第105回
105PM038|第105回 助産師国家試験 過去問
次の文を読み36〜38の問いに答えよ。Aさん(45歳、女性)は1年ほど前から月経周期が不整となり、半年くらい前から不眠や頭痛があり婦人科を受診した。Aさんは「眠れないのは更年期のせいではないかと夫に言われ受診しました。もうそんな年齢だと思うと、一層心がふさぎ込んでしまいます」と話した。医師は更年期障害の可能性を話し、診断のための検査を行うとAさんに伝えた。Aさんは、3か月の通院を経て症状の改善を自覚していた。ある日の婦人科外来受診日に、「月経は不規則ですが、少し元気もでてきた気がして、夫とは日常的に性生活を行うようになっています。以前はピルを使用したりもしていましたが、もう更年期だし、避妊はどうすればよいでしょうか」と話した。このときのAさんに助産師が行う説明で適切なのはどれか。
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正解3
正答
3.「ピル使用の可否について医師に相談してみましょう」
この問題のポイント
更年期の女性から避妊の相談を受けたときに、助産師がどう説明するかを問う問題です。判断の手がかりは「45歳」「月経は不規則」「日常的に性生活」「以前はピルを使用」の4点です。閉経が確認されるまでは排卵が起こりうるので避妊が必要です。一方で40歳以上では低用量経口避妊薬が慎重投与にあたるため、使えるかどうかは医師が判断します。
解説
事例から読み取る手がかり
Aさんは45歳です。1年ほど前から月経周期が不整になり、半年ほど前から不眠や頭痛も出ていました。年齢と月経の変化から、閉経に向かう移行期、つまり更年期にあると考えられます。
事例の続き(問37)で示されているとおり、Aさんは更年期障害と診断され、漢方薬による治療を始めています。その後3か月の通院で症状の改善を自覚しました。少し元気が出て夫と日常的に性生活を持つようになり、「もう更年期だし」と言いながら避妊の方法を尋ねています。この言葉からは、「更年期になればもう妊娠しないのでは」「もうピルは使えないのでは」という迷いがうかがえます。
助産師が押さえるべき点は次の2つです。
- Aさんには、まだ避妊が必要であること
- 以前使っていたピルが今も使えるかは、医学的な判断を要すること
更年期でも避妊が必要な理由
閉経とは、卵巣機能が停止して月経が永久に止まった状態をいいます。12か月以上無月経が続いたことを確認してから、最終月経の時点にさかのぼって判定します。日本人女性の閉経年齢はおよそ50歳です。閉経の前後5年ずつ、合わせて約10年間を更年期といいます。
閉経移行期には、次のような変化が起こります。
- 卵胞が減少し、卵胞刺激ホルモン(FSH)が上昇する
- エストロゲンの分泌が大きく揺れ動く
- 排卵のない周期が増える
ただし排卵が完全に止まるわけではなく、不規則ながら排卵する周期も残ります。「月経が不規則だから妊娠しない」とはいえません。Aさんは月経がまだあり、閉経は確認されていません。妊娠を望まない限り、避妊を続ける必要があります。
40歳代の妊娠では、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、流産、胎児の染色体異常の頻度が高くなります。また、更年期の症状だと思っていた無月経や体調の変化が、実は妊娠によるものだったという見落としも起こりえます。予期しない妊娠を防ぐことは、この年代の女性の健康を守る大切な支援です。
なお、Aさんが受けている漢方薬による治療に避妊効果はありません。更年期障害の治療でホルモン補充療法を行う場合も、その投与量では排卵は抑えられず、避妊効果はありません。「治療を受けているから妊娠しない」と考えないよう伝えることも大切です。
40歳以上と低用量経口避妊薬
低用量経口避妊薬(エストロゲンと黄体ホルモンの配合剤、OC)は、正しく服用すれば避妊効果の高い方法です。一方で、エストロゲンの作用で血液凝固能が高まり、静脈血栓塞栓症のリスクが上がります。このリスクは年齢とともに高くなり、40歳以上では心筋梗塞などの心血管系の障害も起こりやすくなります。
そのため、日本産科婦人科学会のOC・LEPガイドラインなどでは、次のように扱われています。
- 慎重投与:40歳以上
