第105回

105AM053|第105回 助産師国家試験 過去問

次の文を読み53〜55の問いに答えよ。Aさん(39歳、アルバイト)は、3年前からパートナーと同居しはじめたが入籍はしていない。2年半前に流産し、その後、避妊をせずに性交を行っているが、妊娠しない状況が続いている。Aさんは、そのうち子どもができるだろうと考えていたが、40歳の誕生日が近づき年齢を意識するようになってから、焦りのような不安な気持ちになった。Aさんは、市の不妊専門相談センターを訪問し、助産師に「流産した後、妊娠しません。子どもが欲しいと思っているのですが、私の年齢で自然な妊娠は無理なのかと心配です」と話した。このときの助産師の対応で最も適切なのはどれか。

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正解3

正答

3.不妊症には様々な原因があることを説明する。

この問題のポイント

不妊の相談に初めて訪れた女性に、助産師が最初に何を伝えるべきかを問う問題です。判断の手がかりは2つあります。1つは、Aさんがまだ不妊の検査を受けていないことです。もう1つは、「私の年齢で自然な妊娠は無理なのか」と、妊娠しない理由を年齢だけに結び付けて不安になっていることです。不妊の原因は男女双方に多様にあり、検査で確かめられると伝えることで、正確な理解と次の行動(受診・検査)につなげます。

解説

Aさんの状況の整理

  • 39歳で、40歳を前に年齢を意識し、焦りと不安を感じています。
  • パートナーとは3年前から同居していますが、入籍はしていません。
  • 2年半前に流産し、その後は避妊せずに性交を続けていますが、妊娠していません。
  • 不妊の検査や受診の経歴は、問題文に書かれていません。

日本産科婦人科学会は、妊娠を希望する男女が避妊をせずに通常の性交を続けていても一定期間妊娠しない状態を不妊としています。その期間は一般に1年とされます(2015年に2年から1年へ変更)。また、妊娠のために医学的介入が必要な場合は、期間を問いません。Aさんは2年半妊娠しておらず、不妊に当てはまります。

一度妊娠した後に妊娠しない場合は続発性不妊(二次性不妊)と呼び、一度も妊娠したことがない原発性不妊と区別します。流産を繰り返す不育症(2回以上の流産・死産)とも異なります。Aさんの問題は「流産を繰り返すこと」ではなく、「妊娠が成立しないこと」です。

不妊の原因は多様である

  • 女性側の要因:排卵の障害(多嚢胞性卵巣症候群、高プロラクチン血症、甲状腺機能の異常など)、卵管の障害(クラミジア感染症や子宮内膜症による癒着など)、子宮の要因(子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮腔内の癒着など)、頸管の要因、免疫の要因(抗精子抗体)があります。
  • 男性側の要因:造精機能障害が最も多く、ほかに精路の通過障害、勃起障害や射精障害などの性機能障害があります。
  • 検査をしても明らかな原因が見つからない原因不明不妊(機能性不妊)もあります。

WHOの調査では、不妊カップルの約半数に男性側の要因が関わるとされています。Aさんの場合も、可能性はいくつも考えられます。流産後の処置や感染に関連した子宮・卵管の問題、パートナー側の要因、加齢による卵子の数や質の低下などです。どれが当てはまるかは、基礎体温、ホルモン検査、超音波検査、子宮卵管造影、精液検査などを行わなければ分かりません。

女性の妊孕性(妊娠する力)は30歳代半ばから低下し、40歳前後でさらに低下します。加齢が重要な要因であることは事実です。しかし、年齢だけで「自然な妊娠は無理」と結論づけることはできません。

助産師の対応の考え方

まず、Aさんの焦りや不安を受け止めます。そのうえで、原因は様々であり検査で調べられることを伝えます。これにより、「年齢のせいだ」という思い込みが修正され、「自分たちの状況を知るために検査を受ける」という具体的な行動を考えられるようになります。不妊はカップルの問題なので、パートナーと一緒に受診する意義もこの説明から自然に伝えられます。

年齢を考えると時間の余裕は大きくありません。そのため、事実をぼかして安心させるのではなく、早めに専門医療機関を受診するよう勧めることも大切です。治療を受けるか、どこまで続けるかを決めるのは本人たちです。助産師はその意思決定を支える立場にあります。

出題当時の不妊専門相談センターは、都道府県・指定都市・中核市が設置し、医師や助産師などが相談や情報提供を行っていました。2022年度からは「性と健康の相談センター事業」に位置づけられています。

選択肢の確認

1.不妊治療の費用について説明する。:費用は、検査で原因が分かり治療を検討する段階で必要になる情報です。Aさんの問いは「自分の年齢で自然な妊娠が可能か」であり、相談の焦点からずれます。治療が前提であるかのような印象を与えるおそれもあります。制度面では、出題当時は特定不妊治療費助成事業で体外受精・顕微授精の費用が助成されていました。現在は2022年4月から、人工授精・体外受精・顕微授精などが保険適用となっています。治療の選択肢を検討する段階になれば、費用・保険・助成の情報提供は大切な支援になります。

2.妊娠の年齢と流産率の関係について説明する。:加齢に伴って流産率が上がること自体は事実で、主な背景は胎児の染色体異常の増加です。しかし、Aさんが今困っているのは「妊娠しないこと」であり、流産の話はその問いへの答えになりません。流産を経験した人に年齢と流産のリスクを重ねて伝えれば、不安を強めるだけになりかねません。妊娠が成立した後や、妊娠前にリスクについて質問されたときであれば、必要な情報になります。

3.不妊症には様々な原因があることを説明する。:正答。不妊の原因は年齢に限らず、女性側・男性側の双方に多様にあり、原因不明のこともあります。検査で原因を確かめれば、原因に応じた対応が考えられます。このことを伝えると、年齢だけで悲観しているAさんの思い込みが修正されます。そして、パートナーと一緒に早めに検査を受けるという具体的な行動へつながります。

4.高年齢なので不妊治療が必要であると説明する。:加齢で妊孕性が低下するのは事実ですが、治療が必要かどうかは検査結果と本人たちの意向を踏まえて決まるものです。検査前の段階で断定はできず、助産師が治療の必要性を判断する立場でもありません。断定的に伝えると不安を強め、カップルの自己決定を妨げます。年齢を踏まえて「早めの受診・検査を勧める」のは適切ですが、「治療が必要」と言い切ることとは区別してください。

覚えるポイント

  • 不妊の定義(日本産科婦人科学会):避妊せずに性交を続けても1年妊娠しない状態です(2015年に2年から変更)。医学的介入が必要な場合は期間を問いません。
  • 一度妊娠した後に妊娠しないのは続発性不妊、一度も妊娠していないのは原発性不妊です。2回以上の流産・死産を繰り返す不育症とは区別します。
  • 不妊の原因は、女性側(排卵・卵管・子宮・頸管・免疫)、男性側(造精機能障害が最多)、原因不明と多様です。約半数に男性側の要因が関わるため、カップル単位で検査するのが基本です。
  • 女性の妊孕性は30歳代半ばから低下します。年齢が高いほど早めの受診を勧めますが、年齢だけで妊娠の可否や治療の必要性を断定しません。
  • 不妊相談の初期対応は、不安の受容、正確な情報提供(原因は多様で検査で分かる)、受診・検査という次の行動への支援、の順で考えます。
  • 制度の変化:出題当時は特定不妊治療費助成事業がありました。2022年4月からは人工授精・体外受精・顕微授精などが保険適用となっています。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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