第106回

106PM003|第106回 助産師国家試験 過去問

子宮内膜症について正しいのはどれか。

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正解1

正答

1.卵巣癌のリスク因子である。

この問題のポイント

子宮内膜症について、病態(エストロゲン依存性)、主な症状、治療の方向性、合併する悪性腫瘍の4点をまとめて問う問題です。判断の鍵は次の3点です。病変はエストロゲンで増殖するため、治療はエストロゲンの作用を抑える方向であること(選択肢2・4)、月経困難症をはじめとする症状が多くの人にみられること(選択肢3)、卵巣チョコレート嚢胞が卵巣癌の発生母地になりうること(選択肢1)です。良性疾患であっても、長い経過のなかで悪性腫瘍と結びつくことがある点が正答のポイントです。

解説

病態とエストロゲン依存性

子宮内膜症は、子宮内膜またはそれに似た組織が、子宮の内腔以外の場所で発生・増殖する疾患です。好発部位は卵巣、ダグラス窩、仙骨子宮靱帯、骨盤腹膜などの骨盤内です。まれに骨盤外にも生じ、胸腔に生じると月経随伴性気胸の原因になります。

発生機序としては移植説(逆流説)が代表的です。月経血が卵管を逆流し、腹腔内に内膜細胞が生着するという考え方です。ほかに腹膜の化生説などもあります。なお、子宮筋層内に内膜様組織が入り込む子宮腺筋症は、関連の深い別の疾患として扱われます。

異所性の内膜組織も、正常な内膜と同じくエストロゲンの刺激で増殖します。そして月経周期に合わせて出血と炎症を繰り返します。このため性成熟期に発症・進行し、月経のない状態(閉経後、妊娠中・授乳中、薬で排卵を抑えている間)では症状が軽くなるのが特徴です。エストロゲン依存性という性質は、子宮筋腫、子宮体癌(類内膜癌)、乳癌と並んで試験で繰り返し問われます。

症状と診断

出血と炎症が繰り返されると、周囲との癒着や線維化が起こり、次の症状が現れます。

  • 月経困難症:最も多い症状です。年齢とともに強くなる続発性(器質性)月経困難症の代表です。
  • 月経時以外の慢性骨盤痛
  • 性交痛、排便痛:ダグラス窩や直腸周囲の癒着によって起こります。
  • 不妊:卵管周囲の癒着や腹腔内環境の変化によって起こります。

内診では、ダグラス窩の硬結や圧痛、子宮の後屈と可動性の制限がみられることがあります。卵巣の病変では古い血液がたまり、チョコレート様の内容物をもつ卵巣チョコレート嚢胞となります。これは超音波やMRIで検出されます。血清CA125が上昇することはありますが、子宮内膜症に特異的な指標ではありません。確定診断は、腹腔鏡で病変を直接観察して行います。

治療

治療は、症状の強さ、年齢、挙児希望の有無をもとに選びます。薬物療法は、痛みを和らげるものと、エストロゲンの作用を抑えるものに分かれます。

  • 鎮痛薬(NSAIDs):疼痛に対する対症療法です。
  • 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP):排卵を抑え、内膜の増殖と月経量を抑えます。血栓症のリスクに注意が必要です。
  • 黄体ホルモン製剤(ジエノゲストなど):病変の増殖を抑えます。主な副作用は不正出血です。
  • GnRHアゴニストなど:卵巣からのエストロゲン分泌を強く抑える偽閉経療法です。更年期様症状と骨密度低下が起こるため、使える期間が限られます。
  • 手術療法:嚢胞摘出術や病巣の切除・焼灼です。嚢胞が大きい場合、悪性が疑われる場合、不妊の場合などに検討します。

ホルモン療法中は排卵が抑えられるため、治療を続けながら妊娠を目指すことはできません。挙児希望がある場合は、手術や生殖補助医療も含めて方針を立てます。ただし、排卵を抑える薬を使っていても避妊が保証されるわけではありません。ジエノゲストやGnRHアゴニストでは、添付文書に従って投与前に妊娠していないことを確認します。投与は月経周期の初期から開始し、治療期間中は非ホルモン性の避妊を行います。これらの薬は妊婦には投与禁忌です。

