第106回

106PM053|第106回 助産師国家試験 過去問

次の文を読み53、54の問いに答えよ。Aさん(28歳、1回経産婦)は無月経に気付き受診し、妊娠8週と診断された。視診で会陰部や腟内に乳頭状の疣贅を認めた。腟鏡診では子宮頸部に病変は認めない。Aさんは「3か月ほど前から外陰部が痒くなりました」と話している。Aさんへの説明で適切なのはどれか。

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正解2

正答

2.「いぼを外科的に除去する治療を行います」

この問題のポイント

外陰部と腟内の「乳頭状の疣贅」という視診所見から尖圭コンジローマと判断し、原因ウイルス、妊娠中に選べる治療、胎児・新生児への影響を正しく説明できるかを問う問題です。妊娠中は塗り薬ではなく、病変を物理的に取り除く治療が選ばれる点が正答の決め手です。性器ヘルペスやカンジダ症など、他の性器感染症との区別も問われています。

解説

問題文の手がかり

  • 妊娠8週の1回経産婦です。妊娠初期で、分娩まで長い期間があります。
  • 会陰部と腟内に乳頭状の疣贅があります。乳頭状、鶏冠状、カリフラワー状と表現される「いぼ」は、尖圭コンジローマに典型的な形です。
  • 腟鏡診で子宮頸部に病変はありません。病変は外陰部と腟にとどまっています。
  • 3か月ほど前から外陰部に痒みがあります。尖圭コンジローマは自覚症状がないことも多いですが、痒みや違和感を訴えることがあります。潜伏期間は数週から数か月とされ、経過とも矛盾しません。

尖圭コンジローマとは

ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染で起こる性感染症です。原因の大部分は低リスク型の6型・11型です。外陰部、腟、子宮頸部、肛門周囲、尿道口などに多発する疣贅をつくります。子宮頸がんの原因になるのは16型・18型などの高リスク型で、尖圭コンジローマの型とは区別して覚えます。4価・9価のHPVワクチンは6型・11型を含むため、尖圭コンジローマの予防にも役立ちます。

妊娠中の特徴と治療

妊娠中は免疫状態の変化や外陰部の血流増加によって、病変が増大・多発しやすくなります。分娩時に病変が大きく残っていると、次のような問題が起こります。

  • 産道の伸展が妨げられる
  • 裂傷や出血が起こりやすい
  • 児がウイルスにさらされる

そのため、妊娠中に病変を治療し、分娩までに消失または縮小させることを目指します。

非妊娠時は、イミキモド5%クリームの外用が治療選択肢の一つです。ただし妊娠中の安全性が確立していないため、妊婦には原則として用いません。妊娠中は次のような物理的療法が選ばれます。

  • 外科的切除
  • 液体窒素による凍結療法
  • 電気焼灼
  • レーザー蒸散

設問の「外科的に除去する治療」は、これらの物理的除去を指す説明として適切です。

治療後も再発しやすいため、妊娠経過の中で繰り返し観察します。HPVの母子感染を防ぐことだけを目的とした帝王切開は、原則として行いません。帝王切開でも児の感染を完全には防げないためです。一方、病変が産道をふさぐほど大きい場合や、経腟分娩で大量出血が予想される場合には、帝王切開を検討します。

児への影響

産道でHPVに感染すると、まれに若年性再発性呼吸器乳頭腫症(喉頭乳頭腫)を発症します。喉頭などに乳頭腫ができる病気で、嗄声、喘鳴、呼吸困難をきたし、切除しても再発を繰り返すことがあります。

助産師としての関わり

パートナーにも説明し、疣贅の診察や他の性感染症の検査につなげます。HPV感染そのものを排除する治療はなく、病変のないパートナーに一律に治療を行うわけではありません。疣贅や他の性感染症が見つかった場合に、診断に応じた治療を行います。梅毒、HIV、クラミジアなど他の性感染症の有無も確認します。コンドームはHPV感染のリスクを下げますが、覆われない皮膚からも感染しうるため、完全には防げません。妊娠初期に性感染症を告げられた女性は、不安や罪悪感、パートナーへの不信を抱きやすいものです。正確な情報を伝えながら、心理面にも配慮します。

選択肢の確認

1.「流産になるリスクが高まります」:尖圭コンジローマそのものが流産の危険を高めるという関連は確立していません。妊娠初期の流産の多くは、胎児側の染色体異常が原因です。流早産との関連がよく問われる感染症は、細菌性腟症や絨毛膜羊膜炎などです。妊娠8週の妊婦に根拠のないリスクを伝えると、不安を不必要に強めてしまいます。

2.「いぼを外科的に除去する治療を行います」:正答。妊娠中は病変が増大しやすく、分娩時に病変が残ると産道の閉塞、出血、児への感染が問題になります。外用薬のイミキモドは妊娠中の安全性が確立していません。そのため、切除、凍結療法、電気焼灼、レーザー蒸散といった物理的療法で病変を取り除きます。

3.「赤ちゃんが鵞口瘡になる可能性があります」:鵞口瘡はカンジダ・アルビカンスによる口腔内の白色の偽膜で、母体の外陰腟カンジダ症からの産道感染で起こります。外陰腟カンジダ症は、強い掻痒と白色の酒粕状(カッテージチーズ様)の帯下が特徴です。問題文の「痒み」からカンジダ症を連想しやすい選択肢ですが、本問の所見は乳頭状の疣贅です。尖圭コンジローマで児に問題となるのは、若年性再発性呼吸器乳頭腫症です。

4.「いぼはヘルペスウイルスの感染が原因です」:尖圭コンジローマの原因は、ヒトパピローマウイルスの6型・11型です。単純ヘルペスウイルスが起こす性器ヘルペスは、外陰部の小水疱や浅い潰瘍と強い疼痛が特徴で、疣贅はつくりません。性器ヘルペスでは、分娩時に病変があれば新生児ヘルペスを防ぐため帝王切開が勧められます。尖圭コンジローマとは分娩方針の考え方が異なる点も区別しておきましょう。

覚えるポイント

  • 尖圭コンジローマは、HPV低リスク型(6型・11型)による乳頭状・鶏冠状の疣贅です。子宮頸がんは16型・18型などの高リスク型が原因です。
  • 妊娠中は病変が増大しやすくなります。治療は切除・凍結・電気焼灼・レーザーなどの物理的療法で、イミキモド外用は原則として用いません。
  • 児への影響は、まれな若年性再発性呼吸器乳頭腫症(嗄声、呼吸困難)です。感染予防だけを目的とした帝王切開は行わず、産道閉塞や大量出血のおそれがあるときに検討します。
  • 外陰部病変の見分け方は次のとおりです。水疱・潰瘍と強い痛みなら性器ヘルペス(HSV)です。白色帯下と強い痒みなら外陰腟カンジダ症で、児の鵞口瘡の原因になります。扁平で湿った丘疹なら梅毒2期の扁平コンジローマです。
  • パートナーには疣贅の診察と他の性感染症の検査を勧め、治療は診断に応じて行います。病変のないHPV感染に一律の治療は行いません。本人への心理的配慮も大切です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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