第105回

105PM037|第105回 助産師国家試験 過去問

次の文を読み36〜38の問いに答えよ。Aさん(45歳、女性)は1年ほど前から月経周期が不整となり、半年くらい前から不眠や頭痛があり婦人科を受診した。Aさんは「眠れないのは更年期のせいではないかと夫に言われ受診しました。もうそんな年齢だと思うと、一層心がふさぎ込んでしまいます」と話した。医師は更年期障害の可能性を話し、診断のための検査を行うとAさんに伝えた。Aさんは更年期障害と診断され、漢方薬による治療を開始することになった。また、診断の過程で行った検査で、骨量は正常であったが大腿骨頸部の骨密度の低下がみられたため、保健指導を行うことになった。Aさんは、「まだよく眠れないこともあります。最近は、運動らしい運動はしていないです」と話した。このときのAさんに対する指導内容で正しいのはどれか。

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正解4

正答

4.「カルシウムを1日800 mg摂るようにしましょう」

この問題のポイント

閉経移行期の女性に骨密度の低下が見つかったときの保健指導を問う問題です。手がかりは「45歳で月経周期が不整(閉経移行期)」「大腿骨頸部の骨密度低下」「不眠が続いている」「運動習慣がない」の4点です。骨の健康を守る栄養(カルシウムは1日700〜800 mg、蛋白質は十分に、リンは控えめ)、運動は継続すること、睡眠は生活リズムを整えること、という原則から判断します。

解説

事例の整理

Aさんは45歳で、1年ほど前から月経周期が不整です。これは卵巣機能が低下し始めた閉経移行期にあたります。不眠や頭痛は更年期症状として出ており、更年期障害と診断されて漢方薬による治療が始まっています。検査で大腿骨頸部の骨密度低下が見つかり、本人は「まだよく眠れない」「運動らしい運動はしていない」と話しています。問題文では骨量は正常とされ、骨粗鬆症と診断された記載はありません。したがって、薬物療法よりも食事と運動を中心とした生活習慣への働きかけが指導の中心になる段階と読み取れます。あわせて、続いている不眠への助言も求められています。

閉経前後に骨密度が下がる理由

エストロゲンには破骨細胞の働きを抑え、骨吸収を抑える作用があります。閉経前後にエストロゲンが減ると骨吸収が骨形成を上回り、骨量は閉経の前後数年で急速に減少します。女性の骨量は20歳前後で最大に達し、その後しばらく保たれたのち、閉経を境に低下していきます。Aさんはまだ閉経前ですが、すでに骨密度の低下がみられます。閉経後は低下がさらに進むと予測されるため、今の時点から生活習慣を整えることに大きな意味があります。

骨を守る栄養

  • カルシウム:出題当時の「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」では、食品から1日700〜800 mg摂取することが推奨されています。乳製品、小魚、大豆製品、緑黄色野菜などから摂るよう勧めます。基本は食品からの摂取です。サプリメントで一度に大量に摂ることは勧められていません。
  • ビタミンD:腸管からのカルシウム吸収を促します。魚類やきのこ類に多く、日光を浴びると皮膚でも合成されます。
  • ビタミンK:骨基質蛋白(オステオカルシン)が働くために必要です。納豆や緑黄色野菜に多く含まれます。
  • 蛋白質:骨の有機成分と筋肉の材料になるため、十分に摂ります。
  • 控えめにするもの:リン(加工食品や清涼飲料水に多い)、過剰な食塩、カフェイン、アルコールです。喫煙も骨量低下の危険因子です。

運動と睡眠

骨は、繰り返し加わる力学的な負荷に反応して骨形成が進みます。そのため、ウォーキング、階段昇降、軽い筋力トレーニングなど体重のかかる運動を、無理のない強度で毎日続けることが基本です。筋力やバランス能力が高まれば、転倒と大腿骨近位部骨折の予防にもつながります。日中に体を動かすことは夜の眠りを深くする効果もあるため、Aさんの不眠への対策にもなります。

