第106回
106AM005|第106回 助産師国家試験 過去問
妊娠期の梅毒の感染で正しいのはどれか。
解答・解説を見る
正解1
正答
1.梅毒トレポネーマは胎盤を介して胎児に感染する。
この問題のポイント
妊娠中の梅毒について、母子感染の経路、治療薬、治療を始める時期、妊婦健診でのスクリーニングの意義を問う問題です。押さえるべき点は次の4つです。
- 梅毒は経胎盤感染で先天梅毒を起こす。
- 治療はペニシリン系で行う。
- 診断したら妊娠週数にかかわらず直ちに治療する。
- 既往があっても妊娠のたびに検査する。
解説
感染経路と先天梅毒
梅毒の病原体は梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)というらせん菌で、主に性的接触で感染します。妊婦が感染していると、母体血中の菌が胎盤を通過して胎児に感染し(経胎盤感染)、先天梅毒を起こします。胎児への感染は妊娠のどの時期にも起こり得ます。母体の梅毒が早期(第1期・第2期)であるほど菌血症が強く、胎児に感染しやすくなります。
胎内で感染すると、流産、死産、早産、胎児発育不全、胎児水腫などが起こります。出生後の先天梅毒は、早期と晩期に分けて整理します。
- 早期先天梅毒(おおむね2歳まで):肝脾腫、黄疸、手掌・足底の水疱や落屑を伴う皮疹、梅毒性鼻炎(鼻閉)、骨軟骨炎による四肢の運動減少(パロー仮性麻痺)
- 晩期先天梅毒(学童期以降):ハッチンソン三徴(ハッチンソン歯、実質性角膜炎、内耳性難聴)、鞍鼻、サーベル脛
母子感染の経路は、次のように対比して覚えると混同しにくくなります。
- 主に経胎盤:梅毒、風疹、サイトメガロウイルス、トキソプラズマ
- 主に産道:B群溶血性レンサ球菌(GBS)、クラミジア、淋菌、単純ヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルス
- 母乳:HTLV-1
治療
第一選択はペニシリン系抗菌薬です。ペニシリンは母体の治療と同時に、胎盤を通じて胎児の感染も治療できます。国内ではこれまで経口アモキシシリンが用いられてきました。持続型のベンジルペニシリンベンザチン筋注製剤も、出題当時には国内で使用できるようになっていました。ペニシリンアレルギーがある妊婦について、海外のガイドラインは脱感作を行ったうえでペニシリンを使うことを推奨しています。
治療を始めると、数時間から24時間以内に発熱、悪寒、発疹の増悪などが起こることがあります。これをヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応といい、菌体が壊れて起こる反応です。妊婦ではこの反応が子宮収縮、早産、胎児機能不全のきっかけになり得ます。そのため治療開始時には、母体のバイタルサインに加え、子宮収縮と胎児心拍を観察します。
スクリーニングと助産師の役割
妊婦健康診査では、国の「妊婦に対する健康診査についての望ましい基準」に基づき、妊娠初期に梅毒血清反応検査を行います。検査は2種類を組み合わせて判断します。
- 非トレポネーマ検査(RPR法など):病勢の指標になります。治療で抗体価が下がり、再感染で上昇します。妊娠、膠原病、抗リン脂質抗体症候群などで生物学的偽陽性を示すことがあります。
- トレポネーマ検査(TPHA法、TP抗体など):感染したことを確かめる検査です。治療後も長く陽性が続きます。
RPR陰性・TP陽性であれば、治療済みの既往の可能性が高いと考えます。
梅毒は、感染しても再感染を防ぐ免疫ができません。感染症法では5類感染症(全数把握)で、診断した医師は7日以内に届け出ます。感染症発生動向調査では報告数が近年急増しており、2022年には年間1万人を超えました。20代女性の増加と先天梅毒の報告増加が問題になっています。
助産師は次のような支援を担います。
- 陽性の妊婦に対し、パートナーの検査と治療を勧める(ピンポン感染の防止)。
- コンドームの使用について指導する。
- 治療後の抗体価の推移を継続して確認する。
- 出生児の評価につなぐ。母体のTP抗体(IgG)は胎盤を通過するため、新生児のTP抗体が陽性というだけでは感染と判断できません。
選択肢の確認
1.梅毒トレポネーマは胎盤を介して胎児に感染する。:正答。梅毒トレポネーマは胎盤を通過して胎児に感染し、流産・死産や先天梅毒の原因になります。GBSやクラミジアのような産道感染が主体の病原体と区別して覚えます。
2.治療の第一選択はテトラサイクリン系抗菌薬である。:第一選択はペニシリン系抗菌薬で、テトラサイクリン系は妊娠中には原則として使用しません。テトラサイクリン系は胎児の歯の着色やエナメル質形成不全、骨の発育障害を起こすおそれがあるためです。非妊娠時のペニシリンアレルギー患者ではドキシサイクリンやミノサイクリンが代替薬になるため、その知識と取り違えやすい点に注意します。クラミジアも、非妊娠時はテトラサイクリン系、妊娠中はマクロライド系(アジスロマイシン)と使い分けます。
3.梅毒陽性の妊婦への治療開始は妊娠後期が効果的である。:治療が遅れるほど胎児への感染と障害が進むため、診断したら妊娠週数にかかわらず直ちに治療を始めます。早期に治療すれば先天梅毒の多くを予防できます。「妊娠初期は薬を避ける」という一般論から誤りやすい選択肢ですが、ペニシリンは妊娠中も安全に使える薬です。分娩直前に治療した場合は胎児の治療が不十分なことがあり、出生児の精査が必要になります。
4.妊娠前に感染の既往がある場合、妊娠初期のスクリーニング検査は不要である。:梅毒は治癒しても免疫が残らず再感染し得るため、既往があっても妊娠のたびに初期の検査が必要です。既往者ではTP抗体が陽性のまま続くので、RPR法の抗体価を過去の値と比べます。これにより再感染や治療が不十分でないかを判断し、感染の既往と現在の活動性を区別します。
覚えるポイント
- 梅毒は経胎盤感染で先天梅毒を起こします。母体の梅毒が早期(第1期・第2期)であるほど胎児に感染しやすくなります。
- 早期先天梅毒は肝脾腫・皮疹・鼻閉・骨軟骨炎、晩期先天梅毒はハッチンソン三徴(ハッチンソン歯・実質性角膜炎・内耳性難聴)が代表的な症状です。
- 治療の第一選択はペニシリン系です。テトラサイクリン系は妊娠中に使わず、治療開始後はヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応による子宮収縮に注意します。
- 診断したら妊娠週数を問わず直ちに治療し、パートナーも検査・治療します。
- 妊娠初期の梅毒血清反応検査は、既往の有無にかかわらず全妊婦に行います。RPR法は病勢と再感染の指標、TP抗体は治療後も陽性が続く点を区別します。
- 梅毒は感染症法の5類全数把握で、診断後7日以内に届け出ます。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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