111AM005|第111回 看護師国家試験 過去問
患者の選択権の行使を最も促進するのはどれか。
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正解: 4
正答
4.インフォームド・コンセント
この問題のポイント
医療の意思決定で、決める主体を誰に置く考え方かを見分ける問題です。「選択権の行使」という言葉から、患者が自分で判断して選ぶための条件を整える概念を選びます。医療者が判断・決定する概念(父権主義、医師の裁量権)と、患者が指示に従う程度を表す概念(コンプライアンス)を対比して整理すると確実に解けます。
解説
問題文の手がかり
鍵になる語は「患者の選択権」と「最も促進する」です。患者が選択権を実際に使うには、次の3つが必要です。
- どのような選択肢があり、それぞれがどういうものかを知っていること
- その内容を理解できること
- 誰からも強制されずに決められること
これらの条件をそろえる仕組みはどれか、という視点で選択肢を見ます。
インフォームド・コンセントとは
インフォームド・コンセント(説明と同意)では、まず医療者が次の内容を十分に、分かりやすく説明します。
- 病名・病状
- 検査や治療の目的と方法
- 期待される効果と、危険性・副作用
- ほかに取りうる選択肢
- 治療を受けない場合の見通し
患者はそれを理解したうえで、自由な意思で同意または拒否します。成立に必要な要素は、情報の開示、患者の理解、意思決定の自発性、患者の同意能力です。同意は後から撤回でき、拒否も正当な選択として尊重されます。
この考え方の土台は、生命倫理の自律尊重の原則と、患者の自己決定権です。医療法は、医療の担い手が医療を提供する際に適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならないと定めています(第1条の4第2項、努力義務)。世界医師会のリスボン宣言(患者の権利に関する宣言)も、患者の自己決定の権利を掲げています。
看護師の役割
説明を行うのは主に医師ですが、看護師にも欠かせない役割があります。
- 説明の場に同席し、患者の理解度や表情・反応を観察する
- 分かりにくかった点や、その場で言い出せなかった疑問を後から確認し、医師につなぐ
- 患者の価値観や生活を踏まえて、考えを整理する手助けをする(アドボカシー:権利擁護)
- 決定した後の気持ちの揺れを支える
看護職の倫理綱領(日本看護協会、2021年)も、人々が自らの意向や価値観にそった選択ができるよう支援することを示しています。
正答に至る判断
父権主義と医師の裁量権は、医療者が判断・決定する側の概念です。コンプライアンスは、患者が指示に従うことを表す概念です。どちらも患者の主体的な選択を中心に置いていません。これに対してインフォームド・コンセントは、決定の主体を患者に置き、判断材料を保障する仕組みそのものです。そのため、選択権の行使を最も促進します。
選択肢の確認
1.父権主義:パターナリズムとも呼ばれ、医療者が「患者のため」と考えて、患者の意思を確かめないまま、あるいは意思に反して方針を決める考え方です。親が子のためを思って決める関係になぞらえた言葉です。善行の原則を重視する一方で自律尊重の原則と対立し、患者の選択権を制限する方向に働きます。かつての医療では一般的でしたが、患者の権利意識が高まるにつれて、説明と同意を中心とする医療へ転換してきました。意識障害のある救急患者のように本人の意思を確認できない場面では医療者の判断が先に立つこともありますが、選択権を促進する概念ではありません。
2.医師の裁量権:医師が専門的な知識と経験に基づいて、診断や治療方法を判断・選択できる権限を指します。専門性から一定の裁量は認められていますが、判断の主体は医師であり、患者の選択を広げる概念ではありません。現在では、裁量権は患者の自己決定権を尊重する範囲で行使されるべきものと考えられています。宗教上の理由で輸血拒否の意思を明確にしていた患者に対し、必要時には輸血する方針を説明しないまま手術で輸血した事例があります。この事例で最高裁判所は、手術を受けるかどうかを決める権利を奪ったとして病院側の責任を認めました(2000年)。
3.コンプライアンス:医療の場面では、患者が服薬・食事制限・受診などの指示をどの程度守っているかを表す言葉で、服薬遵守の程度を示すときによく使われます。指示を出す医療者と、それに従う患者という一方向の関係が前提で、患者の選択を促す概念ではありません。混同しやすいアドヒアランスは、患者が治療方針の決定に参加し、納得したうえで主体的に治療を続けることを指し、現在はこちらが重視されています。なお、組織運営の文脈では「法令遵守」の意味でも使われます。
4.インフォームド・コンセント:正答。医療者が十分な情報を分かりやすく説明し、患者が理解したうえで自らの意思で同意または拒否するものです。患者が判断材料を持って選ぶことを保障します。自律尊重の原則と自己決定権に基づき、医療法でも適切な説明と理解を得る努力義務が定められています。そのため、患者の選択権の行使を最も促進します。
覚えるポイント
- インフォームド・コンセントの要素は、情報の開示、理解、自発性(強制がないこと)、同意能力の4つです。同意は撤回でき、拒否も尊重されます。
- 医療法では、医療の担い手は適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければなりません(努力義務)。
- パターナリズム(父権主義)は、医療者が患者に代わって決める考え方で、自律尊重の原則と対立します。
- コンプライアンスは「指示を守る」受け身の姿勢、アドヒアランスは「治療の決定に参加し、主体的に続ける」姿勢です。
- 関連用語は次のとおりです。インフォームド・アセントは、子どもに理解できる範囲で説明して賛意を得ることです。共同意思決定(SDM)は、医療者と患者が情報を共有して一緒に決めることです。アドバンス・ケア・プランニングは、将来の医療・ケアについて前もって繰り返し話し合うことです。
- 生命倫理の4原則は、自律尊重・善行・無危害・正義です。看護師は、説明の場への同席、理解の確認、意思決定支援(アドボカシー)を担います。
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