111AM006|第111回 看護師国家試験 過去問
マズロー, A. H. Maslow, A. H. の基本的欲求の階層で社会的欲求はどれか。
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正解: 2 または 3
正答
2.帰属の欲求
3.承認の欲求
いずれも正答として扱われます(選択肢2に加えて、選択肢3も正答と認められています)。
この問題のポイント
マズローの基本的欲求の階層(欲求階層説)の5段階を理解し、そのうち「社会的欲求」にあたるものを選ぶ問題です。手がかりは「社会的」という語で、家族や仲間、集団など他者との関係の中で満たされる欲求を探します。一般には所属と愛の欲求(帰属の欲求)が社会的欲求と呼ばれます。ただし、他者から認められたいという承認の欲求も社会的欲求に含める考え方があるため、選択肢2と選択肢3がいずれも正答として扱われています。
解説
問題文の「基本的欲求の階層」は、マズローの欲求階層説を指します。「社会的欲求」は、他者や集団とのかかわりの中で生じ、満たされる欲求を意味します。まず5つの段階を下から正しく並べ、そのうちどの段階が他者との関係を前提にしているかを考えます。
マズロー(Maslow, A. H.)は人間性心理学を代表するアメリカの心理学者で、人間の基本的欲求を5つの段階からなる階層として示しました。この階層はピラミッドの図で表されることが多く、下の段階から順に並べると次のとおりです。
- 生理的欲求:呼吸、食事、水分、排泄、睡眠、体温の維持、性など、生命を維持するための最も基本的な欲求です。
- 安全の欲求:危険や苦痛、恐怖から身を守りたい、安定した秩序ある環境で暮らしたいという欲求です。健康や経済的な安定を求めることも含まれます。
- 所属と愛の欲求:家族や友人、職場、地域などの集団に受け入れられ、愛し愛されたいという欲求です。帰属の欲求、愛情と所属の欲求とも訳され、社会的欲求とも呼ばれます。
- 承認の欲求:他者から認められ尊重されたいという欲求と、自分自身を価値ある存在と認めたい(自尊心をもちたい)という欲求の両面をもちます。自尊の欲求、尊重の欲求とも訳されます。
- 自己実現の欲求:自分の能力や可能性を最大限に発揮し、自分がなりうる存在になりたいという欲求です。
マズローは、下位の欲求がある程度満たされると、より上位の欲求が強く現れてくると考えました。下の4段階は欠乏欲求と呼ばれ、不足すると満たそうとする動機が生じます。最上位の自己実現の欲求は成長欲求と呼ばれ、満たされても消えることなく、人をさらなる成長へ向かわせます。
次に「社会的欲求」という語の範囲を整理します。
- 日本語の文献では、第3段階の所属と愛の欲求を「社会的欲求」と呼ぶことが多く、これが選択肢2にあたります。
- 心理学では、欲求を生まれつき備わっている一次的欲求(生理的欲求)と、社会生活の中で獲得される二次的欲求(社会的欲求)に分けることがあります。この分類では、承認欲求は親和欲求や達成欲求と並ぶ社会的欲求の代表です。
- 承認の欲求には「他者から認められたい」という、対人関係の中で満たされる側面があります。そのため、社会的欲求に含めても不自然ではありません。
このように「社会的欲求」が指す範囲には文献による幅があり、本問では選択肢2と選択肢3のどちらを選んでも正答とされました。
これに対して、安全の欲求と、睡眠を含む生理的欲求は、階層の下位で生命と生活の土台を支える欲求です。他者との関係を前提としていないため、どちらの解釈をとっても選択肢1と選択肢4は社会的欲求には当たりません。
欲求階層説は、看護で患者のニーズを整理し、看護問題の優先順位を考えるときの枠組みとして使われます。
- 呼吸・循環・栄養・排泄などの生理的欲求や、転倒・転落、感染、事故から身を守る安全の欲求が脅かされている場合は、生命に直結するため原則として優先して対応します。
