111AM060|第111回 看護師国家試験 過去問

A君(小学6年生)は病院に併設された院内学級に通いながら骨肉腫 osteosarcoma の治療を続けていた。現在、肺転移があり終末期にある。呼吸障害のため鼻腔カニューレで酸素(2L/分)を吸入中である。A君の食事摂取量は減っているが意識は清明である。1週後に院内で卒業式が予定されている。A君は「卒業式に出席したい」と話している。看護師のA君への対応として適切なのはどれか。

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正解: 3

正答

3.出席できるように準備しようと話す。

この問題のポイント

終末期にある学童が自分の希望をはっきり言葉にしたとき、看護師がそれをどう受けとめて支えるかを問う問題です。判断の手がかりは「小学6年生」「意識は清明」「1週後」、そして本人の「卒業式に出席したい」という発言です。子どもの意見表明権の尊重と、残された時間の生活の質(QOL)を支える小児緩和ケアの考え方から判断します。酸素吸入中であることや食事量の減少は、出席をあきらめる理由として扱いません。どのように準備するかを考えるための情報として扱います。

解説

事例から読み取る手がかり

  • 年齢・発達:小学6年生(11〜12歳)です。学童期後期から思春期の入口にあたり、自分の状況を理解し、考えを言葉で表現できる時期です。
  • 病状:骨肉腫の肺転移があり終末期です。呼吸障害のため鼻腔カニューレで酸素2L/分を吸入中で、食事摂取量も減っています。今後は全身状態が徐々に低下すると予測され、体力の回復は見込みにくい段階です。
  • 意識:清明です。本人の意思を確認でき、それを支援の出発点にできます。
  • 時間:卒業式は1週後です。終末期は数日単位で状態が変わりうるため、準備はすぐに始める必要があります。
  • 背景:院内学級に通いながら治療を続けてきた子どもで、病気と向き合いながら学校生活を大切にしてきたことがうかがえます。

子どもの意思を尊重するという原則

児童の権利に関する条約(1989年国連採択、日本は1994年批准)の第12条は、意見表明権を定めています。自分の意見をもつ力のある子どもは、自分に影響するすべての事柄について自由に意見を表明でき、その意見は年齢と成熟度に応じて考慮されます。医療の場でも、子どもは保護される存在であると同時に、自分のことに参加する主体です。親が法的な代諾者であっても、理解度に合わせて説明し、本人の納得(インフォームド・アセント)を得ることが求められます。意識が清明で望みをはっきり言える小学6年生であれば、本人の言葉を支援の中心に置きます。

出題当時の根拠は上記の条約です。その後、2023年4月にこども基本法が施行され、こどもの意見表明の機会の確保と意見の尊重が基本理念として法律に明記されました。

終末期の学童にとっての卒業式の意味

学童期はエリクソンの発達課題でいう「勤勉性 対 劣等感」の時期で、学校での学びや仲間とのつながりが自己評価を支えます。卒業式は、院内学級で積み重ねた努力が認められ、同級生とともに一区切りを迎える場です。

学童期後期の子どもは、死が不可逆で誰にでも訪れるものだと理解できるようになります。A君も自分の病状の重さを感じ取っている可能性があります。そのなかでの「出席したい」という言葉は、今を生きる目標であり、自分らしさを保つための大切な願いと受けとめるべきものです。

小児緩和ケアとしての看護

緩和ケアの目的は、痛みや呼吸困難などの苦痛を和らげることだけではありません。本人と家族の生活の質を高めることも目的です。残された時間が限られているほど、「元気になってから」ではなく「今の状態でどう実現するか」を考えることが中心になります。看護師がまず希望を受けとめ、実現に向けて一緒に準備しようと伝えることで、本人は目標と安心を得て、主体的に過ごす意欲を保てます。

準備では、本人・家族・主治医・院内学級の教員・病棟スタッフなどと、次のような点を調整します。

  • 医療面:携帯用酸素ボンベの準備と残量の確認、パルスオキシメーターによる観察、呼吸困難や疼痛を和らげる薬剤を使う時間の調整、前日と当日の休息の確保。
  • 参加方法:車椅子やストレッチャーでの参加、卒業証書授与など本人が特に大切にしている場面に絞った参加など、体力に合わせた形を本人と相談します。
  • 安全面:医療者の付き添い、会場での休憩場所、移動経路の確認、急変時の対応手順の共有。
  • 代替案:当日の体調で会場に行けない場合に備え、病室での証書授与や映像を通じた参加などを前もって考えておきます。

家族は本人の思いを共有し、ともに支える大切なパートナーです。家族の不安や思いも聴き、本人の希望を家族と一緒に支える体制を整えることも看護師の役割です。

選択肢の確認

1.両親に判断してもらおうと話す。:意識が清明で自分の希望をはっきり表明している本人を飛ばして、判断を両親に委ねる対応です。両親への相談と同意は必要で、準備をともに進める大切な存在でもあります。しかし「決めるのは両親」と伝えると、本人は自分の思いを受けとめてもらえなかったと感じます。意識障害などで本人が意思を表せない場合や、乳幼児で意思決定能力が十分でない場合は家族の判断の比重が大きくなりますが、この事例には当てはまりません。

2.今の状態では出席は難しいと話す。:酸素吸入や食事量の減少はあるものの、意識は清明で、支援と工夫があれば参加の方法を考えられる状態です。最初から出席を否定すると、残された時間の大切な目標を奪い、本人の意欲や医療者への信頼を損ないます。病状を理由に一律にあきらめさせるのではなく、どうすれば可能かを考えるのが緩和ケアの姿勢です。当日に状態が悪化した場合でも、否定で終わらせずに代わりの形を一緒に考えます。

3.出席できるように準備しようと話す。:正答。本人の意思を受けとめ、実現に向けて具体的に動き出すことを伝える対応です。1週後という限られた時間のなかで、酸素吸入の継続、苦痛緩和、体力に合わせた参加方法、急変時の対応などを多職種と家族で調整します。本人が目標をもって過ごせることは、終末期の生活の質を高めることにつながります。

4.出席を決める前に体力をつけようと話す。:肺転移のある終末期で食事摂取量も減っており、1週間で体力が回復することは見込めません。回復を条件にすると、実現できない前提を課して決定を先送りすることになり、その間に状態が低下して出席の機会を失うおそれがあります。さらに、体力がつかなかったのは自分のせいだと本人に感じさせかねません。回復期の患者が目標に向けて活動量を段階的に増やす場面なら意味のある声かけですが、終末期の本人には適しません。

覚えるポイント

  • 子どもにも意見表明権があります(児童の権利に関する条約第12条)。年齢と成熟度に応じて本人の意見を尊重し、意思決定に参加してもらいます。
  • 意識が清明で意思を表明できる子どもの希望は、両親任せにしません。本人を中心に置き、家族とともに支えます。
  • 終末期では「回復してから」ではなく「今の状態でどう実現するか」を考えます。先送りは機会の喪失につながります。
  • 希望を実現するには、苦痛緩和(酸素・鎮痛)、参加方法の工夫、急変時の体制、実現できない場合の代替案を多職種で準備します。
  • 学童期の発達課題は「勤勉性 対 劣等感」です。学校行事や仲間とのつながりは、入院中や終末期の子どもにとっても大きな意味をもちます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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