第105回

105AM052|第105回 助産師国家試験 過去問

次の文を読み50〜52の問いに答えよ。Aちゃん(生後4か月0日、女児)は、4か月児健康診査の受診のために母、兄(3歳)とともに来院した。問診では、Aちゃんの出生時に異常の指摘はなく、これまで完全母乳栄養で、ワクチン接種や健康診査以外で医療機関を受診したことはないことがわかった。また母親はAちゃんが嫌がるので、オムツ替えが難しいと話した。来院時の身体計測値は身長63 cm、体重7,000 g、頭囲47 cmであった。健康診査の最後に事故予防の指導をしようとしたところ、母親から「上の子の時にも聞いたので大丈夫です」という発言があり、急いで帰宅したい様子が見られた。限られた指導時間で、兄との関連から最も注意を促すべき事故はどれか。

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正解2

正答

2.窒息

この問題のポイント

4か月児健康診査の事故予防指導で、「限られた指導時間」と「兄との関連」という2つの条件から、最も優先して伝えるべき事故を選ぶ問題です。手がかりは2つあります。物に手を伸ばしてつかみ、口へ運ぶ行動がこれから本格化する生後4か月という発達段階と、小さな玩具やお菓子を身近に持つ3歳の兄がいるという家庭環境です。0歳児の不慮の事故死で最も多いのが窒息であることもあわせると、兄の持ち物や行動による窒息が最優先になります。

解説

この事例には身体計測値やオムツ替えを嫌がる様子など、本問の判断には直接使わない情報も含まれています。本問で問われているのは事故予防の指導内容で、判断に使う情報は次の3つです。

  • Aちゃんは生後4か月0日で、手でつかむ動作や寝返りがこれから増えていく時期である
  • 3歳の兄がいる
  • 母親は「上の子の時にも聞いた」と話し、急いで帰りたい様子で、指導に使える時間が限られている

生後4か月の発達と事故の関係

乳児の事故は、運動発達で「新しくできるようになったこと」と結び付いて起こります。生後3〜4か月で首がすわり、4〜5か月頃から目の前の物に手を伸ばしてつかみ、何でも口へ運んで確かめるようになります。寝返りは5〜6か月頃に多くの子ができるようになり、その後おすわり、はいはい、つかまり立ち、伝い歩きへと進みます。これに合わせて、起こりやすい事故も移り変わります。

  • 寝返りの前後:ベッドやソファからの転落、柔らかい寝具や衣類による窒息
  • つかんで口へ運ぶ時期:小さな物の誤飲や、食べ物・小さな物による窒息
  • はいはい・つかまり立ち以降:ポットや炊飯器などによるやけど、浴槽での溺水、階段からの転落

健康診査での事故予防指導は、今起きている事故だけを扱うものではありません。次の数か月で新たにできるようになることを見越して伝える、先取りの指導です。4か月児では、ちょうどこれから「つかんで口に入れる」行動が本格化します。

兄の存在がもたらす危険

自分で移動できない4か月児の手や口に小さな物が届くのは、主に誰かがそばに置いたり手渡したりしたときです。3歳児は小さなブロックやビーズ、ミニカーの部品などで遊び、床やソファに置いたままにしがちです。あめやラムネのような小さなお菓子を持ち歩くこともあります。さらに、赤ちゃんをかわいがるつもりで、自分のおやつやおもちゃを乳児の口元へ持っていくことがあります。兄と並んで寝たり遊んだりするときに、兄の体やぬいぐるみ、掛け布団が乳児の顔をふさぐこともあり得ます。兄がいることで、乳児の口や鼻の周りに危険な物が集まりやすくなるのです。

乳児は気道が細く、咳で異物を出す力も弱いため、口に入れた物が気道に入る(誤嚥)と短時間で気道がふさがれ、命に関わります。食べ物以外の物を飲み込んで食道や胃に入る誤飲とは区別して理解しておきます。人口動態統計でも、0歳児の不慮の事故による死亡原因は、長年にわたり不慮の窒息が最も多くなっています。万一のときの応急手当として、乳児の気道異物には背部叩打法と胸部突き上げ法を行い、腹部突き上げ法は行わないことも押さえておきます。

「上の子の時にも聞いた」への対応

母親の発言は、指導を省いてよい理由にはなりません。兄が乳児だった頃は、年上のきょうだいの玩具やお菓子が身近にある環境ではなかったと考えられます。今回は兄がいることで、前回の指導では想定していなかった危険が加わっています。母親の子育て経験を認めたうえでこの点を伝えると、「今の自分の家庭に関係する話だ」と受け止めてもらいやすくなります。

