第105回

105AM054|第105回 助産師国家試験 過去問

次の文を読み53〜55の問いに答えよ。Aさん(39歳、アルバイト)は、3年前からパートナーと同居しはじめたが入籍はしていない。2年半前に流産し、その後、避妊をせずに性交を行っているが、妊娠しない状況が続いている。Aさんは、そのうち子どもができるだろうと考えていたが、40歳の誕生日が近づき年齢を意識するようになってから、焦りのような不安な気持ちになった。Aさんは、市の不妊専門相談センターを訪問し、助産師に「流産した後、妊娠しません。子どもが欲しいと思っているのですが、私の年齢で自然な妊娠は無理なのかと心配です」と話した。Aさんは、40歳の誕生日に不妊治療の開始を決断した。2人で生殖補助医療の指定医療機関のクリニックを受診したところ、パートナーが乏精子症と診断された。パートナーは気持ちが落ち込み、すぐに治療を開始することができなかった。半年後、精子を精巣から採取する治療を経て、顕微授精で妊娠が成立した。Aさんは、「特定不妊治療費助成を利用したいのですが、私は申請できるのでしょうか」 と助産師に話した。Aさんの住む居住地の特定不妊治療費助成制度は、国の要件に準拠して実施されている。特定不妊治療費助成制度の説明で正しいのはどれか。

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正解1

正答

1.「顕微授精と男性不妊治療のいずれも助成対象なので申請できます」

この問題のポイント

出題当時(2022年2月)の特定不妊治療費助成制度について、対象となる治療、対象者、年齢要件、申請の時期を問う問題です。問題文の「顕微授精」「精子を精巣から採取する治療」「指定医療機関」「入籍はしていない」「40歳」は、それぞれ申請要件を確認するための手がかりです。2021年1月の制度拡充で所得制限が撤廃され、事実婚も対象になったことを踏まえて判断します。

解説

問題文の手がかり

申請できるかどうかに関わる情報は次のとおりです。

  • 治療内容:精巣から精子を採取する手術(精巣内精子採取術など)を経た顕微授精
  • 医療機関:生殖補助医療の指定医療機関
  • パートナーとの関係:同居しているが入籍していない(事実婚)
  • 年齢:40歳の誕生日に治療開始を決め、その後の治療で妊娠が成立(治療開始時は40歳)
  • 治療の段階:妊娠が成立し、1回の治療が終わったところ

出題当時の制度

特定不妊治療費助成制度は、医療保険が適用されず高額になる体外受精と顕微授精(特定不妊治療)の経済的負担を軽くするため、2004年度に始まった国の補助事業です。実施主体は都道府県・指定都市・中核市で、実施主体が指定した医療機関で治療を受けることが条件でした。主な要件は次のとおりです(2021年1月1日以降に終了した治療について)。

  • 対象となる治療:体外受精と顕微授精です。特定不妊治療の一環として行われる男性不妊治療(精巣内精子採取術など手術による精子の採取)も対象でした。人工授精などの一般不妊治療は、国の制度では対象外でした。
  • 対象者:特定不妊治療以外の方法では妊娠の見込みがないか極めて少ないと医師に診断された夫婦です。2021年1月から事実婚の夫婦も対象になり、所得制限(それまでは夫婦合算730万円未満)も撤廃されました。
  • 年齢と回数:治療期間の初日に妻が43歳未満であることが条件です。初めて助成を受けたときの治療開始時の年齢が40歳未満なら通算6回まで、40歳以上43歳未満なら通算3回までです。2021年1月からは、この回数が子ども1人ごとに数え直されるようになりました。
  • 申請:採卵に向けた投薬の開始などから、妊娠の確認または医師の判断による治療終了までの一連の過程を「1回の治療」と数えます。1回の治療が終わるごとに、実施主体が定める期限内に申請します。

