111AM059|第111回 看護師国家試験 過去問
入院中の小児のストレス因子と発達段階の組合せで正しいのはどれか。
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正解: 3
正答
3.病気の予後への不安 ― 学童期
この問題のポイント
入院という同じ出来事でも、子どもが何を一番つらく感じるかは、認知発達(ピアジェ)と心理社会的発達(エリクソン)の段階によって変わります。各段階で「何が理解でき、誰との関係を大切にしているか」を手がかりにすると、ストレス因子との対応を判断できます。病気の原因や経過を筋道立てて理解できるようになる学童期に、予後への不安が結び付きます。
解説
入院中の小児のストレス因子の整理
入院中の小児のストレス因子は、大きく3つに整理できます。
- 家族・友人・学校からの分離
- 生活習慣・自立・自己決定といったコントロールの喪失
- 身体損傷や痛みへの恐怖
どの因子が強く表れるかは、その時期の認知の特徴と、大切にしている人間関係によって決まります。
発達段階ごとの特徴
- 新生児期:外界を「慣れている・慣れていない」と区別して不安を抱く段階には、まだ達していません。ストレスは、痛みを伴う処置、音や光、寒冷、睡眠の中断などの生理的な刺激として表れます。NICUでは、光や音を調整して刺激を減らすなど、発達を支えるディベロップメンタルケアを行います。この時期の入院による母子分離は、親子の愛着形成への影響や親の不安という観点から支援の対象になります。
- 乳児期後半〜幼児期:生後6〜8か月頃から人見知りと分離不安が現れ、幼児期前半まで特に強く表れます。そのため母子分離が最大のストレスになります。見慣れない場所や人、生活習慣の変化もストレスになります。前操作期の幼児は自己中心的・魔術的に考えるため、入院や処置を「悪い子だった罰」と受け止めることがあります。身体を傷つけられることへの恐怖も強く示します。
- 学童期:具体的操作期に入り、具体的な事柄について因果関係を論理的に考えられるようになります。病気の原因や治療の意味を理解できるようになる分、「いつ治るのか」「前のように学校に通えるのか」という病気の予後への不安が生じます。勤勉性を獲得する時期でもあるため、学業の遅れ、友人や学校生活からの分離もストレスになります。それまで自分でできていたことができなくなることも負担です。
- 思春期:第二次性徴で身体が変化し、自意識が高まる時期です。身体の露出を伴う診察・処置・清潔ケアや、同室者に会話が聞こえる環境などによるプライバシーの侵害が強いストレスになります。アイデンティティを確立する時期なので、仲間からの分離、ボディイメージの変化、自己決定の制限も大きな負担です。形式的操作期に入り抽象的・将来的な思考ができるようになるため、進学や将来への不安も加わります。
乳児期後半〜幼児期の子どもが養育者から離されると、分離が長引くにつれて、ロバートソンとボウルビィが示した次の3段階をたどります。
- 抗議:激しく泣いて親を求めます。親を探したりしがみついたりし、他の人の関わりを拒みます。
- 絶望:泣くことが減り、無気力で悲しげになり、周囲への関心を失って引きこもります。食欲の低下や退行(赤ちゃん返り)も見られます。
- 離脱(否認):周囲に関心を示し、看護師や他児とも関わるようになるため、一見適応したように見えます。しかし関係は表面的で、面会に来た親には無関心でよそよそしい態度をとります。
離脱は、長期の分離によって親への愛着を抑え込んだ状態であり、真の適応ではありません。「病棟に慣れた」と見誤らないことが大切です。絶望と離脱の特徴を入れ替えて覚えないよう注意しましょう。
正答に至る判断と看護への活用
各選択肢のストレス因子が、どの発達段階で最も目立つかを照合します。見慣れない環境と母子分離は乳児期後半〜幼児期に特徴的です。プライバシーの侵害は思春期、病気の予後への不安は学童期に特徴的です。発達段階と正しく対応しているのは選択肢3だけです。
この知識は、次のような看護に直結します。
- 発達段階に合わせた説明(プレパレーション)
- 幼児への付き添い・面会の工夫による分離の軽減
- 学童への院内学級や訪問教育による学習の保障
- 思春期の子どもへのカーテン使用や声かけによる羞恥心への配慮
選択肢の確認
1.見慣れない環境 ― 新生児期:見慣れない環境が不安として表れるのは、人や場所を見分けて不安を感じられるようになる乳児期後半から幼児期です。新生児期のストレスは、処置の痛み、騒音、強い光、睡眠の中断などの生理的刺激が中心です。環境が「見慣れない」こと自体を認知して苦痛を感じる段階ではないため、この組合せは誤りです。幼児期と組み合わせれば典型的な組合せになります。
2.プライバシーの侵害 ― 幼児期:プライバシーの侵害が強いストレスになるのは、第二次性徴による身体の変化で自意識と羞恥心が高まる思春期です。羞恥心は成長とともに強まるため、学童期の子どもの処置でも露出への配慮は必要です。しかし幼児期の主なストレスは母子分離、見慣れない環境、身体損傷への恐怖であり、この組合せは典型的ではありません。
3.病気の予後への不安 ― 学童期:正答。学童期は具体的操作期にあたり、病気の原因・治療・経過を因果関係として理解できるようになります。そのため、病気がこの先どうなるのか、元の学校生活に戻れるのかという予後への不安が生じます。予後への不安は思春期にも続き、進路や将来像と結びついてより複雑になります。それでも、この不安が現れてくるのは学童期です。学業の遅れや友人からの分離への不安と並ぶ、学童期の代表的なストレス因子です。
4.母子分離 ― 思春期:母子分離が最大のストレスになるのは、分離不安が現れる乳児期後半から幼児期で、とくに幼児期前半までです。思春期は親から心理的に自立していく時期です。むしろ仲間から切り離されること、プライバシーの侵害、自己決定の制限がストレスになるため、この組合せは誤りです。「母子分離」と「仲間からの分離」を取り違えないようにしましょう。
覚えるポイント
- 入院中の小児の主なストレス因子は、分離、コントロールの喪失、身体損傷や痛みへの恐怖の3つです。どれが強く出るかは発達段階で決まります。
- 新生児期:痛み・音・光などの生理的刺激が中心です。母子分離は、愛着形成と親の不安への支援として考えます。
- 乳児期後半〜幼児期:母子分離、見慣れない環境、身体損傷への恐怖、入院を罰と捉えることがストレスになります。分離不安は生後6〜8か月頃から現れ、幼児期前半まで特に強く表れます。
- 分離反応は、抗議(泣いて親を求める)→ 絶望(無気力になり周囲への関心を失う)→ 離脱・否認(周囲に関心を示し一見適応したように見えるが、面会の親には無関心)の順に進みます。
- 学童期(具体的操作期、勤勉性 対 劣等感):病気の予後への不安、学業の遅れ、友人・学校からの分離がストレスになります。
- 思春期(形式的操作期、同一性 対 同一性拡散):プライバシーの侵害、ボディイメージの変化、仲間からの分離、自己決定の制限がストレスになります。
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