第105回

105AM004|第105回 助産師国家試験 過去問

妊娠中の梅毒スクリーニング検査の説明で正しいのはどれか。

解答・解説を見る

正解4

正答

4.非特異的検査と抗原特異的検査を組み合わせて行う。

この問題のポイント

妊婦健康診査で行う梅毒スクリーニングについて、実施時期、検体、検査法、届出の4点を問う問題です。梅毒の血清学的検査には2種類あります。1つはカルジオリピンを抗原とする非特異的検査(STS)、もう1つは梅毒トレポネーマ由来の抗原を用いる特異的検査(TP抗原法)です。両者を組み合わせて判定することが解答の鍵です。あわせて「妊娠初期に採血で行う」「五類全数把握で7日以内に保健所へ届け出る」という規定も正確に押さえておく必要があります。

解説

妊娠中に梅毒検査を行う理由

梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)は胎盤を通過し、妊娠のどの時期でも胎児に感染し得ます。未治療の梅毒、とくに感染から間もない早期梅毒では母子感染の危険が高くなります。流産、死産、早産、胎児水腫、先天梅毒の原因になります。

先天梅毒の症状は時期によって異なります。

  • 早期:皮疹、肝脾腫、骨軟骨炎、鼻炎(鼻閉)など
  • 晩期:ハッチンソン三徴(実質性角膜炎・内耳性難聴・ハッチンソン歯)など

妊婦の感染を早く見つけ、ペニシリン系抗菌薬で治療すれば、母子感染の多くは防げます。そのため梅毒血清反応は、厚生労働省「妊婦に対する健康診査についての望ましい基準」でも、妊娠初期の血液検査の1つとして位置づけられています。日本では2010年代以降、感染症発生動向調査で梅毒の報告数が増えており、妊婦の梅毒や先天梅毒の報告も増加傾向にあります。スクリーニングの重要性はますます高まっています。

2種類の血清学的検査と組合せ判定

  • 非特異的検査(STS):カルジオリピンなどの脂質を抗原として、感染で生じる抗体を測ります。RPR法やガラス板法がこれにあたります。病勢を反映し、治療が効くと抗体価が下がるため、活動性の判定や治療効果の判定に使えます。一方、梅毒以外でも陽性になる生物学的偽陽性があります。原因には妊娠、SLE、抗リン脂質抗体症候群、肝疾患、他の感染症などがあります。
  • 特異的検査(TP抗原法):梅毒トレポネーマの菌体成分を抗原とします。TPHA法、TPPA法、TPLA法、FTA-ABS法などがあります。特異性が高く偽陽性は少ないのですが、治療後も長く陽性が続きます。そのため、現在の感染か過去の感染かを区別できず、治療効果の判定にも向きません。

両者の結果を組み合わせると、次のように判断できます。

  • STS陰性・TP陰性:通常は感染を示す血清学的所見がない。ただし感染直後はどちらも陰性のことがあるため、感染機会や疑わしい症状があれば再検査する
  • STS陽性・TP陰性:生物学的偽陽性、または感染初期
  • STS陽性・TP陽性:梅毒(活動性の感染、または治療後に抗体が残っている状態)。STSの定量値の推移で判断する
  • STS陰性・TP陽性:治療後の既往感染のほか、感染初期や未治療の潜伏梅毒、TPの偽陽性も考える。治療済みと決めつけず、治療歴・感染機会・症状を確認し、追加検査や再検査で評価する

妊娠そのものが生物学的偽陽性の原因になるため、STSだけで判断すると不要な治療や不安につながります。逆にTPだけでは、治療済みの過去の梅毒と現在の感染を区別できません。2種類の検査に加えて、治療歴・感染機会・症状・抗体価の推移を合わせて判断することが重要です。とくに妊婦では、RPRが陰性というだけで未治療の感染や母子感染の危険を否定しません。

届出と助産実践での意味

梅毒は感染症法の五類感染症で、全数把握の対象です。診断した医師は7日以内に、最寄りの保健所長を経由して都道府県知事へ届け出ます。症状のない無症候梅毒も届出の対象ですが、陳旧性梅毒とみなされるものは除かれます。

