第105回
105PM036|第105回 助産師国家試験 過去問
次の文を読み36〜38の問いに答えよ。Aさん(45歳、女性)は1年ほど前から月経周期が不整となり、半年くらい前から不眠や頭痛があり婦人科を受診した。Aさんは「眠れないのは更年期のせいではないかと夫に言われ受診しました。もうそんな年齢だと思うと、一層心がふさぎ込んでしまいます」と話した。医師は更年期障害の可能性を話し、診断のための検査を行うとAさんに伝えた。助産師はAさんの支援に向けて初回の面接を行うことにした。このときに助産師が収集する情報で最も優先するのはどれか。
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正解3
正答
3.Aさんが自覚している症状
この問題のポイント
更年期障害が疑われる女性の初回面接で、最初に集めるべき情報を問う問題です。更年期障害は、器質的な病気では説明できない多彩な症状のうち、日常生活に支障をきたすものを指します。そのため診断にも支援にも、本人が感じている症状の種類・程度・生活への影響を知ることが欠かせません。「夫に言われて受診した」「一層心がふさぎ込んでしまう」という発言は、本人の自覚を本人の言葉で丁寧に聴く必要があることを示す手がかりです。
解説
事例の整理
- 45歳、1年前から月経周期が不整:卵巣機能が低下し始めた閉経移行期と考えられます。日本人女性の平均閉経年齢は約50歳です。閉経をはさむ前後各5年、計約10年間を更年期と呼ぶので、45歳は更年期の入口にあたります。
- 半年前から不眠と頭痛:更年期にみられる精神神経症状に当てはまる訴えです。ほかの症状があるかどうかは、まだ分かっていません。
- 受診のきっかけは夫の言葉:Aさん自身が何に最も困っているのかは、まだ語られていません。
- 「もうそんな年齢だと思うと、一層心がふさぎ込んでしまいます」:加齢の受け止めに伴う抑うつ気分が表れています。
- 医師は診断のための検査を行う段階:診断も治療方針もまだ決まっていません。
更年期障害の考え方
日本産科婦人科学会は、更年期に現れる多様な症状のうち器質的変化に起因しないものを「更年期症状」、そのうち日常生活に支障をきたす病態を「更年期障害」と定義しています。
原因はエストロゲンの低下だけではありません。性格などの心理的要因や、仕事・家庭環境、子の自立、親の介護といった社会的要因も重なって起こります。症状はおおむね次のように分けられ、現れ方にも程度にも大きな個人差があります。
- 血管運動神経症状(ほてり、のぼせ、発汗、動悸など)
- 精神神経症状(不眠、頭痛、めまい、いらいら、抑うつ、不安など)
- 運動器症状(肩こり、腰痛、関節痛など)
診断では、次の3つを組み合わせます。
- 甲状腺機能異常やうつ病など、似た症状を示す疾患を除外する
- ホルモン検査で、エストラジオールの低下とFSHの上昇を確認する
- 簡略更年期指数(SMI)などの自己記入式質問票で症状を評価する
つまり更年期障害は、本人の自覚症状と、それによる生活への支障を中心に判断される状態です。
初回面接で自覚症状を最優先にする理由
第一に、症状の全体像をつかむためです。Aさんは不眠と頭痛を訴えていますが、ほてりや肩こりなどを更年期と結びつけずにいる可能性があります。それぞれの症状について、いつから、どの程度か、睡眠・家事・仕事にどう影響しているかを聴くことが、診断を裏づける情報になります。ホルモン補充療法、漢方薬、生活指導、カウンセリングなど、どこから手をつけるかを決める基礎にもなります。
第二に、心の状態を評価するためです。「ふさぎ込む」という訴えは、自覚症状の中でも特に丁寧に聴く必要があります。落ち込みの程度や持続期間、食欲・意欲の低下を確認することは、うつ病との鑑別や専門機関への紹介を判断する材料になります。抑うつが強い場合は、希死念慮の有無も確認します。
第三に、Aさんを支援の主体とするためです。初回面接は信頼関係を築く場でもあります。開かれた質問で本人の主訴から聴き始め、訴えを受け止めてもらえたと感じてもらうことが大切です。その経験が、夫に促されて受診したという受け身の姿勢から、自分の健康に向き合う姿勢へ移る助けになります。性に関することなどのプライベートな話題や家族の意向は、関係が築けてから必要に応じて扱います。
選択肢の確認
1.性生活の状況:更年期にはエストロゲン低下によって腟粘膜が萎縮し、性交痛や性欲の低下が起こることがあり、支援の過程では意味のある情報です。しかし非常にプライベートな内容です。信頼関係ができていない初回面接で援助者のほうから優先して尋ねると、心を閉ざさせるおそれがあります。Aさん自身が性に関する悩みを訴えたときや、関係が築けたあとに、プライバシーに配慮して聴き取る事柄です。
2.治療に対する夫の考え:現時点は診断のための検査を行う段階で、治療はまだ決まっていないため、優先する情報ではありません。夫は受診のきっかけをつくった人物であり、家族の理解や協力は今後の支援で重要になります。それでも支援の対象はAさんで、治療はAさん自身の意思で選ぶものです。夫の意向を先に確かめると、本人の主体性を損ないます。夫の言葉をきっかけに年齢を意識して落ち込んでいる可能性もあるため、家族関係の把握は本人の思いを聴いたあとに行います。
3.Aさんが自覚している症状:正答。更年期障害は症状が多彩で個人差が大きく、日常生活への支障の有無が定義の要件でもあります。そのため、症状の種類・程度・経過・生活への影響を本人から聴くことが、診断・治療と支援計画の出発点になります。不眠と頭痛以外の症状や気分の落ち込みの程度を確かめることは、うつ病などとの鑑別にもつながります。
4.加齢による容姿の変化への不安:Aさんが語っているのは「年齢を意識して気持ちがふさぐ」ことであり、容姿については何も述べていません。加齢の受け止めやボディイメージの変化は更年期の心理面の大切なテーマで、実際に容姿の変化に不安を抱く女性もいます。しかし、本人が表出していない不安を援助者が想定して尋ねるのは先入観にもとづく情報収集であり、かえって加齢を意識させてしまうおそれがあります。気分の落ち込みは、自覚症状(精神神経症状)の一つとして聴く中で自然に扱えます。
覚えるポイント
- 閉経は12か月以上の無月経を確認してから判定します。日本人の平均閉経年齢は約50歳で、更年期は閉経前後の各5年、計約10年間です。
- 更年期障害とは、器質的変化に起因しない更年期症状のうち、日常生活に支障をきたすものです。原因はエストロゲン低下に心理的・社会的要因が重なったものです。
- 症状は、血管運動神経症状(ほてり・発汗・動悸)、精神神経症状(不眠・頭痛・抑うつ・いらいら)、運動器症状(肩こり・腰痛)などに分けられ、個人差が大きいのが特徴です。
- 検査ではFSH上昇とエストラジオール低下を確認し、甲状腺疾患やうつ病を除外します。症状の評価には簡略更年期指数(SMI)などの自己記入式質問票を用います。
- 初回面接では、まず本人の主訴・自覚症状・生活への影響を開かれた質問で聴きます。性生活などのプライベートな話題や家族の意向は、信頼関係ができてから扱います。
- 抑うつ気分の訴えがあれば程度と持続期間を確認し、うつ病との鑑別や希死念慮の有無にも目を向けます。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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