第106回
106PM054|第106回 助産師国家試験 過去問
次の文を読み53、54の問いに答えよ。Aさん(28歳、1回経産婦)は無月経に気付き受診し、妊娠8週と診断された。視診で会陰部や腟内に乳頭状の疣贅を認めた。腟鏡診では子宮頸部に病変は認めない。Aさんは「3か月ほど前から外陰部が痒くなりました」と話している。その後、Aさんの疣贅は消失し、妊娠経過に異常はなかった。妊娠35週で児の推定体重は2,360 gであった。妊娠36週3日、1時から陣痛発来し2時に入院した。子宮口6 cm開大、展退度80%、Station -1で児頭が先進している。胎児心拍数陣痛図はreassuring fetal statusであった。助産師は問診と診療録から、第1子がB群溶血性連鎖球菌〈GBS〉感染症であったこと、妊娠35週時のB群溶血性連鎖球菌〈GBS〉感染症検査は実施していないことを確認した。このときのAさんに適用されるのはどれか。
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正解4
正答
4.ペニシリン系抗菌薬の点滴静脈内注射
この問題のポイント
B群溶血性連鎖球菌(GBS)による新生児の早発型感染症を防ぐため、分娩時に抗菌薬を予防投与する適応を問う問題です。手がかりは「第1子がGBS感染症であった」「妊娠36週3日で陣痛発来(37週未満の分娩)」「妊娠35週のGBS検査は未実施」の3点です。前児のGBS感染症は、今回の検査結果にかかわらずそれだけで投与の適応になります。さらに、保菌状態が不明のまま37週未満で分娩に至っていることも適応に当たります。
解説
GBSと新生児感染症
GBSは腸管や腟に常在する菌で、妊婦のおおよそ1〜3割が症状なく保菌しています。母体にはほとんど害がありませんが、分娩時に産道で児に垂直感染すると、新生児に重い感染症を起こすことがあります。
- 早発型:生後7日未満(多くは生後24時間以内)に発症し、敗血症・肺炎・髄膜炎を起こします。呼吸障害で始まり急速に悪化することがあります。主な原因は分娩時の垂直感染なので、分娩時の抗菌薬投与で予防できます。
- 遅発型:生後7日以降〜生後3か月頃に発症し、髄膜炎が多くみられます。分娩時の抗菌薬投与では予防できません。
スクリーニングと予防投与の適応
出題当時の産婦人科診療ガイドライン産科編2020では、妊娠35〜37週に腟入口部と肛門内から検体を採取してGBS培養を行うとしています。次のいずれかに当てはまる場合は、陣痛発来時または破水時からペニシリン系抗菌薬を点滴静注します。
- 前児がGBS感染症であった
- 今回の妊娠中の培養でGBSが陽性
- 今回の妊娠中に尿からGBSが検出された(GBS菌尿)
- GBS保菌状態が不明で、妊娠37週未満の分娩、破水後18時間以上の経過、38.0℃以上の発熱のいずれかがある
前児がGBS感染症だった女性は、児へ感染させるリスクが高いと考えられます。そのため、今回の培養結果にかかわらず予防投与の対象です。保菌状態が不明な場合に早産が適応に含まれるのは、早産児は免疫が未熟で、早発型感染症を発症しやすく重症化しやすいためです。
Aさんへの当てはめ
Aさんは1回経産婦で、第1子がGBS感染症でした。これだけで予防投与の適応が確定します。加えて妊娠35週の検査は行われておらず保菌状態は不明で、妊娠36週3日の陣痛発来は37週未満の分娩に当たります。つまり、2つの根拠が重なっています。破水や発熱の記載はありませんが、判断は変わりません。
投与の実際と助産師の役割
薬剤はペニシリンGかアンピシリンを用います。アンピシリンであれば初回2g、以後4時間ごとに1gを児の娩出まで点滴静注します。十分な予防効果を得るには、娩出の4時間以上前に投与を始めることが望ましいとされます。
Aさんは経産婦で、入院時すでに子宮口6cm開大です。分娩が速く進む可能性が高いため、助産師は入院時に既往を確認したら直ちに医師へ報告し、指示のもとで速やかに投与を開始します。ただし、投与時間を確保するために分娩を遅らせることはしません。
