第106回
106AM006|第106回 助産師国家試験 過去問
出生前診断について適切なのはどれか。
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正解4
正答
4.胎児の異常や疾患を調べる。
この問題のポイント
出生前診断とは何か、どんな検査が含まれるか、何のために行うかを問う問題です。あわせて、人工妊娠中絶について母体保護法が何を定めているかも問われています。判断の鍵は次の3点です。出生前診断は「妊娠中に胎児の状態(形態・染色体・遺伝子の異常や疾患)を調べる検査と診断」であること、羊水検査などの侵襲的検査も含むこと、母体保護法には胎児の異常を理由に中絶を認める規定(胎児条項)がないことです。
解説
出生前診断は、妊娠中に胎児の発育や形態、染色体・遺伝子の状態を調べ、異常や疾患の有無を評価する検査と診断の総称です。広い意味では、妊婦健康診査の超音波検査で胎児の形態異常が見つかる場合も含まれます。狭い意味では、染色体疾患などを調べる遺伝学的検査を指すことが多い言葉です。なお、妊娠が成立する前の胚を調べる着床前遺伝学的検査(PGT)は、出生前診断とは区別されます。
検査は、確定診断ができるかどうかで2つに分けて整理します。
- 非確定的検査:超音波検査(胎児後頸部浮腫〈NT〉の計測など)、母体血清マーカー検査、コンバインド検査、母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)です。母体の採血や超音波で行うため、胎児への直接の侵襲はありません。ただし結果は「可能性」の評価にとどまり、陽性でも診断は確定しません。NIPTは主に13・18・21トリソミーを対象とし、妊娠10週以降に行われます。
- 確定的検査:絨毛検査(妊娠11〜14週頃)と羊水検査(妊娠15週以降)です。子宮内に針を刺して胎児由来の細胞を採取し、染色体などを直接調べます。診断を確定できる一方で、流産・感染・破水などのリスクをわずかに伴う侵襲的検査です。
出生前診断で得た情報は、次のように使われます。
- 胎児治療や、出生直後に治療が必要な疾患への備え(分娩施設の選択、NICUや小児外科との連携)
- 分娩時期・分娩方法の計画
- 両親が児の疾患を理解し、心の準備や養育環境を整えること
- 妊娠を継続するかどうかについての両親の意思決定
つまり出生前診断は「胎児の状態を知るための手段」であり、検査そのものが児を健康にするわけではありません。検査で分かる疾患は限られています。出生児の3〜5%には何らかの先天異常がみられるとされ、検査で異常が見つからなくても児の健康が保証されるわけではありません。
母体保護法は、医師の認定による人工妊娠中絶を次の2つの場合に認めています。
- 妊娠の継続または分娩が、身体的または経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのある場合
- 暴行・脅迫などによって妊娠した場合
中絶を行えるのは都道府県医師会が指定する医師(指定医師)で、原則として本人と配偶者の同意が必要です。時期は、胎児が母体外で生命を保てない時期、すなわち妊娠22週未満とされています。この法律は1996年に優生保護法から改められ、そのときに優生思想に基づく規定が削除されました。胎児の異常を理由とする中絶の規定は、現在も置かれていません。
出生前診断は、障害のある人の生命の選別につながりうるという倫理的な問題を含みます。検査を受けるかどうか、結果をどう受け止めるかは、妊婦とパートナーの自己決定に委ねられます。そのため、検査の前後には遺伝カウンセリングが欠かせません。
助産師には、次のような役割が求められます。
- 検査で分かること・分からないこと、偽陽性の可能性、確定検査の必要性、検査を受けない選択肢もあることを中立的に伝える
- 意思決定を急がせずに支える
- 結果を受け取った後の心理的支援を行う
- 臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーにつなぐ
以上から、出生前診断の内容を正しく表している記述は「胎児の異常や疾患を調べる」です。
選択肢の確認
1.出生前診断の結果を理由とした人工妊娠中絶については母体保護法に規定されている。:母体保護法が中絶を認める要件は、母体の健康を著しく害するおそれがある場合と、暴行・脅迫などによる妊娠の場合に限られています。胎児の異常や疾患を理由とする規定はありません。胎児条項を設けるかどうかは過去に議論されましたが、採用されていません。「母体」保護法という名前のとおり、要件は母体側の理由だと押さえると混同を防げます。なお実際には、胎児の疾患が分かった後の中絶も「母体の健康を著しく害するおそれ」という要件を当てはめて行われていると指摘されており、倫理的な論点の一つになっています。
2.胎児に侵襲のある検査は対象にならない。:絨毛検査と羊水検査は、子宮に針を刺して胎児由来の細胞を採取する侵襲的な検査です。それでも、染色体異常などを確定診断できる代表的な出生前診断に含まれます。多くは、非確定的検査で陽性となった後に確定のために行われます。胎児への侵襲がないのはNIPTや母体血清マーカー検査など一部の検査の特徴であり、出生前診断全体の条件ではありません。
3.健康な児を出産するために行われる。:出生前診断は胎児の状態について情報を得るための検査であり、検査によって児が健康になるわけではありません。「健康な児を産むため」という位置づけは、異常のある胎児を選別して排除することを目的とするかのような優生思想的な考え方につながります。正しくは、出生後の治療や養育の準備、分娩計画、両親の意思決定のために情報を得ることが目的です。異常が見つからなくても、すべての先天異常を否定できるわけではない点にも注意が必要です。
4.胎児の異常や疾患を調べる。:正答。妊娠中に、胎児の形態や発育、染色体・遺伝子の異常、疾患の有無を調べることが出生前診断の本質です。
覚えるポイント
- 出生前診断は、妊娠中に胎児の異常・疾患を調べる検査と診断です。目的は情報を得て、出生後の医療・養育や両親の意思決定に備えることです。
- 非確定的検査には、超音波検査、母体血清マーカー検査、コンバインド検査、NIPT(妊娠10週以降、13・18・21トリソミー)があります。陽性でも確定には確定的検査が必要です。
- 確定的検査(侵襲的)には、絨毛検査(妊娠11〜14週頃)と羊水検査(妊娠15週以降)があり、流産などのリスクを伴います。
- 母体保護法の中絶要件は「身体的・経済的理由で母体の健康を著しく害するおそれ」と「暴行・脅迫などによる妊娠」の2つで、胎児条項はありません。中絶は妊娠22週未満で、指定医師が行い、原則として本人と配偶者の同意が必要です。
- 検査の前後には遺伝カウンセリングを行い、妊婦とパートナーの自己決定を中立的に支えることが助産師の役割です。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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