第106回

106PM018|第106回 助産師国家試験 過去問

Aちゃん(生後6か月、男児)は両親と3人暮らしである。Aちゃんが通所している保育所でロタウイルス感染症が流行している。母親がAちゃんを連れて6か月児健康診査のために病院を受診した際、「Aはワクチンを接種していますが、ロタウイルスに感染したらどうなるのか心配です。感染を予防するにはどうしたらよいでしょうか」と話した。助産師の母親への説明で正しいのはどれか。

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正解4

正答

4.「ワクチンを接種していれば重症化しにくいです」

この問題のポイント

ロタウイルスワクチンで期待できる効果の範囲と、ロタウイルスの感染経路・消毒法を理解しているかを問う問題です。判断の鍵は、母親の「ワクチンを接種していますが心配です」という言葉と、「保育所で流行している」という状況です。ワクチンは感染を完全には防げませんが重症化を強く防ぐこと、ロタウイルスはエンベロープをもたずアルコールが効きにくいこと、主な感染経路が糞口感染であることを押さえれば、正答を選べます。

解説

問題文の手がかり

Aちゃんは生後6か月で、保育所に通っています。ロタウイルス胃腸炎は生後6か月〜2歳ごろの乳幼児に多い感染症です。保育所のような集団生活の場では、おむつ交換や玩具の共有を通じて容易に広がります。つまりAちゃんは、かかりやすい年齢で、しかも流行の場に毎日通っている状況です。

母親は、ワクチンを接種済みであることを踏まえて「感染したらどうなるか」「どう予防するか」を尋ねています。助産師には、ワクチンで期待できる効果を正確に伝えることと、ワクチン以外の予防策を正しく伝えることの両方が求められます。

ロタウイルス感染症の特徴

ロタウイルスは、エンベロープ(脂質の外膜)をもたないRNAウイルスです。患者の便には大量のウイルスが排出され、ごく少量でも感染が成立します。感染経路の中心は、便や吐物に汚染された手指・物品を介して口から入る糞口感染(経口感染・接触感染)です。また、環境中でも比較的長く感染力を保ちます。

潜伏期間は1〜3日ほどです。嘔吐や発熱に続いて水様性の下痢がみられ、便が白色〜黄白色になることがあります。乳幼児は嘔吐と下痢で脱水に陥りやすく、けいれんや脳症を合併することもあります。特効薬はないため、治療は経口補水療法や輸液による脱水の補正が中心です。

ロタウイルスワクチンの効果

ロタウイルスワクチンは、口から飲ませる経口弱毒生ワクチンです。2020年(令和2年)10月から定期接種となり、同年8月1日以降に生まれた乳児が対象です。

  • 1価ワクチン:2回接種(生後24週0日まで)
  • 5価ワクチン:3回接種(生後32週0日まで)

初回接種は生後14週6日までが推奨されています。これは、月齢が進むと腸重積症の発症が増えるため、その時期と重ならないようにするためです。

ロタウイルスには生涯に何度も感染しえますが、初回の感染が最も重症になりやすく、2回目以降は軽く済む傾向があります。ワクチンはこの性質を利用して、実際に感染する前に免疫をつけておくものです。そのため、感染そのものは完全には防げませんが、入院を要するような重い胃腸炎を大きく減らします。母親の不安には「感染することはありうるが、重症化しにくい」と伝えるのが正確です。

ワクチン以外の予防と家庭での観察

ワクチンを接種していても、日常の感染対策は欠かせません。

  • 石けんと流水で手を洗う:おむつ交換やトイレの後、調理・授乳・食事介助の前に行います。
  • 便や吐物は使い捨て手袋などを用いて処理し、次亜塩素酸ナトリウムで消毒する:目安の濃度は、便や吐物が付着した場所で0.1%、ドアノブや食器などで0.02%程度です。
  • 哺乳瓶はよく洗ってから消毒する:煮沸、電子レンジのスチーム、次亜塩素酸ナトリウム系の薬液のいずれかを用います。
  • 症状が治まった後もしばらくは便中にウイルスが排出されるため、手洗いを続けます。

さらに、感染した場合に備えて脱水の徴候を具体的に伝えておきます。尿量の減少、口唇や舌の乾燥、泣いても涙が少ない、活気がない、大泉門の陥没などです。これらやけいれんがみられたら早めに受診するよう説明することが、実際の保健指導では重要です。

選択肢の確認

1.「感染予防には抗菌薬内服が有効です」:抗菌薬は細菌の細胞壁やたんぱく合成などを標的とする薬で、細胞構造をもたないウイルスには作用しません。ロタウイルスに対しては、予防にも治療にも効果がありません。不要な内服は腸内細菌叢を乱して下痢を招いたり、薬剤耐性菌を増やしたりする原因にもなります。細菌性腸炎の一部で抗菌薬が使われることと混同しないようにします。

2.「哺乳瓶をアルコールで消毒しましょう」:アルコールはエンベロープを壊してウイルスを不活化するため、エンベロープをもたないロタウイルスには効きにくく、予防策として不十分です。哺乳瓶は洗浄後に煮沸などの加熱消毒か次亜塩素酸ナトリウムによる薬液消毒を行い、便や吐物の処理にも次亜塩素酸ナトリウムを用います。アルコールが有効なのは、インフルエンザウイルスやコロナウイルスなどエンベロープをもつウイルスです。ノロウイルスもロタウイルスと同様にアルコールが効きにくい点が、よく問われます。

3.「通所時、Aちゃんはマスクをしましょう」:ロタウイルスの主な感染経路は糞口感染であり、予防の中心は手洗いと汚染物の適切な処理なので、マスクによる予防効果は期待できません。さらに、2歳未満の乳幼児へのマスク着用は推奨されていません。自分で外せないため、窒息や熱中症の危険があるからです。マスクは、飛沫で感染する疾患に対して年長児や大人が咳エチケットとして用いる対策です。

4.「ワクチンを接種していれば重症化しにくいです」:正答。ロタウイルスワクチンは感染を完全には防げないものの、脱水や入院を要する重症の胃腸炎を大きく減らします。接種済みでも感染はありうることを合わせて伝えたうえで、手洗いなどの予防策と、脱水徴候の観察・受診の目安を指導します。

覚えるポイント

  • ロタウイルスはエンベロープのないRNAウイルスで、糞口感染が中心です。生後6か月〜2歳ごろに多く、白色〜黄白色の水様便と脱水が特徴です。
  • エンベロープのないウイルス(ロタウイルス、ノロウイルスなど)はアルコールが効きにくいため、次亜塩素酸ナトリウム(便・吐物は0.1%、環境・物品は0.02%程度)や加熱で消毒します。
  • ロタウイルスワクチンは経口弱毒生ワクチンで、2020年10月から定期接種です。1価は2回、5価は3回接種し、初回は生後14週6日までが推奨です(腸重積症に注意)。効果の中心は「感染予防」ではなく重症化予防です。
  • 抗菌薬はウイルスに無効です。ロタウイルス胃腸炎の治療は、経口補水療法や輸液などの対症療法です。
  • 2歳未満の乳幼児にはマスクを着用させません(窒息・熱中症の危険)。
  • 家庭指導の柱は、手洗いの徹底と、脱水徴候(尿量減少、口腔乾燥、涙が出ない、活気低下、大泉門陥没)の観察・受診の目安を伝えることです。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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