卵巣癌との関連

卵巣チョコレート嚢胞から、長い経過のなかで卵巣癌が発生することがあります。特に明細胞癌と類内膜癌との関連がよく知られています。日本では、卵巣癌に占める明細胞癌の割合が欧米より高いことも知られています。悪性化を疑うきっかけになるのは、次のような所見です。

  • 年齢が高いこと
  • 嚢胞が大きいこと、短期間で大きくなること
  • 嚢胞の壁に充実部分が現れること

このように子宮内膜症は卵巣癌のリスク因子であり、チョコレート嚢胞がある人には長期の経過観察が欠かせません。

助産師の実践とのつながり

思春期・若年女性の中には、月経痛を「我慢するもの」と考えている人が少なくありません。助産師は、痛みが強い場合や年々強くなる場合に、早めの婦人科受診を勧める立場にあります。早期の診断と治療は、痛みの軽減だけでなく、将来妊娠しやすい状態を守ることにもつながります。治療中の人に対しては、避妊の方法や、挙児希望の時期に合わせた治療計画を主治医と相談できるよう支えることも大切です。

選択肢の確認

1.卵巣癌のリスク因子である。:正答。卵巣チョコレート嚢胞を母地として卵巣癌が発生することがあり、特に明細胞癌・類内膜癌との関連が知られています。そのため子宮内膜症は、未経産や家族歴(BRCA1/2遺伝子の病的バリアントなど)と並ぶ卵巣癌のリスク因子として扱われます。嚢胞がある人では、年齢、嚢胞の増大、充実部分の出現に注意して長期に経過をみます。

2.エストロゲン貼付薬を治療に用いる。:子宮内膜症の病変はエストロゲンで増殖するため、エストロゲンを補う薬を単独で使えば悪化する方向に働きます。治療で用いるのは、LEP、黄体ホルモン製剤、GnRHアゴニストなど、排卵やエストロゲン分泌を抑える薬です。LEPにもエストロゲンは含まれますが、黄体ホルモンとともに排卵を抑え、内膜を薄く保つことで病変の活動を抑えます。この点で、エストロゲンを補充する目的とはまったく異なります。エストラジオール貼付薬は、更年期障害に対するホルモン補充療法など、エストロゲンが不足した状態を補うときに使う薬です。「補うのか、抑えるのか」を取り違えないようにしましょう。

3.自覚症状を認めることはまれである。:子宮内膜症では多くの人に月経困難症がみられます。慢性骨盤痛、性交痛、排便痛、不妊などの症状が受診のきっかけになるのが一般的です。症状が乏しく、健診の超音波や不妊検査で偶然見つかる例もありますが、それは一部にすぎません。自覚症状が乏しいことが特徴とされるのは、早期の卵巣癌や子宮頸部異形成などです。これらと混同しないようにします。

4.プロゲステロンに依存する疾患である。:子宮内膜症が依存するのはエストロゲンであり、プロゲステロンは病変を抑える側に働きます。黄体ホルモンは内膜を脱落膜様に変化させて増殖を抑えるため、ジエノゲストなどの黄体ホルモン製剤は治療薬として使われます。妊娠中に症状が軽くなるのも、月経が止まることに加えて、高濃度のプロゲステロンが作用するためと考えられています。

覚えるポイント

  • 子宮内膜症はエストロゲン依存性です。性成熟期に発症し、閉経・妊娠・授乳・排卵抑制で軽快します。同じくエストロゲン依存性の疾患として、子宮筋腫、子宮体癌(類内膜癌)、乳癌があります。
  • 主な症状は、年齢とともに強くなる続発性月経困難症、慢性骨盤痛、性交痛、排便痛、不妊です。
  • 薬物療法はエストロゲンの作用を抑える方向です。LEP、黄体ホルモン製剤(ジエノゲスト)、GnRHアゴニスト(偽閉経療法。骨密度低下のため使用期間が限られる)を用います。ホルモン療法中は妊娠を目指せません。ジエノゲストやGnRHアゴニストの治療中は非ホルモン性の避妊が必要です(妊婦には投与禁忌)。
  • 卵巣チョコレート嚢胞は卵巣癌(明細胞癌・類内膜癌)の発生母地になりえます。高年齢、嚢胞の増大、充実部分の出現に注意して長期に経過をみます。
  • 確定診断は腹腔鏡で行います。CA125は上昇することがありますが、特異的ではありません。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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