111PM015|第111回 看護師国家試験 過去問
低体温から回復するための生体の反応はどれか。
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正解: 2
正答
2.ふるえ
この問題のポイント
体温が下がったときに、体がどのように熱を「つくる(産熱)」か、また「逃がさない(放熱の抑制)」かを問う基本問題です。選択肢は、産熱・保温に働く反応、放熱に働く反応、調節反応ではない代謝の結果の3種類に分けられます。そのうち低体温からの回復に働くのは、骨格筋の不随意な収縮で熱を産生するふるえだけです。
解説
体温調節のしくみ
体温を一定に保っているのは、視床下部の体温調節中枢です。皮膚や体の深部にある温度受容器からの情報をもとに、産熱と放熱のバランスを調節しています。中枢には基準となる温度(セットポイント)があります。実際の体温がそれより低ければ、産熱を増やして放熱を減らします。高ければ、放熱を増やします。
寒冷時と暑熱時の反応
低体温から回復するには、熱の喪失を減らし、熱の産生を増やす必要があります。寒冷時には次の反応が起こります。
- 皮膚血管の収縮:交感神経の働きで皮膚の血管が収縮し、体表への血流が減ります。皮膚温が下がって外気との温度差が小さくなり、放熱が抑えられます。温かい血液は体の深部にとどまります。
- 立毛筋の収縮(鳥肌):毛の間の空気層で保温する反応です。体毛の少ない人では効果は小さいとされます。
- ふるえ:骨格筋が不随意に、細かくリズミカルに収縮する反応です。外部への仕事をほとんどしないため、筋収縮に使われたエネルギーの大部分が熱になります。そのため短時間で大きな熱を産生できます。
- 非ふるえ熱産生:交感神経の刺激(カテコールアミン)や甲状腺ホルモンで代謝が高まり、熱が生じます。新生児はふるえによる産熱が十分ではありません。そのため、肩甲骨の間・頸部・腎周囲などにある褐色脂肪組織での熱産生が主な産熱手段になります。
- 行動による調節:衣服を重ねる、体を丸めて外気に触れる体表面積を小さくする、などです。
体温が上がったときは反対の反応が起こります。皮膚血管が拡張して体表への血流を増やし、放射(輻射)・伝導・対流による放熱を増やします。さらに汗が蒸発するときの気化熱でも熱を逃がします。常温・安静時の放熱では放射が最も大きな割合を占めます。外気温が皮膚温より高くなると、放熱できる経路は蒸発だけになります。本問の選択肢1と4は、この暑熱時の反応にあたります。
臨床での生かし方
低体温症は深部体温35℃未満をいい、軽度(32〜35℃)、中等度(28〜32℃)、重度(28℃未満)に分けられます。軽度ではふるえが強くみられますが、体温がさらに下がると弱まり、やがて消えます。**ふるえがないことは回復のしるしとは限りません。**産熱が働かないほど重症化したサインの可能性があるため、意識レベルや循環の状態とあわせて評価します。重度の低体温では心室細動が起こりやすいため、体位変換や移送は愛護的に行います。
低体温を起こしやすい対象として、次の2つを押さえます。
- 高齢者:ふるえや皮膚血管収縮の反応が弱くなっています。
- 新生児:体重あたりの体表面積が大きく、皮下脂肪も薄いため、熱を失いやすくなっています。
発熱の体温上昇期にみられる悪寒戦慄も同じしくみです。感染などでセットポイントが引き上げられると、実際の体温は「低い」と判断されます。その結果、皮膚血管の収縮とふるえが起こり、体温が上がります。この時期は保温を行います。解熱期にはセットポイントが下がって発汗が起こるため、汗の拭き取り、更衣、水分補給を行います。
選択肢の確認
1.発汗:汗が皮膚の表面で蒸発するときに気化熱を奪い、体から熱を逃がす放熱の反応です。暑熱環境、運動時、発熱の解熱期など、体温が高いときに起こります。汗腺は交感神経に支配され、伝達物質はアセチルコリンであることも問われやすい点です。低体温では抑制されます。もし起これば熱の喪失が増えるため、回復のための反応にはなりません。
2.ふるえ:正答。骨格筋が不随意にリズミカルに収縮する反応です。筋収縮に使われたエネルギーの大部分が熱になるため、短時間で大きな産熱が得られます。視床下部の体温調節中枢が体温の低下を感知して起こす、低体温からの回復に直接働く調節反応です。
3.乳酸の蓄積:乳酸は、酸素が不足した状態でブドウ糖が嫌気的に代謝されたときに生じる代謝産物です。激しい運動や、ショックなどによる組織の低酸素状態で増えます。乳酸がたまるのは代謝の結果であり、体温を上げるための調節反応ではありません。重度の低体温で末梢循環が悪くなると乳酸が増え、代謝性アシドーシスを起こすことがあります。これは回復ではなく、状態の悪化を示す変化です。
4.体表面への血流増加:皮膚の血管が拡張して体表に温かい血液が多く流れると、皮膚温が上がって外気との温度差が大きくなり、熱が逃げやすくなります。これは体温が高いときの放熱反応です。低体温では反対に、交感神経の働きで皮膚血管が収縮し、体表の血流を減らして熱を深部に保ちます。選択肢1と同じく「熱を逃がす側」の反応として整理します。
覚えるポイント
- 体温調節中枢は視床下部にあり、産熱と放熱のバランスで体温を保ちます。
- 寒冷時は、皮膚血管収縮・立毛で熱を逃がさず、ふるえ・非ふるえ熱産生(カテコールアミン、甲状腺ホルモン、褐色脂肪組織)で熱をつくります。
- 暑熱時は、皮膚血管拡張・発汗で熱を逃がします。放熱の経路は放射・伝導・対流・蒸発です。常温・安静時は放射が最大で、外気温が皮膚温を上回ると蒸発だけになります。
- 新生児はふるえによる産熱が乏しく、褐色脂肪組織による非ふるえ熱産生が中心です。
- 低体温症は深部体温35℃未満です。進行するとふるえが消えるため、ふるえがないことは重症化のサインになり得ます。
- 発熱の上昇期は悪寒戦慄(血管収縮・ふるえ)が起こるので保温します。解熱期は発汗が起こるので、清拭・更衣・水分補給を行います。
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