111AM095|第111回 看護師国家試験 過去問
次の文を読み94〜96の問いに答えよ。Aさん(50歳、男性、会社員)は妻と高校生の息子との3人暮らし。仕事を生きがいに働き続けていた。慢性腎不全 chronic renal failure のため透析治療が必要になったが、本人の希望で連続携行式腹膜灌流法〈CAPD〉を導入することになり入院した。Aさんはこれからの生活がどのようになるのかを看護師に質問した。Aさんはできるだけ早い職場復帰を望んでおり、入院中は CAPD の操作に熱心に取り組んでいた。退院後、CAPD を1日4回(0時、6時、12時、18時)行うことになった。Aさんが会社の昼休みに CAPD を行うために必要な設備はどれか。2つ選べ。
解答・解説を見る
正解: 3・4
正答
3.透析液の交換時に使用する個室
4.CAPD の物品を保管する専用棚
この問題のポイント
CAPDを続けながら職場復帰する患者が、昼休みの交換を職場で安全に行うために必要な設備を問う問題です。判断の鍵は、CAPDの最大の合併症である腹膜炎の多くが、交換操作のときに接続部から細菌が入って起こるという知識です。あわせて、透析液の保管方法や加温方法、貯留中の過ごし方を正しく知っていれば、「清潔に交換できる場所」と「物品を清潔に保管できる場所」の2つが必要だと判断できます。
解説
まず問題文の手がかりを整理します。Aさんは50歳の会社員で、仕事を生きがいにしており、できるだけ早い職場復帰を望んでいます。交換は0時・6時・12時・18時の1日4回です。0時・6時・18時は自宅で行えますが、12時の交換は勤務時間中の昼休みにあたります。そのため、職場で安全に交換できる条件を整える必要があります。入院中から手技の習得に熱心で、自己管理への意欲が高いことも読み取れます。
次に、CAPDの仕組みを確認します。CAPD(連続携行式腹膜透析)は、腹腔内にカテーテルを留置し、腹膜を半透膜として使う透析法です。透析液を腹腔内に注入して数時間ためておくと、その間に拡散と浸透圧によって老廃物と余分な水分が透析液へ移ります。その液を排液し、新しい液を注入する操作を1日数回繰り返します。交換は重力を利用して行うため機械は不要で、排液と注液を合わせて1回30分前後です。液をためている間は、ふだんどおりに生活し、働くことができます。一方で、交換のたびに接続と切り離しの操作があり、ここで細菌が混入すると腹膜炎を起こします。
腹膜炎を防ぐため、交換は次の条件を満たす環境で行います。
- 人の出入りがなく、ほこりが舞わない場所であること。窓を閉め、エアコンや扇風機の風を止めて行います。
- 交換の前に手洗いができ、マスクを着けて落ち着いて操作できること。
- 物品を広げる清潔な台があり、注液バッグを高い位置につるし、排液バッグを腹部より低い位置に置けること。
事務室や休憩室は人の出入りが多く、トイレは衛生面で交換に向きません。そのため、会社に交換用の個室を用意してもらう必要があります。また、昼の交換に使う透析液バッグ、接続用品、消毒薬、マスク、加温器などを毎日持ち運ぶのは大きな負担です。職場にまとめて置いておけるよう、ほかの物と区別して、ほこりや湿気を避けて保管できる専用の棚も必要になります。
透析液そのものの扱いも確認しておきます。透析液は室温で保管する製剤で、直射日光と高温多湿を避ければ十分であり、冷蔵は必要ありません。注入する前には体温程度に温めます。冷たい液を注入すると、腹痛や不快感の原因になるためです。加温には専用の加温器を使います。電子レンジは温まり方にむらが出て、一部が高温になるおそれがあるため使いません。
退院指導としては、交換時間と場所を確保できるよう、上司や同僚の理解を得るための説明を支援します。勤務の都合で日中の交換が難しい場合は、夜間の睡眠中に機械が自動で交換を行うAPD(自動腹膜透析)を医師と検討することもあります。Aさんのように仕事を大切にしている人では、治療をその人の生活に合わせて組み立てるという視点が重要です。
選択肢の確認
1.透析液を保管する冷蔵庫:透析液は室温保存の製剤なので、冷蔵庫は必要ありません。直射日光や高温多湿を避けた場所に置けば十分です。冷やした液をそのまま注入すると、腹痛や冷感の原因になります。未開封のインスリン製剤のように冷蔵保管が必要な薬剤と混同しないようにしましょう。
2.透析液を温める電子レンジ:注入前に体温程度まで温めること自体は正しいのですが、加温には専用の加温器を使います。電子レンジは温まり方が不均一で、一部が過熱されるおそれがあるため、職場に用意してもらう設備としては不適切です。「加温が必要」という知識だけで選ばないよう注意が必要です。
3.透析液の交換時に使用する個室:正答。腹膜炎の主な原因は、交換操作のときに接続部から細菌が入ることです。人の出入りやほこりの舞い上がりを避け、窓を閉めて風を止めた状態で、手洗いとマスク着用のうえ落ち着いて操作できる個室を、職場に確保してもらう必要があります。
4.CAPD の物品を保管する専用棚:正答。透析液バッグ、接続用品、消毒薬などを毎日持参するのは負担が大きいため、職場に清潔に保管できる場所が必要です。ほかの物と区別し、ほこりや湿気を避けて整理しておける専用の棚があれば、昼休みの限られた時間でも準備と交換を確実に行えます。
5.透析液の貯留中に使用するベッド:CAPDは貯留中も歩いたり仕事をしたりできることが大きな特徴で、横になって過ごす必要はありません。交換操作も椅子に座って行えます。ベッドが必要だと考えるのは、1回数時間ベッドやリクライニングチェア上で過ごす血液透析のイメージと取り違えた場合です。
覚えるポイント
- CAPDの最大の合併症は腹膜炎で、主な原因は交換時の接続部からの細菌侵入です。排液の混濁、腹痛、発熱に注意し、混濁があれば排液バッグを持参して速やかに受診するよう指導します。
- 交換は清潔な環境で行います。人の出入りのない個室を使い、窓を閉め、冷暖房や扇風機の風を止め、手洗いとマスク着用のうえで操作します。
- 透析液は室温保存で、冷蔵は不要です。直射日光と高温多湿は避けます。注入前に体温程度に温め、加温には専用加温器を使い、電子レンジは使いません。
- 貯留中は通常の生活や就労が可能です。血液透析が週3回程度の通院で1回数時間拘束されるのに対し、CAPDは在宅で毎日自分で行う治療であることが違いです。
- 就労を続けるための支援として、職場の理解を得ること、交換場所と物品の保管場所を確保すること、夜間に自動で交換するAPDを検討することを押さえておきましょう。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する([email protected])までお知らせください。確認して修正します。