Aさんへの当てはめ

顕微授精と、精巣からの精子採取という男性不妊治療は、どちらも助成の対象です。治療は指定医療機関で受けています。入籍していない点は、出題当時は事実婚として対象になっており、事実婚であることを確かめる書類を提出すれば申請できました。年齢も43歳未満の条件を満たしています(40歳以上のため回数の上限は3回)。妊娠が確認された時点で1回の治療は終わっているため、今すぐ申請できます。したがって「申請できます」と伝えるのが正しい説明です。

実践では、Aさんの「私は申請できるのか」という問いの背景にある不安(年齢、入籍していないこと)を受け止め、正確な制度情報を伝えることが大切です。また、男性不妊の診断は男性の自尊心やカップルの関係に影響しやすいものです。パートナーがすぐに治療を始められなかった経過からも、助産師はカップルの双方を支援の対象として捉える必要があります。

現在の制度

2022年4月から、人工授精などの一般不妊治療と、体外受精・顕微授精などの生殖補助医療が保険適用になりました。精巣内精子採取術も保険の対象です。保険適用では、治療開始時の女性の年齢が43歳未満であること、回数は40歳未満が子ども1人ごとに胚移植通算6回まで、40歳以上43歳未満が3回までという枠組みが引き継がれました。事実婚も対象です。これに伴い、特定不妊治療費助成制度は、年度をまたぐ治療を対象とした経過措置を最後に終了しました。本問は出題当時の助成制度を前提として解きます。

選択肢の確認

1.「顕微授精と男性不妊治療のいずれも助成対象なので申請できます」:正答。顕微授精は体外受精とともに特定不妊治療の中心で、助成の対象です。精巣から精子を採取する手術は、特定不妊治療の一環として行う男性不妊治療として対象に含まれていました。出題当時は事実婚も対象で、治療開始時の年齢も43歳未満の条件を満たし、指定医療機関で治療しているため、Aさんは申請できます。

2.「申請前にカウンセリングを受けることが必要です」:カウンセリングを受けることは、助成を申請するための要件ではありません。必要だったのは、申請書、指定医療機関の医師が記入する証明書、夫婦であることなどを確かめる書類でした。不妊専門相談センターでの相談は、心理的な支援や情報を得るために任意で利用するものです。検査前の遺伝カウンセリングが求められる出生前検査(NIPTなど)と混同しないようにします。

3.「40歳未満でないと申請することができません」:年齢の上限は、治療期間の初日に妻が43歳未満であることです。40歳は回数の上限を分ける区切り(40歳未満は6回、40歳以上43歳未満は3回)であり、申請できるかどうかを決める基準ではありません。40歳のAさんは3回まで利用できます。43歳と40歳の役割の違いを取り違えないことが大切です。

4.「出産後に申請しなければなりません」:申請は、1回の治療が終わった後に、実施主体が定める期限内に行います。1回の治療は妊娠の確認で終わるため、妊娠が成立した時点で申請でき、出産を待つ必要はありません。妊娠に至らなかった場合も、治療が終われば申請の対象です。出産まで待つと期限を過ぎて申請できなくなるおそれがあり、利用者にとって不利益になります。

覚えるポイント

  • 出題当時の特定不妊治療費助成の対象は、体外受精・顕微授精と、その一環として行う男性不妊治療(精巣内精子採取術など)です。人工授精は国の制度では対象外でした。
  • 年齢の上限は治療開始時の妻の年齢が43歳未満です。40歳は回数を分ける区切りで、40歳未満は6回、40歳以上43歳未満は3回です。
  • 2021年1月の拡充で、所得制限の撤廃、事実婚の対象化、子ども1人ごとの回数の数え直しが行われました。
  • 申請は1回の治療が終わるごとに期限内に行います(妊娠の確認で1回が終了)。カウンセリングは申請要件ではありません。
  • 2022年4月から一般不妊治療・生殖補助医療は保険適用です。年齢43歳未満と回数(胚移植6回・3回)の枠組みは保険に引き継がれ、助成制度は経過措置の後に終了しました。
  • 不妊専門相談センターは都道府県・指定都市・中核市が設置し、医師や助産師などが相談に応じます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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