第105回
105PM028|第105回 助産師国家試験 過去問
出生後に新生児への特異的ガンマグロブリン及びワクチンの投与による母子感染予防が実施される感染症の原因となる病原体はどれか。
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正解2
正答
2.B型肝炎ウイルス
この問題のポイント
出生後の新生児に「特異的ガンマグロブリン(受動免疫)」と「ワクチン(能動免疫)」を併用して母子感染を防ぐ感染症を問う問題です。選択肢の病原体のうち、特異的な免疫グロブリン製剤と予防ワクチンの両方が実用化されているのはB型肝炎ウイルス(HBV)だけです。それ以外の病原体では、妊娠中の母体治療、分娩方法や栄養方法の選択、抗ウイルス薬の予防投与、出生後の経過観察などで対応します。
解説
問題文の手がかり
正答を選ぶ手がかりは、「出生後に」「新生児への」「特異的ガンマグロブリン及びワクチン」という3つの条件です。特異的ガンマグロブリンとは、特定の病原体に対する抗体を高い濃度で含む製剤を指します。HBVでは抗HBs人免疫グロブリン(HBIG)がこれにあたります。
HBV母子感染の特徴
HBVの母子感染の多くは、分娩時に児が母体の血液や体液にさらされることで起こる産道感染(周産期感染)です。胎内で成立する感染は一部にとどまるため、出生直後に処置をすれば大部分を防げます。
新生児期や乳児期に感染すると、免疫が未熟なため持続感染(キャリア)になりやすく、将来の慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌の原因になります。特にHBe抗原陽性の母親は血中のウイルス量が多く、予防をしなければ児が高い確率でキャリアになります。HBe抗原が陰性でも、児が急性肝炎や劇症肝炎を起こすことがあります。そのため、HBs抗原陽性の母親から生まれた児はすべて予防の対象です。
予防の方法(出題当時の標準)
妊婦健診の妊娠初期検査でHBs抗原を調べ、陽性であれば出生した児に次の処置を行います。
- 出生直後(12時間以内を目安)に、HBIGとB型肝炎ワクチンを同時に投与する
- 生後1か月と6か月に、ワクチンを追加で接種する
- 生後9〜12か月ころにHBs抗原とHBs抗体を検査し、感染していないことと抗体が獲得されたことを確認する(抗体が不十分なら追加接種を検討する)
HBIGとワクチンは、次のように役割が異なります。
- HBIGは抗体を直接補う受動免疫です。投与直後から侵入したウイルスを中和しますが、効果は一時的です。
- ワクチンは児自身に抗体を作らせる能動免疫です。効果が出るまで時間がかかりますが、長く続きます。
両者を併用すると、「すぐ効く」と「長く効く」を組み合わせて、すき間なく児を守ることができます。この日程は2013年に現在の形に改められました。予防処置は健康保険で行われます。なお、2016年10月からB型肝炎ワクチンは乳児の定期接種になりました。ただし、HBs抗原陽性の母親から生まれた児は健康保険による母子感染予防として接種するため、定期接種の対象には含まれません。
予防処置を行っていれば、母乳栄養を制限する必要はありません。助産師の役割は次のとおりです。
- 分娩前に母体の検査結果を確認し、出生直後の投与が遅れないよう準備する
- 投与した時刻を正確に記録する
- 退院後の追加接種と検査が確実に受けられるよう、母親を支援する
選択肢の確認
1.クラミジア:Chlamydia trachomatisは細胞内に寄生する細菌で、分娩時の産道感染により新生児に封入体結膜炎や肺炎を起こします。予防の中心は、妊婦健診でのスクリーニングと、陽性の妊婦へのマクロライド系抗菌薬(アジスロマイシンなど)による治療、そしてパートナーの同時治療です。新生児が発症した場合もマクロライド系抗菌薬で治療し、特異的グロブリンやワクチンは用いません。「細菌なので抗菌薬で母体を治療する」と整理しておきましょう。
2.B型肝炎ウイルス:正答。HBs抗原陽性の母親から生まれた児に、出生後12時間以内を目安としてHBIG(特異的ガンマグロブリン)とB型肝炎ワクチンを投与します。その後、生後1か月と6か月のワクチン追加接種、生後9〜12か月の抗原・抗体検査へとつなげます。受動免疫と能動免疫の併用により、周産期感染によるキャリア化の大部分を防ぐことができます。
3.C型肝炎ウイルス:HCVにはワクチンも予防用の特異的免疫グロブリンもなく、出生後の予防処置は確立していません。母子感染の頻度は高くありませんが、母体の血中ウイルス量が多い場合やHIVとの重複感染がある場合に高くなります。児には母体からの移行抗体があるため、HCV抗体だけでは感染を判定できません。HCV-RNA検査などで経過を追います。母乳栄養は原則として制限しません。HBVと同じ肝炎ウイルスでも予防法がまったく異なる点がよく問われます。
4.サイトメガロウイルス:CMVは先天性感染の原因として最も頻度が高いウイルスです。主に胎盤を通じた胎内感染により、感音難聴、小頭症、脳室周囲石灰化、肝脾腫、発達の遅れなどを起こします。胎内で成立する感染が問題になるため、出生後の予防投与では防げません。実用化されたワクチンもありません。対策の中心は妊婦への感染予防の啓発で、乳幼児の唾液や尿に触れた後の手洗い、食器や食べ物を共有しないことなどを指導します。先天性感染の診断には生後3週以内の尿検査を用います。
5.ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉:感染予防では、次の方法を組み合わせます。妊娠中からの抗HIV薬による母体の治療、分娩時の抗HIV薬(ジドブジン)の点滴、日本で標準的に行われてきた陣痛発来前の選択的帝王切開、母乳を中止して人工乳で育てること、そして新生児への抗HIV薬の予防投与です。新生児に行うのは抗ウイルス薬の投与であり、特異的グロブリンやワクチンではない点が正答との違いです。
覚えるポイント
- HBV母子感染予防:HBs抗原陽性の母親の児に、出生後12時間以内を目安にHBIGとワクチンを投与します。生後1か月と6か月にワクチンを追加し、生後9〜12か月にHBs抗原・抗体を検査します。
- HBIGは受動免疫(すぐ効くが一時的)、ワクチンは能動免疫(効くまで時間がかかるが持続的)です。併用ですき間なく守ります。
- HCVとCMVにはワクチンがなく、出生後の予防法は確立していません。CMVは先天性感染で最も多く、妊婦への手洗い指導が対策の柱です。
- HIVは、母体への抗HIV薬、選択的帝王切開、人工乳、新生児への抗HIV薬の組合せで予防します。HTLV-1は主な感染経路が母乳のため、人工栄養を基本とした栄養方法の選択で対策します。
- クラミジアは細菌です。妊娠中のスクリーニングと、マクロライド系抗菌薬による母体の治療で対応します。
- HBVキャリアの母親でも、予防処置を行えば母乳栄養は可能です。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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