111AM061|第111回 看護師国家試験 過去問
ジェンダーの定義について正しいのはどれか。
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正解: 2
正答
2.社会的文化的な性
この問題のポイント
性に関する用語(セックス、ジェンダー、性自認、性的指向)の定義を区別できるかを問う問題です。ジェンダーは身体の特徴ではなく、社会や文化が性別に結びつけてきた役割・規範・期待を指す、という点が判断の鍵です。性の多様性を理解する基礎であり、患者の尊厳を守る看護にも直結します。
解説
性を捉える4つの軸
人の「性」は1つの基準では説明できません。いくつかの独立した軸に分けて考えます。試験では次の4つの区別がよく問われます。
- セックス(sex):生物学的な性です。性染色体(XX、XYなど)、性腺(卵巣・精巣)、内性器・外性器、性ホルモンなどの身体的特徴によって区別されます。
- ジェンダー(gender):社会的文化的な性です。「男性は外で働き、女性は家事・育児・介護を担う」「男性は弱音を吐かない」のように、社会や文化がそれぞれの性に割り当ててきた役割、行動様式、服装、期待、規範の総体を指します。生まれつき決まるものではありません。家庭や学校、メディアなどを通じた社会化によって身につき、時代・地域・文化によって変化します。
- 性自認(ジェンダーアイデンティティ):自分の性をどう認識しているかという、本人の内的な感覚です。「こころの性」と表現されることもあります。
- 性的指向(セクシュアルオリエンテーション):恋愛感情や性的な関心がどの性に向かうか、あるいは向かわないかを指します。
これらの軸は互いに独立しています。そのため、身体の性と性自認が一致しない人や、性的関心が同性に向かう人など、組み合わせは人によって多様です。
- SOGI(ソジ):性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)の頭文字をとった言葉です。少数者だけでなく、すべての人が持つ属性として性を捉える考え方です。
- LGBT:L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシュアル)は性的指向に関わる言葉で、T(トランスジェンダー)は性自認に関わる言葉です。
- 性表現:服装や言葉づかいなどで自分の性をどう表すかという軸で、これを加える考え方もあります。
- セクシュアリティ:これらすべてを含み、性に関わる人間のあり方全体を指す包括的な概念です。
ジェンダーの視点が健康に重要な理由
健康問題の中には、身体の違いだけでは説明できず、社会的な役割期待から生じるものが少なくありません。例として次のようなものがあります。
- 家族介護の負担が女性に偏りやすいこと
- 「男性は弱音を吐かない」という規範から、男性が受診や相談を遅らせやすいこと
- 職業や働き方に関連した健康障害
- 配偶者からの暴力(DV)の被害
これらはジェンダーの視点で捉えると理解しやすくなります。日本では男女共同参画社会基本法(1999年制定)のもとで、性別による固定的な役割分担意識の解消が進められています。
看護実践とのつながり
看護師は、外見や戸籍上の性別から性自認や性的指向を決めつけてはいけません。本人がどう呼ばれたいか、どのような配慮を望むかを確認することが大切です。個別の配慮が必要になる場面には、次のようなものがあります。
- 病室の割り当て、更衣やトイレ、入浴介助
- 問診での家族の尋ね方(「奥さん」「ご主人」と決めつけず、「ご家族やパートナーの方は」と尋ねるなど)
正答の判断
設問はジェンダーの「定義」を問うています。身体の特徴、本人の自己認識、性的関心の向かう先はいずれもジェンダーとは別の概念です。社会や文化によって形づくられた性を指す選択肢2が正答です。
選択肢の確認
1.生物学的な性:性染色体、性腺、内外性器、性ホルモンといった身体的特徴で区別される性は、セックス(sex)と呼ばれます。ジェンダーはこれと区別するために用いられる概念なので、定義には当たりません。日常語の「性別」と混同しないよう注意しましょう。
2.社会的文化的な性:正答。ジェンダーは、社会や文化がそれぞれの性に割り当ててきた役割・行動様式・期待・規範を指します。学習によって後天的に身につき、時代や地域によって変わる点が、身体的な性との違いです。
3.自己認識している性:自分の性をどう認識しているかという内的な感覚は性自認(ジェンダーアイデンティティ)であり、ジェンダーそのものではありません。英語に「gender」という語を含むため混同しやすいので注意が必要です。身体的な性と性自認が一致しない状態は、ICD-10では「性同一性障害」とされていました。WHOのICD-11(2022年1月発効)では「性別不合」とされ、精神疾患の章から性の健康に関連する状態の章へ移されています。
4.性的指向の対象となる性:恋愛感情や性的関心がどの性に向かうかは性的指向(セクシュアルオリエンテーション)の問題であり、ジェンダーの定義とは異なります。性的指向には、異性愛、同性愛、両性愛、いずれの性にも性的関心を向けないアセクシュアルなどがあります。性自認とは独立した軸です。
覚えるポイント
- 性の4つの軸を区別します。セックス=身体(染色体・性腺・性器・ホルモン)、ジェンダー=社会文化的に形づくられた性、性自認=自分が認識する性、性的指向=恋愛・性的関心の向かう先です。
- ジェンダーは後天的に学習され、時代・地域・文化で変化します。性役割、固定的性別役割分担意識、ジェンダーバイアスはジェンダーに関連する用語です。
- SOGI=性的指向(SO)+性自認(GI)です。LGBTのうちL・G・Bは性的指向、Tは性自認に関わります。
- 身体的な性と性自認の不一致は、ICD-10の「性同一性障害」から、ICD-11では「性別不合」へ名称が変わりました。
- 看護では性自認や性的指向を決めつけず、呼び方や病室・更衣・介助などの配慮について本人の意向を確認します。
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