- 禁忌:50歳以上または閉経後、35歳以上で1日15本以上の喫煙者、前兆を伴う片頭痛、血栓症の既往、高血圧(軽度のものを除く)など
Aさんにはピルの使用経験がありますが、使っていたころと今とでは年齢も体の状態も違います。45歳の現在は、年齢に加えて次の点を評価し直す必要があります。
- 喫煙の有無、血圧、体格
- 既往歴、血栓症の家族歴
- 受診のきっかけの一つだった頭痛の性状(前兆を伴う片頭痛ではないか)
さらに、OCを服用すると規則的な消退出血が起こるため、自然な月経の変化から閉経を判断しにくくなります。この点も、医師と相談すべき理由の一つです。
OCは処方が必要な医薬品で、使用の可否を判断するのは医師です。助産師は、避妊が必要であることを伝えたうえで、以前使っていたピルが今も使えるかどうかを医師に相談するよう橋渡しをします。
助産師としての関わり
この年代では、エストロゲンを含まない避妊法も選択肢になります。
- コンドーム
- 銅付加子宮内避妊具
- レボノルゲストレル放出子宮内システム(過多月経の軽減も期待できる)
受診時に「もうそんな年齢だと思うと、一層心がふさぎ込んでしまいます」と話していたAさんが、元気を取り戻して夫と性生活を持てるようになりました。これは前向きな変化です。助産師は性を肯定的に受け止め、「もう更年期だから」という思い込みを正しい知識で修正します。そのうえで、Aさんと夫が納得して方法を選べるよう情報を提供し、医師と連携します。
選択肢の確認
1.「オギノ式避妊法を活用しましょう」:オギノ式は、排卵が次回月経予定日の12〜16日前に起こるという考え方にもとづく方法です。過去の月経周期から妊娠しやすい時期を推定し、その時期の性交を避けます。月経周期が規則的であることが前提なので、周期が不整なAさんでは妊娠しやすい時期を予測できず、勧めるのは不適切です。もともと失敗率が高く、性感染症も防げません。思春期や産後など、周期が安定しない時期にも向きません。
2.「性交渉は避けるのが望ましいです」:Aさんは体調の回復とともに夫と性生活を持つようになり、それを前提に避妊方法を尋ねています。性交をしなければ妊娠しないのは確かです。しかし性交渉を避けるよう求めると、本人と夫の生活や意思を否定することになり、相談にも応えていないため不適切です。性と生殖に関する健康と権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)の観点からも、禁欲を勧めるのではなく、安全で本人に合った避妊法を一緒に考えるのが助産師の役割です。
3.「ピル使用の可否について医師に相談してみましょう」:正答。Aさんは閉経が確認されておらず、避妊が必要です。低用量ピルは40歳以上では慎重投与であり、年齢、喫煙、血圧、既往歴、頭痛の性状などを踏まえて医師が使用の可否を判断します。以前使っていた方法を選択肢に残しながら、安全に使えるかどうかの判断を医師につなぐ説明であり、適切です。
4.「射精の直前にコンドームを装着するようにしましょう」:コンドームは、陰茎が勃起したら腟に挿入する前に装着し、性交の最初から最後まで使うのが正しい方法です。射精前に出る分泌液(カウパー腺液)にも精子が混じることがあるため、途中から装着しても妊娠を確実には防げず、性感染症の予防も不十分になります。コンドーム自体はホルモンを含まず、更年期の女性にも勧められる方法です。しかし、この説明は誤った使い方を勧めているため不適切です。
覚えるポイント
- 閉経は12か月以上の無月経を確認して判定します。それまでは月経が不規則でも排卵が起こりうるため、避妊が必要です。
- 低用量経口避妊薬は40歳以上で慎重投与、50歳以上または閉経後は禁忌です。35歳以上で1日15本以上の喫煙、前兆を伴う片頭痛、血栓症の既往も禁忌です。
- 更年期障害の治療に使う漢方薬やホルモン補充療法には、避妊効果がありません。
- オギノ式は規則的な月経周期が前提です。更年期、思春期、産後など周期が不安定な時期には向きません。
- コンドームは挿入前、つまり性交の最初から装着します。
- 助産師は性生活を否定せず、思い込みを正しい知識で修正し、処方が必要な方法は医師につなぎます。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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