- 入院や施設入所で家族や職場から切り離されると、所属と愛の欲求が満たされにくくなります。病気や障害、退職などで仕事や家庭での役割を失うと、承認の欲求が満たされにくくなります。
- 家族との面会や連絡を支える、患者の話を傾聴し一人の人として尊重する、できていることを具体的に認めて言葉で返す、治療やケアについての自己決定を尊重する、といったかかわりが、こうした社会的欲求に応える看護です。
ただし、階層の順序は絶対的なものではありません。たとえば終末期の患者が、身体的な苦痛の中でも家族とのつながりや尊厳を強く望むこともあります。個別の状況に応じて判断することが大切です。
選択肢の確認
1.安全の欲求:身体の危険や苦痛、恐怖から守られ、安定した秩序ある環境で暮らしたいという欲求で、生理的欲求のすぐ上、階層の下から2番目に位置します。健康の維持や経済的な安定を求めることも含まれます。生理的欲求とともに生命と生活の土台となる欲求であるため、社会的欲求には当たりません。看護では、転倒・転落の防止、感染予防、苦痛の緩和、治療や検査に対する不安の軽減などがこの欲求への援助にあたります。
2.帰属の欲求:正答。家族や友人、職場、地域などの集団の一員として受け入れられ、愛し愛されたいという欲求です。階層の第3段階にあたる所属と愛の欲求(愛情と所属の欲求)の別の訳語です。欲求階層説で一般に「社会的欲求」と呼ばれる欲求そのものであり、本問の標準的な正答です。入院による孤立や、高齢者の独居・施設入所に伴う孤独感などは、この欲求が満たされにくい状況の例です。
3.承認の欲求:正答。階層の第4段階で、他者から認められ尊重されたいという欲求と、自分の能力や価値を自分で認めたいという欲求からなり、自尊の欲求、尊重の欲求とも訳されます。所属と愛の欲求だけを社会的欲求と呼ぶ整理では、第4段階として区別されます。一方で、他者からの評価や尊重という対人関係の中で満たされる側面をもち、心理学でも社会生活の中で獲得される社会的欲求(二次的欲求)の代表とされます。このため、選択肢2とともに正答として扱われています。病気や障害、退職などで役割を失ったときに損なわれやすい欲求です。
4.睡眠の欲求:睡眠は、呼吸や食事、水分摂取、排泄、体温の維持などと同じく生命の維持に欠かせないもので、階層の最下層にある生理的欲求に含まれます。他者との関係を前提としない最も基本的な欲求であり、社会的欲求には当たりません。生理的欲求が満たされないと生命や健康が直接脅かされるため、看護では原則として最も優先して充足を図ります。
覚えるポイント
- マズローの欲求階層は、下から「生理的欲求 → 安全の欲求 → 所属と愛の欲求 → 承認の欲求 → 自己実現の欲求」の5段階です。下位の欲求がある程度満たされると上位の欲求が現れます。
- 下の4段階は欠乏欲求、最上位の自己実現の欲求は成長欲求です。
- 「社会的欲求」は一般に所属と愛の欲求(帰属の欲求)を指し、広くは他者からの承認を求める承認の欲求(自尊の欲求・尊重の欲求)も含みます。本問では両方が正答として扱われました。
- 具体例で分類できるようにします。
- 睡眠・食事・排泄・呼吸:生理的欲求
- 危険の回避・安定・健康:安全の欲求
- 家族や仲間とのつながり:所属と愛の欲求
- 他者からの評価・尊敬と自尊心:承認の欲求
- 能力を発揮してなりたい自分に近づくこと:自己実現の欲求
- 看護問題の優先順位は、生命を維持する生理的欲求と安全の欲求から考えるのが原則です。ただし順序は絶対ではなく、患者個別の状況で判断します。
- ヘンダーソンは『看護の基本となるもの』で、人間の基本的欲求にもとづく14の基本的看護の構成要素を示しました。マズローの5段階の欲求階層説と混同しないようにします。
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