111PM016|第111回 看護師国家試験 過去問
貧血の定義で正しいのはどれか。
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正解: 4
正答
4.ヘモグロビン濃度が減少していること
この問題のポイント
「貧血」という用語の定義を問う必修レベルの問題です。貧血は症状や自覚の名前ではなく、血液検査でヘモグロビン(Hb)濃度が基準値より低下した状態を指します。日常会話でいう「貧血(立ちくらみ)」と医学用語の貧血を区別できるかが鍵です。
解説
問題文は「定義」を問うています。定義とは、その状態に当たるかどうかを判断する基準のことです。結果として現れやすい症状や所見とは分けて考えます。
ヘモグロビンは赤血球の中にある鉄を含むたんぱく質で、肺で酸素と結合し、全身の組織へ運びます。貧血とは、血液中のHb濃度が低下し、血液が酸素を運ぶ力が落ちた状態です。赤血球数やヘマトクリットも下がることが多いですが、臨床では主にHb濃度で判定します。WHOの基準では、成人男性13 g/dL未満、成人女性12 g/dL未満、妊婦11 g/dL未満がめやすとして広く用いられています。
Hbが減ると組織の酸素が不足し、身体はそれを補おうとします。そのため、次のような症状が現れます。
- 心拍数と心拍出量が増える:動悸、頻脈、機能性の収縮期心雑音
- 呼吸が増える:労作時の息切れ
- 組織の酸素不足そのもの:易疲労感、頭痛、めまい
- 皮膚や粘膜の血色が薄くなる:顔色不良、眼瞼結膜の蒼白
頻脈やめまいは、貧血の結果として起こりうる所見です。これらがあるから貧血と定義されるわけではありません。ゆっくり進んだ慢性の貧血では身体が慣れ、Hbがかなり低くても自覚症状が乏しいことがあります。だからこそ定義は、症状ではなく客観的な検査値で決められています。
臨床で役立つ注意点も押さえましょう。
- 貧血でもSpO2は通常正常です。SpO2は「Hbのうち酸素と結合している割合」なので、Hbの量が減っても割合は保たれます。SpO2が正常でも、組織に酸素が足りているとは限りません。
- チアノーゼは、毛細血管血中の還元Hbがおよそ5 g/dL以上になると現れます。そのため高度の貧血ではチアノーゼが出にくくなります。
- 急性の大量出血の直後は、血液がまるごと失われるため、Hb濃度はすぐには下がりません。組織間液が血管内に移動して血液が薄まってから、Hbの低下が明らかになります。出血直後はHb値だけに頼らず、血圧・脈拍・意識を観察することが重要です。
- 妊娠中は、循環血漿量の増加が赤血球量の増加を上回ります。血液が希釈されるため、Hb濃度が下がりやすくなります。
貧血の分類では、平均赤血球容積(MCV)による分類がよく出題されます。
- 小球性(おおむね80 fL未満):鉄欠乏性貧血、サラセミアなど
- 正球性:溶血性貧血、再生不良性貧血、腎性貧血、急性出血など
- 大球性(おおむね100 fL以上):ビタミンB12や葉酸の欠乏による巨赤芽球性貧血など
看護の場面では、貧血のある患者は労作で動悸や息切れが出やすくなります。活動と休息のバランスを整え、転倒を防ぐ関わりが求められます。
選択肢の確認
1.血圧が低下すること:血圧の低下は低血圧やショックを示す所見で、Hb濃度とは別の指標です。慢性の貧血では心拍出量が増えるため、血圧はむしろ保たれることが多いです。血圧が下がるのは、急性の大量出血で循環血液量そのものが減った場合(出血性ショック)などです。出血と貧血を結びつけて、この選択肢を選ばないよう注意しましょう。
2.脈拍が速くなること:脈拍の増加は、貧血で酸素を運ぶ力が落ちたときに、心拍出量を増やして補う代償反応として現れることがあります。ただし、発熱、脱水、甲状腺機能亢進症、疼痛、不安などでも起こる非特異的な所見です。貧血の結果として起こりうる症状であり、貧血かどうかを決める基準ではありません。
3.立ち上がると失神を起こすこと:立ち上がったときのめまいや失神は、俗に「脳貧血」と呼ばれます。しかし医学的には、起立性低血圧などによる一過性の脳血流低下です。起立性低血圧は、起立後3分以内に収縮期血圧が20 mmHg以上、または拡張期血圧が10 mmHg以上低下するものをいいます。脱水、降圧薬、長期臥床、自律神経障害などで起こり、Hb濃度が正常でも生じます。俗称の「貧血」と医学用語の貧血を取り違えさせる選択肢です。
4.ヘモグロビン濃度が減少していること:正答。貧血は、血液中のHb濃度が基準値より低下し、酸素を運ぶ力が低下した状態と定義されます。WHO基準では、成人男性13 g/dL未満、成人女性12 g/dL未満がめやすです。
覚えるポイント
- 貧血の定義はHb濃度の低下です。WHO基準のめやすは、成人男性13 g/dL未満、成人女性12 g/dL未満、妊婦11 g/dL未満です。
- 頻脈、動悸、息切れ、易疲労感、眼瞼結膜の蒼白は、貧血の「結果」として起こる症状です。定義ではありません。
- 立ちくらみ(いわゆる「脳貧血」)は、起立性低血圧などによる一過性の脳血流低下です。Hbが正常でも起こります。
- 貧血でもSpO2は正常のことが多く、高度の貧血ではチアノーゼが出にくくなります。
- MCVによる分類は、小球性(鉄欠乏性)、正球性(溶血性・再生不良性・腎性・急性出血)、大球性(巨赤芽球性:ビタミンB12・葉酸欠乏)です。
- 急性の大量出血の直後はHbがまだ下がっていないことがあります。血圧・脈拍・意識の観察を優先します。
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