112AM093|第112回 看護師国家試験 過去問

次の文を読み91〜93の問いに答えよ。Aさん(47歳、男性、会社員)は妻と2人暮らしで、自宅の室内で犬を飼っている。15年前に慢性糸球体腎炎 chronic glomerulonephritis と診断され、徐々に腎機能低下が認められたので、2年前から慢性腎不全 chronic renal failure のため血液透析療法を週3回受けている。今回、弟から腎臓の提供の申し出があり、生体腎移植の目的で入院した。入院3日、Aさんの生体腎移植手術は予定通り終了した。Aさんは順調に回復し、移植後の拒絶反応もなく退院することになった。Aさんは「腎臓が悪くなってから気を付けないといけないことが多かったのですが、移植してこれまでの制約がなくなりますね」と話した。Aさんの退院後の生活で継続が必要なのはどれか。

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正解: 4

正答

4.体重の管理

この問題のポイント

腎移植で解除される透析期の制約と、移植後も生涯続く自己管理を区別できるかを問う問題です。手がかりは、拒絶反応がなく退院するという経過と、「移植してこれまでの制約がなくなりますね」というAさんの発言です。この発言の正しい部分と誤解を見分けるには、免疫抑制薬、特に副腎皮質ステロイドの副作用と、移植腎を長く守るための生活管理の知識が必要です。

解説

透析期と移植後で変わること

Aさんは2年前から週3回の血液透析を受けてきました。透析期は尿が減るか、ほとんど出ません。そのため、次の透析までに体にたまる水分、ナトリウム、カリウム、リンを抑える必要があり、水分制限、塩分制限、カリウム・リン制限、透析間の体重増加の管理が求められます。透析導入前の保存期には、残っている腎機能を守るために蛋白質の制限も行われます。

腎移植が成功すると、移植腎が尿をつくり、老廃物や電解質を排泄するようになります。そのため透析は不要になり、厳しい水分・カリウム・リンの制限もおおむね不要になります。Aさんの「制約がなくなる」という実感は、この点では正しいといえます。

移植後に始まり、続く管理

移植腎は弟の臓器なので、拒絶反応を防ぐために、移植腎が機能している限り免疫抑制薬を飲み続けます。免疫抑制薬は、カルシニューリン阻害薬(タクロリムス、シクロスポリン)、代謝拮抗薬(ミコフェノール酸モフェチルなど)、副腎皮質ステロイドなどを組み合わせて使います。これらの副作用を踏まえた自己管理が、新たに生涯続く「制約」になります。

体重の管理が必要な理由は次のとおりです。

  • 副腎皮質ステロイドは食欲を高めるため、体重増加や中心性肥満を起こしやすくなります。透析期の食事制限から解放され、食べ過ぎやすくなることも重なります。
  • ステロイドやカルシニューリン阻害薬は、高血圧、脂質異常症、耐糖能異常(移植後糖尿病)を起こしやすく、肥満はこれらをさらに悪化させます。いずれも移植腎の機能低下と心血管疾患の危険因子です。心血管疾患は、移植後の長期予後を左右する主要な要因の一つです。
  • 毎日同じ条件で体重を測ると、急な体重増加や浮腫をきっかけに、拒絶反応や移植腎機能の低下による体液貯留に早く気づけます。

Aさんは47歳の会社員男性で、もともと生活習慣病が増える年代です。この点からも体重管理の意義は大きいといえます。なお、高血圧を防ぐための減塩は、移植後も勧められます。

