第105回
105AM005|第105回 助産師国家試験 過去問
Aさん(28歳、1回経産婦)は現在、妊娠18週である。第1子は分娩後に先天性心疾患と診断され緊急手術を受けた。Aさんは「今回も上の子と同じ病気が起こるのでないか」と心配し、出生前診断を希望している。第1子は心臓以外に異常の指摘はない。Aさんの心配の解消に最も寄与する出生前診断の方法はどれか。
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正解3
正答
3.胎児超音波検査
この問題のポイント
Aさんが心配しているのは「第1子と同じ先天性心疾患が再び起こるのではないか」という点で、知りたいのは胎児の心臓の形です。第1子に心臓以外の異常が指摘されていないことだけでは、染色体・遺伝子の異常を否定できません。ただし、本問で直接確認したいのは今回の胎児の心臓に構造異常があるかどうかなので、心臓を観察できる胎児超音波検査を選びます。妊娠18週という時期を各検査の実施時期と照らし合わせることも判断材料になります。
解説
問題文の手がかり
- 「1回経産婦、第1子が分娩後に先天性心疾患と診断され緊急手術」:前児に先天性心疾患があり、今回の児での再発を心配しています。
- 「第1子は心臓以外に異常の指摘はない」:他の奇形や外表の特徴を伴う症候群を示す情報はありませんが、それだけで遺伝学的な原因を除外したり、原因を多因子遺伝と確定したりはできません。前児の詳しい診断や家族歴も確認します。
- 「現在、妊娠18週」:検査の実施時期を考える手がかりになります。
- 「心配の解消に最も寄与する」:Aさんが知りたい内容に直接答えられる検査はどれかが問われています。
先天性心疾患の再発と原因
先天性心疾患は出生児のおよそ1%にみられる、頻度の高い先天異常です。21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、22q11.2欠失症候群などの染色体異常に伴うものもあります。ただし多くは心臓以外に異常を伴わない孤発例で、遺伝的素因と環境要因が関わる多因子遺伝と考えられています。
多因子遺伝の疾患では、きょうだいなど第1度近親者の再発率は一般集団より高くなります。しかし、メンデル遺伝のような高い確率にはならず、数%程度とされます。Aさんの心配には一定の根拠がありますが、多くの場合は再発しません。
大切なのは、孤発性の先天性心疾患は染色体検査では有無を判定できないという点です。胎児の染色体が正常でも心臓の形態異常は起こりうるため、Aさんの不安に答えるには心臓の構造そのものを見る必要があります。
胎児超音波検査でわかること
心臓を詳しく観察する胎児心臓超音波検査(胎児心エコー)では、次のような断面を確認します。
- 四腔断面:左右の心房・心室の大きさと弁の位置
- 左右の心室流出路
- 三血管断面:肺動脈・大動脈・上大静脈の並びと太さ
これにより、心室中隔欠損、房室中隔欠損、ファロー四徴症、大血管転位、左心低形成症候群などの構造異常を評価できます。心臓が大きくなって観察しやすくなる妊娠中期、特に20週前後が詳しい評価に適した時期とされ、妊娠18週のAさんにとって適切な時期です。母児への侵襲がなく、流産のリスクもありません。
異常が見つかれば、小児循環器科や心臓血管外科のある施設での分娩を計画し、出生直後から治療を始める準備ができます。大血管転位や左心低形成症候群のように動脈管の開存に依存して循環を保つ疾患では、出生後に動脈管が閉じると状態が急激に悪化します。出生前に診断されていれば、プロスタグランジン製剤の投与など早期の対応が可能です。第1子が出生後に緊急手術となった経験をもつAさんにとって、出生前に心臓の状態がわかることは大きな意味をもちます。
検査の限界と助産師のかかわり
卵円孔と動脈管は胎児期には開いているのが正常です。そのため、心房中隔欠損(二次孔型)や動脈管開存症は出生前には診断できません。小さな心室中隔欠損や大動脈縮窄も見落とされることがあります。「異常が見えない=絶対に異常がない」ではないことを伝え、過度な安心や不安を招かないよう説明します。
