第106回

106PM004|第106回 助産師国家試験 過去問

細菌性腟症について正しいのはどれか。

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正解3

正答

3.腟内の乳酸桿菌量の減少を認める。

この問題のポイント

細菌性腟症の本態が腟内細菌叢のバランスの崩れであることを理解しているかを問う問題です。正常な腟の自浄作用(乳酸桿菌が乳酸を作り、腟内を酸性に保つしくみ)から考えると、「乳酸桿菌の減少」「pHの上昇」「嫌気性菌の増加」がひと続きで説明できます。あわせて、カンジダ腟炎やトリコモナス腟炎との違いと、診断にはpHや顕微鏡検査が必要なことを押さえます。

解説

正常な腟の自浄作用

性成熟期の女性では、エストロゲンの作用で腟上皮細胞にグリコーゲンがたまります。腟内の常在菌である乳酸桿菌(デーデルライン桿菌)がこのグリコーゲンを分解して乳酸を作るため、腟内はおおむねpH3.8〜4.5の酸性に保たれます。この酸性環境によって病原微生物の増殖が抑えられており、これを腟の自浄作用といいます。エストロゲンが少ない小児期や閉経後は、グリコーゲンが乏しいため自浄作用が弱くなります。

細菌性腟症の本態

細菌性腟症では、何らかのきっかけで乳酸桿菌が減少し、ガードネレラ・バジナリス、モビルンカス属、プレボテラ属などの嫌気性菌を中心とした多種類の細菌が異常に増えます。特定の1種類の病原体が感染して起こる病気ではなく、腟内の細菌叢そのものが入れ替わった状態です。乳酸が減るため、腟内のpHは4.5を超えて上昇します。腟洗浄を繰り返す習慣や性行動との関連が指摘されています。

「腟炎」ではなく「腟症」と呼ぶのは、白血球の増加や発赤・腫脹といった炎症反応に乏しいためです。

症状

  • 灰白色で均質な、さらさらした帯下が腟壁に薄く付着します。
  • 嫌気性菌が作るアミンによって、魚のような生臭いにおいが生じます。精液や月経血はアルカリ性なので、性交後や月経後ににおいが強まりやすくなります。
  • 掻痒感は軽く、無症状のことも少なくありません。

診断

帯下の見た目だけでは診断できず、次のような客観的所見を組み合わせます。

  • アムセルの診断基準:①灰白色で均質な帯下、②腟内pHが4.5を超える、③帯下に10%水酸化カリウム(KOH)を加えると魚臭がする(アミン臭テスト)、④顕微鏡でクルー細胞(腟上皮細胞の表面に細菌が多数付着し、細胞の輪郭がぼやけて見えるもの)を認める。この4項目のうち3項目以上で診断します。
  • グラム染色によるNugentスコア:乳酸桿菌と、ガードネレラ・モビルンカスなどの菌の量を点数化し、0〜3点を正常、4〜6点を中間、7〜10点を細菌性腟症と判定します。

妊娠との関係と助産師の視点

妊娠中の細菌性腟症は、早産、前期破水、絨毛膜羊膜炎の危険因子であり、分娩後の子宮内膜炎との関連も知られています。治療には、医師の判断でメトロニダゾール(経口薬・腟錠)やクリンダマイシンが用いられます。助産師は妊婦健康診査や保健指導の場で、帯下の量・色・においの変化に気づいたら受診するよう伝えます。また、腟洗浄を控えること、処方された薬を最後まで使うこと、再発しやすいことを説明し、早産予防につなげます。

鑑別が必要な腟炎

  • カンジダ腟炎(外陰腟カンジダ症):原因は真菌のカンジダです。酒粕状・カッテージチーズ様の白色帯下と強い掻痒感が特徴で、腟内pHは正常範囲(4.5以下)です。妊娠、糖尿病、抗菌薬やステロイドの使用が誘因になります。
  • トリコモナス腟炎:原因は原虫の腟トリコモナスです。黄緑色で泡沫状の悪臭のある帯下と掻痒感が特徴で、pHは上昇します。性感染症なので、パートナーも同時に治療します。

選択肢の確認

1.原因菌はカンジダである。:カンジダは細菌ではなく真菌(酵母様真菌)であり、カンジダが増えて起こるのはカンジダ腟炎です。細菌性腟症は、乳酸桿菌が減ってガードネレラなどの嫌気性菌が混ざり合って増える状態で、原因を1種類の菌に特定できない点が特徴です。「帯下が増える腟の病気」とひとまとめに覚えていると取り違えやすいので、真菌か細菌叢の変化かで区別します。

2.腟内pHが4.0以下に低下する。:細菌性腟症では乳酸を作る乳酸桿菌が減るため、pHは4.5を超えて上昇し、記述とは逆の方向に変化します。pH4.0前後はむしろ乳酸桿菌が優勢な正常の腟内環境に近い値です。カンジダ腟炎ではpHが正常範囲にとどまるため、pHが低いことは、細菌性腟症やトリコモナス腟炎とカンジダ腟炎を見分ける手がかりになります。

3.腟内の乳酸桿菌量の減少を認める。:正答。細菌性腟症の本態は、腟内の優勢菌である乳酸桿菌が減り、嫌気性菌が増えて細菌叢が置き換わることです。乳酸桿菌が減ると乳酸が不足してpHが上がり、嫌気性菌がさらに増えやすい環境になります。グラム染色のNugentスコアでも、乳酸桿菌が少ないことが点数を押し上げる所見として評価されます。

4.帯下の肉眼的所見で確定診断できる。:灰白色の均質な帯下は、アムセルの診断基準4項目のうちの1つにすぎず、これだけでは診断できません。pHの測定、KOHを加えたアミン臭テスト、顕微鏡でのクルー細胞の確認を組み合わせるか、グラム染色のNugentスコアで判定します。帯下の見た目は他の腟炎と重なることが多く、無症状で典型的な帯下がみられない例もあるため、客観的な検査が必要です。

覚えるポイント

  • 腟の自浄作用は、エストロゲンによるグリコーゲンの蓄積を乳酸桿菌(デーデルライン桿菌)が乳酸に変えることで成り立ち、腟内はpH4.5以下の酸性に保たれます。
  • 細菌性腟症は「乳酸桿菌の減少と嫌気性菌(ガードネレラなど)の増加」による細菌叢の変化で、pHは4.5を超えます。炎症所見に乏しいため「腟症」と呼びます。
  • 症状は灰白色で均質な帯下と魚のような生臭いにおいで、無症状のことも少なくありません。
  • 診断はアムセルの基準(帯下の性状、pH4.5超、アミン臭、クルー細胞のうち3項目以上)か、Nugentスコア7点以上で行います。見た目だけでは確定できません。
  • 鑑別の要点は、カンジダ腟炎が「真菌、酒粕状の白色帯下、強い掻痒、pH正常」、トリコモナス腟炎が「原虫、黄緑色の泡沫状帯下、pH上昇、性感染症でパートナーも治療」です。
  • 妊娠中の細菌性腟症は早産・前期破水・絨毛膜羊膜炎の危険因子であり、治療にはメトロニダゾールやクリンダマイシンを用います。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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