睡眠については、起床時刻をそろえて朝に光を浴びること、日中は活動的に過ごすこと、就寝前のカフェインや寝酒を避けることが基本です。出題当時の「健康づくりのための睡眠指針2014」でも、昼寝をするなら午後の早い時刻に30分以内の短いものにするよう示されています。Aさんは「一層心がふさぎ込んで」と話しており、気分の落ち込みもうかがえます。不眠や抑うつ気分が続いたり強くなったりした場合は、我慢せず医師に相談するよう伝えておくことも、実際の保健指導では大切です。

選択肢の確認

1.「蛋白質の摂取は制限しましょう」:蛋白質は、骨の有機成分であるⅠ型コラーゲンの材料であり、筋肉量を保つためにも欠かせません。不足すると骨の質が低下し、筋力も落ちて転倒・骨折の危険が高まるため、骨粗鬆症の予防では十分な摂取が勧められています。蛋白質を制限するのは、慢性腎臓病などで医師の指示がある場合です。骨密度が低下したAさんへの一般的な指導としては不適切です。

2.「昼間でも眠れるときに眠るようにしましょう」:眠気にまかせて日中に眠ると、夜までに眠気が十分にたまらず、体内時計のリズムも乱れます。その結果、夜間の寝つきの悪さや中途覚醒がかえって悪化します。不眠への助言としては、起床時刻を一定にし、日中は活動して生活リズムを整えることが基本です。昼寝をとるとしても、午後の早い時刻に短時間にとどめます。この指導は不眠を長引かせるおそれがあり、不適切です。

3.「運動は短期間に集中して行うようにしましょう」:運動の骨への効果は、負荷が繰り返し加わり続けることで得られるもので、やめると失われていきます。運動習慣のない人が短期間に集中して取り組むと、筋肉痛や関節痛、転倒などの傷害を起こしやすく、習慣としても定着しにくくなります。Aさんには、ウォーキングなどの荷重運動を少しずつ始め、長く継続するよう指導するのが適切であり、この内容は不適切です。

4.「カルシウムを1日800 mg摂るようにしましょう」:正答。骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン(2015年版)では、食品から1日700〜800 mgのカルシウム摂取が推奨されています。800 mgはこの推奨範囲に入っており、閉経移行期で骨密度が低下しているAさんに適した指導です。実際の指導では、乳製品・小魚・大豆製品など身近な食品で摂る工夫を具体的に伝え、ビタミンDやビタミンKもあわせて摂るよう勧めます。

5.「リンを多く含む食品を積極的に摂るようにしましょう」:リンは骨の構成成分ですが、通常の食事で不足することはほとんどありません。むしろ、加工食品や清涼飲料水に使われる食品添加物(リン酸塩)によって摂り過ぎになりやすい栄養素です。リンを過剰に摂ると、腸管でカルシウムと結合してその吸収を妨げ、副甲状腺ホルモンの分泌を促して骨吸収を高めます。「骨の成分だから多いほどよい」と誤解しやすい点ですが、リンは控えめにすべき対象であり、この指導は不適切です。

覚えるポイント

  • 閉経前後はエストロゲンの低下によって骨吸収が骨形成を上回り、骨量が急速に減少します。更年期女性の保健指導では、骨の健康が重要なテーマになります。
  • 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン(2015年版)の推奨は、カルシウムを食品から1日700〜800 mgです。ビタミンD(腸管からのカルシウム吸収を促進)とビタミンK(骨基質蛋白の働きに必要)もあわせて摂り、蛋白質は十分に摂ります。
  • 控えめにするのは、リン(加工食品・清涼飲料水)、過剰な食塩、カフェイン、アルコールです。喫煙も危険因子です。
  • 運動は、ウォーキングなどの荷重運動と筋力トレーニングを無理なく「継続」します。転倒予防にもなり、日中の活動量が増えることで睡眠の改善にもつながります。
  • 不眠への基本的な助言は、起床時刻を一定にすること、朝の光を浴びること、日中は活動すること、昼寝は午後早い時刻に短くすることです。
  • 原発性骨粗鬆症の診断基準では、脆弱性骨折がない場合、骨密度が若年成人平均値(YAM)の70%以下、または−2.5SD以下で骨粗鬆症と診断します。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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