第106回

106AM013|第106回 助産師国家試験 過去問

Bowlby〈ボウルビィ〉が提唱したアタッチメント〈愛着〉の説明で正しいのはどれか。

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正解3

正答

3.子どもが養育者に対して抱く情緒的なきずなである。

この問題のポイント

ボウルビィのアタッチメント理論について、「誰から誰へ向かうきずなか」「いつ形成されるか」「どの時期まで関わる概念か」を問う問題です。アタッチメントは、子どもの側から特定の養育者へ向かう情緒的なきずなです。生後数か月から数年をかけて段階的に形成され、生涯の対人関係の土台になります。母親から子へ向かうボンディングや、母親役割獲得過程と区別できるかが判断の鍵です。

解説

アタッチメントとは

英国の精神科医ボウルビィは、家庭を離れて施設などで育つ子どもの研究から、乳幼児期に特定の養育者との継続的な関係を失うこと(母性剥奪、マターナル・デプリベーション)が心身の発達に深刻な影響を及ぼすと指摘しました。その後、ローレンツの刻印づけやハーロウのアカゲザル実験などの動物行動学の知見を取り入れ、アタッチメント理論として体系化しました。

アタッチメントとは、子どもが不安・恐れ・苦痛を感じたときに特定の人物に近づき、くっつくことで安心を取り戻そうとする傾向と、それによって結ばれる情緒的なきずなです。ボウルビィはこれを、危険から身を守り生存の可能性を高めるために生まれつき備わった行動のしくみととらえました。アタッチメント行動には次の2種類があります。

  • 泣く・微笑む・声を出すなど、相手を呼び寄せる発信行動
  • 後追い・しがみつきなど、自分から近づく接近行動

形成の過程(ボウルビィの4段階)

  • 第1段階(出生〜生後8〜12週ころ):人物を区別せず、誰に対しても注視・微笑・泣きで働きかけます。
  • 第2段階(〜生後6か月ころ):よく関わってくれる特定の人物に、より多く微笑んだり声を出したりするようになります。
  • 第3段階(生後6か月ころ〜2、3歳ころ):特定の人物へのアタッチメントが明確になり、はいはいや歩行で後を追います。人見知りや分離不安が目立つ時期です。
  • 第4段階(3歳ころ以降):養育者の意図や状況を理解し、離れていても関係が続くと分かるようになり、協調的な関係を築きます。

このように、アタッチメントは出生時に完成しているものではなく、日々の相互作用の積み重ねで育っていきます。

安全基地と内的作業モデル

養育者が子どものサインに敏感に、一貫して応答すると、子どもは養育者を安全基地として外の世界を探索し、不安になると戻って安心を得るようになります。安全基地はエインズワースが用い、ボウルビィも理論の中心に置いた概念です。この経験から、「自分は大切にされる存在か」「他者は頼れるか」という心の枠組み(内的作業モデル)がつくられ、成長後の対人関係や、自分が親になったときの子育てにも影響します。ボウルビィは、アタッチメントは「ゆりかごから墓場まで」人間を特徴づけるものだと述べています。

アタッチメントの個人差を実験的に評価したのがエインズワースのストレンジ・シチュエーション法です。子どもの反応は安定型・回避型・両価型(アンビバレント型)に分類され、のちに無秩序・無方向型が加えられました。

混同しやすい概念

  • ボンディング:クラウスとケネルが提唱した、親(主に母親)から子どもへ向かう情緒的なきずなです。出生直後の早期接触の意義を強調しました。
  • 母親役割獲得過程:ルービンが提唱し、マーサーが発展させた、女性が妊娠・出産・育児を通して母親としての役割とアイデンティティを獲得していく過程です。

実践とのつながり

助産師は、早期母子接触、母子同室、授乳時の関わりなどを通して、母親が児の泣きや表情などのサインに気づき、応答できるよう支援します。こうした応答的な関わりの積み重ねが、児のアタッチメント形成を支えます。

一方で、アタッチメントは出生直後に決まるものではありません。NICU入院などで早期接触ができなかった母親には、その後の関わりで十分にきずなは育つことを伝えます。自責感を和らげ、面会やタッチケア、授乳などへの参加を支えることが大切です。

選択肢の確認

1.出生直後に確立する。:アタッチメントは生後数か月から数年をかけて段階的に形成されるもので、出生直後に確立するものではありません。特定の人物へのアタッチメントが明確になるのは生後6か月ころ以降で、人見知りや後追いとして観察されます。出生直後の感受期や早期接触を重視したのはクラウスとケネルのボンディングの考え方であり、これと取り違えやすいので注意が必要です。

2.周産期に限定した概念である。:周産期は一般に妊娠満22週から生後7日未満を指しますが、アタッチメントはこの時期に限られません。乳幼児期に形成された関係は内的作業モデルとして心に残り、学童期・思春期・成人期の対人関係や、次の世代の子育てにまで影響すると考えられています。ボウルビィ自身も、アタッチメントは生涯を通じて働くものと述べています。

3.子どもが養育者に対して抱く情緒的なきずなである。:正答。アタッチメントは、子どもが不安なときに特定の養育者に近づいて安心を得ようとする傾向と、それによって結ばれる情緒的なきずなです。向きは「子どもから養育者へ」であり、養育者の敏感で応答的な関わりによって安定したものになります。

4.女性が母親として心理的に適応していく過程である。:この説明は、ルービンやマーサーが示した母親役割獲得過程に当てはまります。主体は子どもではなく母親であり、アタッチメントとは別の概念です。ルービンは産褥期の母親の心理的変化を受容期・保持期・解放期として説明しており、これも母親側の適応過程として出題されます。

覚えるポイント

  • アタッチメント(ボウルビィ)は、子どもから養育者へ向かう情緒的なきずなです。
  • ボンディング(クラウスとケネル)は、親から子へ向かう情緒的なきずなで、出生直後の早期接触を重視します。
  • 形成は4段階です。生後6か月ころから特定の人物へのアタッチメントが明確になり(人見知り・後追い・分離不安)、3歳ころに協調的な関係へ進みます。
  • 安全基地と内的作業モデルを通して、アタッチメントは周産期に限らず生涯の対人関係に影響します。
  • ストレンジ・シチュエーション法(エインズワース)では、安定型・回避型・両価型・無秩序型に分類します。
  • 母親としての心理的適応は、ルービン、マーサーの母親役割獲得過程で説明します。ルービンの産褥期は受容期・保持期・解放期です。

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