陽性がわかった場合、助産師は次の点を意識して支援します。

  • 本人のプライバシーに配慮して説明する
  • パートナーの検査と治療を勧め、再感染(ピンポン感染)を防ぐ
  • 治療後はSTS定量値の推移で経過をみる
  • 出生児の評価につなげる

なお、母体のIgG抗体は胎盤を通過するため、新生児のTP抗体陽性だけでは児の感染とは判断できません。また、初期に陰性でもその後に感染する可能性はあるため、リスクに応じて妊娠後期の再検査が考慮されることがあります。

選択肢の確認

1.妊娠中期に行う。:梅毒血清反応は妊娠初期の血液検査の1つです。血液型・不規則抗体、HBs抗原、HCV抗体、HIV抗体、風疹抗体などと同時に行うため、中期とするのは誤りです。胎児感染は妊娠のどの時期にも起こり得るので、発見と治療が早いほど母子感染を防ぎやすくなります。妊娠30週ごろまでに行う検査としてはHTLV-1抗体検査や性器クラミジア検査があり、これらと時期を取り違えないようにします。

2.子宮頸管から検体を採取する。:梅毒スクリーニングは血液中の抗体を調べる血清学的検査で、検体は静脈血(血清)です。子宮頸管の擦過検体を使うのは、性器クラミジアや淋菌の核酸増幅検査です。この選択肢はそれと混同させるねらいがあります。硬性下疳などの病変部から病原体を検出する方法もありますが、症状のない妊婦全員に行うスクリーニングは採血で行います。

3.陽性判明後14日以内に保健センターに届け出る。:梅毒は五類感染症の全数把握対象で、診断した医師が7日以内に保健所へ届け出るため、期限も届出先も誤りです。市町村保健センターは健康相談や健診など、住民に身近な保健サービスの拠点であり、感染症の届出先ではありません。「14日以内」は出生届(戸籍法)の期限なので混同しないようにします。また、届出の基準は検査が陽性になった時点ではなく、医師が梅毒と診断した時点です。生物学的偽陽性のような検査上の陽性だけでは届出対象になりません。

4.非特異的検査と抗原特異的検査を組み合わせて行う。:正答。STSは病勢と治療効果を反映しますが、妊娠などで生物学的偽陽性が起こり得ます。TP抗原法は特異性が高い一方、治療後も陽性が続くため、現在の感染か既往かを区別できません。両者を組み合わせ、治療歴・症状・抗体価の推移も確認することで、偽陽性、活動性の感染、治療後の既往を検討できます。検査の陽性・陰性だけで治療済みと断定することはできません。

覚えるポイント

  • 梅毒血清反応は妊娠初期の血液検査で、HBs抗原、HCV抗体、HIV抗体、風疹抗体などと同時に行います。HTLV-1抗体と性器クラミジアは妊娠30週ごろまでに行います。
  • STS(RPR法・ガラス板法、抗原はカルジオリピン)は活動性と治療効果の判定に使います。妊娠、SLE、抗リン脂質抗体症候群などで生物学的偽陽性が起こります。
  • TP抗原法(TPHA・TPPA・TPLA・FTA-ABS)は特異性が高い反面、治療後も陽性が続くため、既往か現在の感染かを区別できません。
  • 組合せ判定では、STS陽性・TP陰性は偽陽性や感染初期、両者陽性は現在または過去の感染を考えます。STS陰性・TP陽性も治療後とは限らず、感染初期や未治療の潜伏梅毒を除外できません。治療歴・症状・抗体価の推移を合わせて判断します。
  • 梅毒は五類全数把握で、医師が7日以内に保健所へ届け出ます。出生届は14日以内、死産届は7日以内です。
  • 先天梅毒の晩期症状はハッチンソン三徴(実質性角膜炎・内耳性難聴・ハッチンソン歯)です。治療はペニシリン系抗菌薬が第一選択で、パートナーの治療も欠かせません。

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