第106回

106PM006|第106回 助産師国家試験 過去問

妊娠期にみられる女性生殖器の変化で正しいのはどれか。

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正解2

正答

2.子宮頸管は妊娠後すぐに粘液で塞がれる。

この問題のポイント

妊娠による女性生殖器の変化を問う問題です。外陰部の色素沈着、子宮頸管の粘液栓、プロゲステロンの産生源の移行、Braxton-Hicks収縮の出現時期の4点が問われています。判断の手がかりは、選択肢中の「増加しない」「すぐに」「分娩まで」「妊娠末期から」という程度や時期を表す言葉です。妊娠を維持するホルモン(hCG、プロゲステロン、エストロゲン)の働きと結びつけて考えると、根拠をもって正誤を判断できます。

解説

妊娠を維持するホルモンの流れ

妊娠が成立すると、絨毛(のちの胎盤)の合胞体栄養膜細胞がhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を分泌します。hCGは、本来なら約2週間で退縮する月経黄体を妊娠黄体として維持します。妊娠黄体が分泌するプロゲステロンとエストロゲンは、脱落膜を保ち、子宮筋の収縮を抑えて妊娠初期を支えます。

hCGは妊娠8〜10週ころにピークとなり、その後は低下します。これと並行して、プロゲステロン産生の主体は妊娠7〜10週ころに妊娠黄体から胎盤へ移ります(黄体-胎盤シフト)。以後、プロゲステロンは胎盤から分泌されて分娩まで増え続け、胎盤娩出後に急速に低下します。この急低下によってプロラクチンが作用しやすくなり、産褥期に乳汁分泌が本格化します。

子宮頸管の変化(正答の根拠)

妊娠が成立するとプロゲステロンの作用で頸管腺が増殖し、粘稠な粘液が頸管内を満たして粘液栓をつくります。排卵期の頸管粘液と比べると、性状は次のように対照的です。

  • 排卵期:エストロゲンの作用で水様・透明、牽糸性が高く、羊歯状結晶を示す
  • 妊娠中:プロゲステロンの作用で粘稠、牽糸性が低く、羊歯状結晶はみられない

粘液栓は妊娠初期のうちに子宮内腔と腟を隔て、腟からの上行感染を防ぐ障壁として働きます。分娩が近づくと頸管の熟化・開大に伴って卵膜の一部が子宮壁から剝がれ、少量の出血が起こります。この血液と粘液栓が混じって排出されたものが産徴(いわゆる「おしるし」)です。頸管そのものも、妊娠初期から血管増生と浮腫によって軟らかくなります(Goodell徴候)。

外陰・腟の変化

エストロゲン、プロゲステロン、メラニン細胞刺激ホルモンの作用でメラニン産生が高まります。その結果、外陰部、乳頭・乳輪、腋窩、腹壁正中線(黒線)の色素沈着が増強し、顔面に肝斑が生じることもあります。

これとは別に、骨盤内のうっ血によって腟粘膜や外陰部が暗紫色に見える変化があり、リビド着色(Chadwick徴候)とよばれます。色素沈着はメラニンの増加、リビド着色は充血・うっ血と、機序が異なります。腟では上皮のグリコーゲンが増え、デーデルライン桿菌が乳酸をつくるため酸性に保たれ、帯下は増加します。

子宮体部の変化と子宮収縮

子宮は、エストロゲンによる筋線維の肥大と、内容の増大による伸展で大きくなります。重量は非妊時の数十gから、妊娠末期には約1kgに達します。子宮筋は妊娠初期から不規則で無痛性の収縮を起こしており、これがBraxton-Hicks収縮です。妊娠中期以降は「おなかの張り」として自覚されやすくなり、末期には頻度が増して前駆陣痛へ移行します。頸管の開大を伴わない点で、分娩陣痛とは区別されます。

実践での活用

妊婦健康診査や保健指導では、「おなかの張り」が生理的なBraxton-Hicks収縮なのか、切迫早産の徴候なのかを見極めることが重要です。次のような場合は受診を指示します。

  • 張りが規則的・頻回になる
  • 痛みを伴う
  • 安静にしても治まらない
  • 性器出血や破水感を伴う

また、色素沈着は生理的な変化で、多くは産後しだいに薄くなると伝えると、妊婦の不安の軽減につながります。

選択肢の確認

1.外陰部の色素沈着は増加しない。:妊娠中はエストロゲン、プロゲステロン、メラニン細胞刺激ホルモンの作用で外陰部の色素沈着が増強するため、「増加しない」は事実と逆です。乳頭・乳輪、腋窩、腹壁正中線にも同じ変化が現れ、多くの妊婦にみられる生理的変化です。腟・外陰の暗紫色化(リビド着色)はうっ血によるもので、メラニンによる色素沈着とは別の変化です。両者を区別して覚えると混同を防げます。

2.子宮頸管は妊娠後すぐに粘液で塞がれる。:正答。妊娠が成立するとプロゲステロンの作用で頸管腺から粘稠な粘液が分泌され、妊娠初期のうちに頸管内に粘液栓が形成されます。粘液栓は子宮内腔と腟を隔て、上行感染から胎児と卵膜を守ります。分娩前に頸管の開大に伴って出血と混じって排出されたものが産徴です。

3.妊娠黄体は分娩までプロゲステロンを分泌する。:妊娠黄体がプロゲステロン産生の主体となるのは妊娠初期に限られ、妊娠7〜10週ころには主体が胎盤へ移るため、「分娩まで」とする点が誤りです。妊娠黄体はhCGによって維持されますが、hCGの低下とともに退縮に向かいます。プロゲステロン自体は胎盤から分娩まで分泌され増加し続けるので、誤りなのは分泌源を黄体としている部分です。産生源を問われたら「初期は黄体、以後は胎盤」と整理しましょう。

4.妊娠末期からBraxton-Hicks〈ブラクストン・ヒックス〉収縮が子宮に出現する。:Braxton-Hicks収縮は妊娠初期から起きている不規則で無痛性の子宮収縮であり、妊娠末期になって初めて出現するものではありません。妊娠中期以降に自覚されやすくなり、末期に頻度が増えて前駆陣痛へ移行するため、「末期に目立つ」ことと「末期から出現する」ことを取り違えないよう注意が必要です。収縮が規則的になり、頸管の開大・展退を伴う場合は、分娩陣痛を考えます。妊娠37週未満であれば切迫早産を考えます。

覚えるポイント

  • 妊娠中の頸管粘液はプロゲステロンで粘稠化し、妊娠初期から粘液栓となって上行感染を防ぎます。分娩前に血液と混じって排出されたものが産徴です。
  • 頸管粘液は、排卵期(エストロゲン優位)には水様で牽糸性が高く羊歯状結晶あり、妊娠中(プロゲステロン優位)には粘稠で牽糸性が低く結晶なしです。
  • プロゲステロンの産生源は、妊娠初期はhCGに維持された妊娠黄体で、妊娠7〜10週ころに胎盤へ移行します。hCGのピークは妊娠8〜10週ころです。
  • 色素沈着(メラニン増加:外陰・乳頭乳輪・腋窩・正中線・肝斑)と、リビド着色(うっ血による腟・外陰の暗紫色、Chadwick徴候)を区別します。
  • Braxton-Hicks収縮は妊娠初期から起こる不規則で無痛性の収縮です。中期以降に自覚され、末期に増加して前駆陣痛へ移行します。分娩開始は、陣痛周期が10分以内、または1時間に6回以上の規則的な陣痛になった時点です。

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