111AM094|第111回 看護師国家試験 過去問

次の文を読み94〜96の問いに答えよ。Aさん(50歳、男性、会社員)は妻と高校生の息子との3人暮らし。仕事を生きがいに働き続けていた。慢性腎不全 chronic renal failure のため透析治療が必要になったが、本人の希望で連続携行式腹膜灌流法〈CAPD〉を導入することになり入院した。Aさんはこれからの生活がどのようになるのかを看護師に質問した。Aさんに対する説明として正しいのはどれか。

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正解: 1

正答

1.「食事療法が必要です」

この問題のポイント

連続携行式腹膜灌流法(CAPD)を導入する患者に、退院後の生活の変化を正しく説明できるかを問う問題です。判断の鍵は、CAPDは自宅や職場で自分が毎日行う透析で、通院頻度や生活上の制約は血液透析と異なるものの、食事療法が必要な点は共通している、という理解です。「仕事を生きがいに」「本人の希望でCAPD」という記述から、Aさんが社会生活との両立を重視して治療を選んだことも読み取ります。

解説

CAPDのしくみ

CAPDでは、腹壁から腹腔内にカテーテルを留置し、そこから透析液を注入して一定時間ためてから排液します。腹膜を半透膜として使い、尿素・クレアチニン・カリウムなどは拡散で除去します。余分な水分は、透析液に含まれるブドウ糖による浸透圧差で除去します。透析液の交換(バッグ交換)は1日4回程度で、患者自身や家族が行います。24時間連続してゆるやかに透析される点が特徴です。夜間の睡眠中に機械で自動的に交換する自動腹膜透析(APD)もあります。

血液透析との比較

  • 通院:血液透析は透析施設に週3回程度通い、1回4時間前後かかります。CAPDは自宅や職場で行うため、通院は月1〜2回程度の定期受診で済みます。
  • 身体への負担:CAPDは持続的でゆるやかなので循環動態の変動が小さく、残存腎機能も保たれやすいとされます。
  • 自己管理:CAPDでは、バッグ交換時の清潔操作、カテーテル出口部のケア、体重・血圧・排液性状の観察を自分で行います。
  • 主な合併症:CAPDでは腹膜炎(排液の混濁、腹痛、発熱)、出口部・トンネル感染が重要です。長く続けると腹膜の機能が低下し、被嚢性腹膜硬化症のリスクもあります。血液透析ではシャントトラブル、不均衡症候群、透析中の血圧低下が代表的です。

CAPDでも食事療法は必要

透析は腎臓の働きを完全には代わりにできないため、CAPDでも食事療法を続けます。ただし、内容には血液透析と異なる点があります。

  • エネルギー:透析液のブドウ糖が腹膜から吸収されるので、その分を見込んで摂取量を調整します。とりすぎると肥満、高血糖、脂質異常症の原因になります。
  • たんぱく質:透析液中にアルブミンなどが失われるため、不足による低栄養に注意します。一方で、とりすぎるとリンの負荷が増えます。
  • 塩分・水分:除水量と尿量に応じて制限します。
  • カリウム:持続的に除去されるため、制限は血液透析よりゆるやかです。むしろ低カリウム血症をきたすこともあります。
  • リン:除去されにくいので制限し、必要に応じてリン吸着薬を使います。

Aさんへの説明で意識すること

仕事を生きがいとするAさんにとって、通院の少ないCAPDは就労を続けやすい方法です。看護師は、仕事や旅行などの社会生活と両立できることを伝えて不安を和らげます。同時に、食事療法や清潔操作など続けなければならない自己管理を具体的に説明します。食事は家族と一緒にとることが多いため、妻や息子にも理解してもらえるよう指導するのが効果的です。職場でバッグ交換をする場合は、清潔な場所と時間を確保できるよう、職場との調整も支援します。

選択肢の確認

1.「食事療法が必要です」:正答。CAPDでも腎機能は回復しません。エネルギー(透析液からのブドウ糖吸収分を考慮)、たんぱく質の不足と過剰、塩分・水分、リンの管理が必要なので、食事療法が必要だと伝えるのは正しい説明です。カリウム制限が血液透析よりゆるやかになるなど、内容に違いがあることもあわせて説明します。

2.「通院は週に2、3回必要です」:週に2、3回(一般には週3回)の通院が必要なのは、施設で行う血液透析の場合です。CAPDは自宅や職場で患者自身がバッグ交換を行うため、通院は月1〜2回程度の定期受診が基本です。通院が少ないことはAさんがCAPDを選んだ理由にもなる利点で、血液透析と取り違えた説明になっています。

3.「宿泊を伴う旅行はできません」:CAPDでも、旅行先に透析液や必要な物品を前もって送り、清潔にバッグ交換できる場所を確保すれば、宿泊を伴う旅行ができます。血液透析でも、旅行先の透析施設を予約すれば旅行は可能です。一律に「できない」と説明すると、生活の質を不必要に下げることになります。

4.「カテーテル挿入術後の翌日から入浴できます」:術後すぐは創部と出口部が治っておらず、湯につかると細菌が入り込み、出口部感染・トンネル感染や腹膜炎の原因になります。出口部が治るまでは入浴を控え、医師の許可を得てからシャワー浴で始めます。湯船に入るときも施設の方針に従って出口部を保護し、入浴後は出口部のケアを行います。

覚えるポイント

  • CAPDは腹膜を半透膜として使い、1日4回程度のバッグ交換を自分で行います。通院は月1〜2回程度です。血液透析は週3回・1回4時間前後の通院が必要です。
  • CAPDでも食事療法は必要です。透析液から吸収されるブドウ糖分のエネルギーを考慮し、たんぱく質の喪失に注意します。カリウム制限は血液透析よりゆるやかで、塩分・水分・リンは制限します。
  • CAPDで最も重要な合併症は腹膜炎です。排液の混濁、腹痛、発熱を見逃さず、清潔操作と出口部ケアで予防します。
  • 入浴は出口部が治り、医師の許可を得てからです。旅行は透析液の配送などを準備すれば可能です。
  • 透析患者は身体障害者手帳(じん臓機能障害)や特定疾病療養受療証などの制度を利用でき、医療費の負担が軽くなります。

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