検査を受けるかどうかは本人の意思で決めるものです。助産師は、何がわかり何がわからないかを整理して伝え、必要に応じて遺伝カウンセリングにつなぎます。結果を待つ間や結果が出た後の心理的支援も大切な役割です。
選択肢の確認
1.絨毛検査:胎盤の絨毛組織を経腹または経腟(経頸管)で採取し、胎児の染色体や遺伝子を調べる確定的検査です。妊娠初期(おおむね11〜14週ごろ)に行う検査で、妊娠18週のAさんはすでに通常の実施時期を過ぎています。また、わかるのは染色体の数や構造の異常、特定の遺伝子変化であり、心臓の形態は評価できません。心臓以外に異常のない先天性心疾患は染色体が正常でも起こりうるため、Aさんの心配には直接答えられません。流産などのリスクを伴う侵襲的検査でもあり、前児に染色体異常が確定している場合など、早い時期に確定診断を得たい状況で検討される検査です。
2.羊水検査:経腹的に子宮内を穿刺して羊水を採取し、羊水中の胎児由来細胞で染色体などを調べる確定的検査です。妊娠15〜16週以降に行うため、妊娠18週でも時期としては実施可能です。しかし明らかになるのは染色体の情報で、心臓の構造異常の有無はわかりません。染色体が正常と判明しても孤発性の先天性心疾患は否定できず、Aさんの不安の解消には結びつきません。穿刺に伴う流産・破水・感染のリスクもあります。前児の心疾患が21トリソミーや22q11.2欠失症候群などに伴うと判明している場合には、選択肢3と組み合わせて検討されます。「心疾患だから羊水検査」と短絡しないことが大切です。
3.胎児超音波検査:正答。心臓の四腔断面、流出路、大血管の位置関係を直接観察し、先天性心疾患の有無と種類を評価できる唯一の選択肢です。非侵襲的で母児へのリスクがなく、妊娠18週は詳細な心臓の観察に適した時期に当たります。正常であれば不安の軽減につながり、異常があれば分娩施設の選定や出生直後の治療準備に役立ちます。ただし、小さな欠損など出生前には診断できない疾患もあることを併せて説明します。
4.母体血清マーカー検査:母体血中のAFP、hCG、非抱合型エストリオール(uE3)、インヒビンAなどを測定し、母体年齢などと組み合わせて確率を示す非確定的検査(スクリーニング)です。対象は21トリソミー、18トリソミー、開放性神経管欠損症です。妊娠中期(15週以降)に行うため時期としては実施可能ですが、先天性心疾患は対象外で、結果が「低確率」でも心疾患の有無は何もわかりません。確率で示される結果はかえって不安を強めることもあり、Aさんの心配の解消には寄与しません。AFPが開放性神経管欠損症や腹壁の欠損で高値になることも併せて覚えておきましょう。
覚えるポイント
- 出生前検査は「何を知りたいか」で選びます。心臓の構造などの形態は超音波、染色体・遺伝子は絨毛検査・羊水検査です。
- 確定的検査は絨毛検査(妊娠11〜14週ごろ)と羊水検査(15〜16週以降)で、侵襲的で流産リスクがあります。非確定的検査は母体血清マーカー検査(妊娠中期)、NIPT(10週以降)、NT計測などです。
- 母体血清マーカー検査(クアトロテスト)の対象は21トリソミー・18トリソミー・開放性神経管欠損症で、結果は確率で示されます。心疾患は対象外です。
- 先天性心疾患は出生児の約1%にみられます。多くは多因子遺伝で、きょうだいの再発率は一般より高いものの数%程度で、染色体が正常でも起こりえます。
- 胎児心エコーは妊娠20週前後が適期です。卵円孔・動脈管は胎児期に開いているのが正常なため、心房中隔欠損(二次孔型)と動脈管開存症は出生前に診断できません。
- 動脈管依存性の心疾患(大血管転位、左心低形成症候群など)は、出生前診断があれば計画分娩と出生直後のプロスタグランジン製剤投与につなげられます。
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