは、体験を語る・記憶の空白を補う・努力を認めることで出産体験を肯定的に統合し、母親の自己評価と愛着形成を高める支援です。
  • 愛着形成を直接促す支援には、早期母子接触、母子同室、授乳支援、児の能力を母親に伝えること、出産体験の振り返りがあります。
  • EPDSは10項目・30点満点で、日本では9点以上が産後うつ病の疑いです。スクリーニングは「評価」であり、「促進」の支援とは区別します。
  • マタニティブルーズは産褥3〜10日ごろに始まり、多くは2週間以内に軽快する一過性の状態で、産後うつ病とは区別します。
  • 「最も適切」を選ぶときは、設問の時期(産褥早期か退院後か)と目的(直接の働きかけか、環境づくりか)の両方で比べます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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