ペニシリンにアレルギーがある場合は、アナフィラキシーのリスクが低ければセファゾリンを使います。リスクが高ければ、感受性を確認してクリンダマイシンなどを選びます。
出生後は、呼吸状態、体温、哺乳、活気を注意深く観察し、感染徴候を早期に発見します。本事例は妊娠36週の早産で、35週の推定体重から低出生体重児となる可能性もあるため、観察はより重要です。
事例前半の情報について
会陰部・腟内の乳頭状の疣贅は、HPV(主に6型・11型)による尖圭コンジローマを示唆する所見で、同じ事例文の別の設問に関わる情報です。妊娠中は増大しやすく、産道を塞ぐほど大きい場合などには帝王切開が検討されます。Aさんの疣贅は消失しているので、本問の判断には影響しません。
選択肢の確認
1.帝王切開分娩:GBSの保菌や前児のGBS感染症の既往は帝王切開の適応ではなく、経腟分娩のまま分娩時の抗菌薬投与で早発型感染症を予防するのが標準です。Aさんは児頭が先進し、子宮口6cmまで順調に進んでいます。胎児心拍数陣痛図もreassuring fetal statusで、産科的な帝王切開の適応はありません。尖圭コンジローマも消失しているため、産道閉塞を理由とした帝王切開の検討も不要です。「感染予防=帝王切開」と短絡的に結びつけないようにします。
2.尿の細菌培養検査:妊娠中の尿からGBSが検出されることは予防投与の適応の一つですが、尿培養は妊娠中に無症候性細菌尿などを見つけるために行う検査です。培養結果が出るまでに通常数日かかるため、分娩が進行している今の判断には間に合いません。また、Aさんは前児の既往で適応がすでに確定しており、尿培養の結果によって方針は変わりません。「GBS菌尿も適応になる」という知識から、この選択肢を選ばないよう注意します。
3.陣痛促進薬の点滴静脈内注射:陣痛促進薬(オキシトシンなど)は、微弱陣痛で分娩が遷延する場合や、陣痛が来ないときの分娩誘発などに用いる薬です。Aさんは陣痛発来から1時間で子宮口6cmに達しており、陣痛は有効で分娩経過は順調です。胎児の状態も良好なので、使用する理由がありません。GBSは分娩を早める理由にはならず、促進すれば抗菌薬の投与開始から娩出までの時間がかえって短くなります。早産期でもあり、不要な医学的介入は避けます。
4.ペニシリン系抗菌薬の点滴静脈内注射:正答。前児がGBS感染症であったことは、今回の検査結果にかかわらず分娩時の予防投与の適応です。さらに、保菌状態不明のまま37週未満で分娩に至っていることも適応に当たります。陣痛発来後の今、医師の指示のもとで速やかに投与を開始し、児の娩出まで継続します。
覚えるポイント
- 分娩時の抗菌薬予防投与の適応は「前児がGBS感染症」「今回の培養で陽性」「今回の妊娠中のGBS菌尿」「保菌不明+37週未満の分娩・破水後18時間以上・38.0℃以上の発熱のいずれか」です。
- 前児のGBS感染症とGBS菌尿は、今回の培養結果にかかわらず投与の対象になります。
- スクリーニングは妊娠35〜37週に腟入口部と肛門内から採取します(出題当時の産婦人科診療ガイドライン産科編2020)。
- 薬剤はペニシリン系(アンピシリン初回2g→4時間ごとに1g)で、陣痛発来時または破水時から娩出まで投与し、娩出の4時間以上前の開始が望ましいです。ペニシリンアレルギーではセファゾリンなどを選びます。
- 早発型(生後7日未満、敗血症・肺炎・髄膜炎)は分娩時の予防投与で防げますが、遅発型(生後7日以降〜3か月頃、髄膜炎が多い)は防げません。
- GBSは帝王切開の適応になりません。尖圭コンジローマ(HPV6型・11型)で帝王切開を考えるのは、病変が産道を塞ぐほど大きい場合などです。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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