時間が限られているからこそ、事故予防を網羅的に話すのではなく、この家庭に固有で最も重大な点に絞ります。伝え方は、たとえば次のような具体的な行動の形にします。

  • 兄のおもちゃやおやつをAちゃんの手の届く所に置かない
  • 兄が赤ちゃんに食べ物やおもちゃをあげないよう、兄にも分かる言葉で約束しておく

口に入る大きさの目安も有効です。3歳児が口を大きく開けたときの大きさである直径約39 mm(トイレットペーパーの芯を通る程度)より小さい物は危険、と伝えます。家庭ですぐに確かめられるので、短時間でも行動に移してもらいやすい方法です。詳しい内容はリーフレットなどで補うとよいでしょう。

選択肢の確認

1.火傷:乳児のやけどは、はいはいやつかまり立ちで自分で移動できるようになる時期から増えます。ポットや炊飯器の蒸気に触れる、テーブルクロスを引いて熱い飲み物をかぶる、といった形が典型です。自力で移動できない4か月児で主に注意するのは、大人が抱いたまま熱い飲み物を扱うこと、入浴時の湯温、湯たんぽなどによる低温やけどです。いずれも3歳の兄の存在によって特に高まる危険とはいえません。はいはいを始める頃に向けて重点的に指導する項目です。

2.窒息:正答。生後4か月は、物をつかんで口に運ぶ行動がこれから本格化する時期です。3歳の兄が床やソファに置いた小さな玩具や、兄が持っている・与えようとするあめやラムネなどを口に入れ、それが気道に入ってふさがる危険は、兄の存在によって最も高まります。兄が乳児の顔の近くにぬいぐるみやタオルを置く、そばで寝て覆いかぶさるといった行動も、鼻や口をふさぐ原因になります。0歳児の不慮の事故死の原因として最も多い事故でもあり、限られた時間で最優先に伝えるべき内容です。

3.溺水:乳幼児が溺れる事故は主に浴室で起こります。典型は、入浴中に保護者が洗髪などで目を離したすきに浴槽内で沈む事故と、つかまり立ち・伝い歩きができるようになった後に一人で浴室に入り、残し湯の浴槽に落ちる事故です。4か月児の入浴は常に大人が付き添って行うため、指導の中心は「入浴中は一瞬でも目を離さない」ことです。兄と一緒に入浴する家庭では、母親が兄の体を洗っている間に乳児から目を離す危険もあります。ただしこれは入浴という限られた場面の危険です。兄が遊んだり食べたりする日常のあらゆる場面にかかわる選択肢2の危険のほうが、優先度は高くなります。

4.転倒:この選択肢は、立ったり歩いたりできる子どもが同じ高さの面でつまずいたり滑ったりして倒れる事故を指し、歩行前の4か月児にはほとんど当てはまりません。この月齢で注意すべきなのは、寝返りを始めることによるベッドやソファ、おむつ交換台などからの転落で、高さのある所から落ちる事故として区別します。兄が抱き上げようとして落とす危険も転落に当たります。兄との関連で考えても、この選択肢は月齢に合わない事故です。

覚えるポイント

  • 乳児の事故は運動発達と結び付いて変わります。寝返りの前後は転落と寝具による窒息、つかんで口へ運ぶ時期は誤飲・窒息、はいはい・つかまり立ち以降はやけど・溺水・階段からの転落が増えます。
  • 0歳児の不慮の事故による死亡原因で最も多いのは窒息です(人口動態統計)。寝具、吐いた乳、小さな物や食べ物による窒息の予防を優先して指導します。
  • きょうだいがいる家庭では、上の子の小さな玩具やお菓子が乳児の誤飲・窒息の原因になり、上の子が善意で乳児の口に入れることもあります。時間が限られる指導ほど、その家庭・その月齢に固有の最も重大な危険に絞り、具体的な行動として伝えます。
  • 口に入る大きさの目安は直径約39 mm(3歳児の最大開口、トイレットペーパーの芯を通る大きさ)です。
  • 転倒は同じ高さの面で倒れる事故、転落は高さのある所から落ちる事故です。歩行前の乳児で問題になるのは転落です。
  • 誤飲は食べ物以外の物を飲み込んで消化管に入ること、誤嚥は食物や異物が気道に入ることです。乳児の気道異物には背部叩打法と胸部突き上げ法を行い、腹部突き上げ法は行いません。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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