第106回
106PM005|第106回 助産師国家試験 過去問
男性不妊について正しいのはどれか。
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正解4
正答
4.思春期以降の流行性耳下腺炎の罹患は男性不妊の原因となる。
この問題のポイント
男性不妊について、原因の内訳、造精機能障害のときのホルモン所見、不妊検査の目的、後天的な原因としてのムンプス精巣炎を問う問題です。押さえるべきことは次の3点です。造精機能障害は男性不妊の大部分を占めます。精細管が障害されるとFSHが上昇します。フーナー試験は精子と頸管粘液の適合性をみる検査です。この3点で選択肢1〜3を除外でき、選択肢4が正しいと判断できます。
解説
男性不妊の原因の分類
男性不妊は、大きく次の3つに分けられます。
- 造精機能障害:精巣で精子が十分につくられない状態です。乏精子症、精子無力症、非閉塞性無精子症などがあります。原因には精索静脈瘤、停留精巣、染色体異常(クラインフェルター症候群など)、抗がん剤や放射線治療、ムンプス精巣炎などがありますが、原因を特定できない特発性のものが多くを占めます。
- 精路通過障害:精子はつくられているのに、精巣上体・精管・射精管の閉塞で運ばれない状態です(閉塞性無精子症)。精管結紮術後、先天性の精管欠損、精巣上体炎の後遺症などが原因になります。
- 性機能障害:勃起障害や射精障害によって、腟内に射精できない状態です。
割合では造精機能障害が圧倒的に多く、厚生労働省研究班の全国調査(2015年度)でも約8割を占めました。それ以前の報告では約9割とされていました。
精巣の内分泌調節
- 下垂体から分泌されるLHは、精巣のライディッヒ細胞に作用してテストステロンの分泌を促します。
- FSHはセルトリ細胞に作用して精子形成を支えます。セルトリ細胞が分泌するインヒビンBは、FSHの分泌を抑えます。
- テストステロンは、視床下部・下垂体に負のフィードバックをかけてLHの分泌を抑えます。
精細管が障害されるとインヒビンBが減り、フィードバックが弱まるためFSHが上昇します。ライディッヒ細胞まで障害されるとテストステロンが低下し、LHも上昇します(高ゴナドトロピン性の性腺機能低下)。視床下部・下垂体に原因がある低ゴナドトロピン性の場合は、LH・FSH・テストステロンのいずれも低値です。どちらの型でも、造精機能障害でテストステロンが上がることはありません。
不妊症の検査の目的
男性側の基本検査は精液検査で、2〜7日の禁欲期間をおいて採取します。出題当時に広く用いられていたWHOの2010年基準では、精子濃度15×10⁶/mL以上、総運動率40%以上などが下限の目安でした(2021年の改訂で一部の値が変更されています)。
フーナー試験(性交後試験)は、排卵期に性交したあと子宮頸管粘液を採取し、粘液中に前進運動する精子がいるかを顕微鏡で観察する検査です。精子が頸管粘液の中を進めるか(精子と頸管粘液の適合性)を評価します。結果が不良な場合は、頸管粘液の異常や抗精子抗体の存在を疑います。一方、精子が卵子に侵入して受精する能力そのものは、この検査ではわかりません。
ムンプス精巣炎
流行性耳下腺炎(ムンプス)に思春期以降の男性がかかると、2〜3割程度に精巣炎を合併するとされます。耳下腺の腫脹に数日遅れて、精巣の腫脹・疼痛・発熱が現れます。炎症と浮腫で精細管が障害されると、精巣萎縮や精子形成障害が残ることがあります。多くは片側性ですが、両側に起こると乏精子症や無精子症の原因になりえます。思春期前の男児では、精巣炎はまれです。
予防の中心はワクチンで、出題当時、おたふくかぜワクチンは定期接種ではなく任意接種でした。プレコンセプションケアや家族計画の支援では、予防接種歴やムンプスの既往を確認します。成人男性が罹患したときに精巣の症状があれば受診を勧めることも、実践で役立つ知識です。
選択肢の確認
1.造精機能障害は男性不妊の約40%である。:男性不妊の原因で最も多いのは造精機能障害で、全体の約8割(以前の報告では約9割)を占めます。約40%は実際より大幅に低い値です。不妊カップルのうち男性因子が関与する割合(約半数とされます)など、別の割合と混同しないよう注意が必要です。
2.造精機能障害ではテストステロンが上昇する。:精巣そのものの障害では、インヒビンBの低下によってFSHが上昇するのが特徴で、テストステロンは正常か低下します。視床下部・下垂体性ではゴナドトロピンもテストステロンも低値で、いずれの型でも上昇はしません。なお、筋肉増強目的などで外からテストステロンを投与すると、負のフィードバックでLH・FSHが抑えられ、かえって精子形成が低下します。
3.Huhner〈フーナー〉試験は精子の受精能をみる。:この検査は、性交後に採取した頸管粘液中の運動精子を観察し、精子と頸管粘液の適合性や頸管の通過性を評価するものです。卵子に侵入して受精する能力は評価できません。「精子の頸管粘液通過性をみる」という記述であれば正しくなります。
4.思春期以降の流行性耳下腺炎の罹患は男性不妊の原因となる。:正答。思春期以降の男性がムンプスにかかると精巣炎を合併しやすく、精細管が障害されて精巣萎縮や精子形成障害が起こることがあります。特に両側性では乏精子症や無精子症の原因となりえます。
覚えるポイント
- 男性不妊の3分類は、造精機能障害・精路通過障害・性機能障害です。最多は造精機能障害で約8〜9割を占め、多くは特発性です。
- 精細管(セルトリ細胞)が障害されるとインヒビンBが減り、FSHが上昇します。テストステロンは正常か低下し、上昇はしません。
- LHはライディッヒ細胞に作用してテストステロンの分泌を促し、FSHはセルトリ細胞に作用して精子形成を支えます。
- フーナー試験(性交後試験)は排卵期に行い、精子と頸管粘液の適合性・通過性をみる検査です。受精能をみる検査ではありません。
- 思春期以降のムンプスは2〜3割程度に精巣炎を合併し、両側性では無精子症の原因となりえます。思春期前の精巣炎はまれです。
- 男性側の基本検査は精液検査(禁欲2〜7日)です。WHO 2010年基準では、精子濃度15×10⁶/mL、総運動率40%が下限の目安です。
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