ほかに継続が必要なこと

  • 免疫抑制薬の確実な服薬:自己判断で中断や減量をしないことが基本です。飲み忘れや怠薬は拒絶反応の大きな原因になります。タクロリムスやシクロスポリンは、グレープフルーツで血中濃度が上がるので注意します。
  • 感染予防:手洗い、うがい、マスクの着用を続け、人混みを避けます。Aさんは室内で犬を飼っているため、排泄物の処理は家族に任せる、犬に触れた後は手を洗う、口元をなめさせるなどの濃厚な接触を避ける、といった配慮が必要です。免疫抑制中は生ワクチンを原則として接種しません。
  • 定期受診と検査:血清クレアチニンや免疫抑制薬の血中濃度を確認するため、生涯にわたり受診します。
  • 自己モニタリング:体温、血圧、尿量、体重を毎日測って記録します。拒絶反応の徴候(発熱、尿量減少、体重増加・浮腫、移植腎部の痛みや腫れ)があれば、すぐに受診します。
  • 悪性腫瘍への備え:免疫抑制下では悪性腫瘍が起こりやすいため、定期的な検診を受け、皮膚癌予防のために紫外線対策を行います。

看護としての関わり

Aさんの発言は否定せず、透析からの解放を一緒に喜びます。そのうえで、続ける必要がある管理とその理由を具体的に説明し、自己管理が移植腎を長く守ることにつながると理解できるよう支援します。

選択肢の確認

1.蛋白質の摂取制限:蛋白質の制限は、保存期の慢性腎臓病で残った腎機能を守るための食事療法です。移植腎の機能が良好であれば、厳しい制限を続ける必要はありません。ステロイドは蛋白質の分解を促すので、むしろ適量をとることが大切です。ただし移植腎は1個で働いているため、過剰な摂取は避けます。移植腎の機能が低下してきた場合は、腎機能に応じて摂取量を調整します。保存期の食事療法と混同しないようにしましょう。

2.週3回の通院:週3回という頻度は、血液透析を受けるための通院頻度です。移植腎が機能すれば透析は不要になり、この頻度での通院もなくなります。移植後も定期受診は生涯必要ですが、退院直後は短い間隔で、その後は状態が落ち着くにつれて間隔が長くなります。「通院が不要になるわけではない」ことと、「透析と同じ頻度が続くわけでもない」ことの両方を押さえておきます。

3.水分の制限:移植腎が尿をつくるようになるため、透析期のような飲水制限は不要になります。移植後はむしろ脱水を避け、移植腎の血流と尿量を保つために十分な水分をとることが勧められます。脱水は移植腎の機能低下の誘因になるためです。水分制限は、無尿・乏尿の透析期や、心不全・高度の浮腫がある場合の管理と整理しておきましょう。

4.体重の管理:正答。ステロイドによる食欲亢進と食事制限の緩和によって、移植後は体重が増えやすくなります。肥満は、免疫抑制薬の副作用である高血圧、脂質異常症、移植後糖尿病を悪化させ、移植腎の機能低下や心血管疾患の危険を高めます。さらに、毎日の体重測定は体液貯留や拒絶反応の早期発見にも役立つため、生涯続ける必要があります。

覚えるポイント

  • 腎移植が成功すると、透析と厳しい水分・カリウム・リン制限はおおむね不要になります。一方、免疫抑制薬の内服は移植腎が機能している限り続きます。
  • ステロイドの主な副作用は、食欲亢進・肥満、高血糖、高血圧、脂質異常症、易感染性、骨粗鬆症です。カルシニューリン阻害薬は腎毒性、高血圧、耐糖能異常に注意します。そのため、体重・血圧・血糖・脂質の管理が必要です。
  • 飲水の考え方は時期で逆になります。透析期は「制限」、移植後は「十分な摂取」です。
  • 感染予防の要点は、手洗い・マスク、人混みを避ける、ペットの排泄物処理を避ける、生ワクチンは原則禁忌、の4つです。
  • 拒絶反応の徴候は、発熱、尿量減少、体重増加・浮腫、移植腎部の痛み・腫れ、血清クレアチニンの上昇です。毎日の体温・血圧・尿量・体重の記録で早期に気づきます。
  • タクロリムスとシクロスポリンは、グレープフルーツで血中濃度が上がります。

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