111AM093|第111回 看護師国家試験 過去問
次の文を読み91〜93の問いに答えよ。Aさん(60歳、男性、会社員)は息子2人が独立して遠方で暮らしており、2年前に妻と死別して以来、1人暮らし。直腸癌 rectal cancer と診断され、腹会陰式直腸切断術、人工肛門造設術を行うと外来で説明を受けた。Aさんは看護師に対して「人工肛門を作ると聞いています。便が出てくる場所がどこなのかよくわからなくてイメージできない」 と話した。術後10日、Aさんは退院日が決まり、「落ち着いたら仕事に復帰します。1人暮らしなので、自分で人工肛門を管理しないといけないですね」と述べた。Aさんの退院に際し、人工肛門の管理に関する看護師の指導で正しいのはどれか。
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正解: 4
正答
4.「定期的に人工肛門の大きさを確認してください」
この問題のポイント
腹会陰式直腸切断術で造設した永久的な結腸ストーマについて、退院時のセルフケア指導として正しい内容を選ぶ問題です。判断の手がかりは「術後10日」「1人暮らし」「自分で管理」という言葉です。術後早期のストーマは浮腫が残っていて、この後も大きさが変わります。また、装具交換は無菌操作ではなく、皮膚を守るための清潔ケアです。この2点を押さえれば正答を選べます。
解説
事例の整理
Aさんは60歳で、1人暮らしです。息子は遠方に住んでおり、身近に支援者がいません。
腹会陰式直腸切断術(マイルズ手術)は、肛門を含めて直腸を切除する術式です。肛門機能が失われるため、S状結腸を用いた永久的な単孔式結腸ストーマを左下腹部に造設します。S状結腸ストーマから出る便は、ほぼ有形便です。
Aさんは退院後に仕事へ復帰する予定で、装具交換から皮膚の観察まで自分で行わなければなりません。そのため指導は、次の2つを満たす必要があります。
- 自宅で無理なく安全に続けられる方法であること
- 術後の変化に自分で気づける方法であること
ストーマの大きさは術後に変化する
造設直後のストーマは、手術侵襲による浮腫で腫れています。その後、数週間から数か月かけて徐々に縮小し、安定します。術後10日の退院時点では、まだ縮小の途中です。退院後も、体重の増減、腹壁の変化、傍ストーマヘルニアやストーマ脱出などの合併症によって、大きさや形が変わることがあります。
面板のストーマ孔(ストーマを通す穴)は、ストーマの外径より2〜3 mm程度大きめに切るのが基本です。
- 穴が大きすぎる場合:ストーマ周囲の皮膚が露出し、便が付着して発赤やびらんなどの皮膚障害が起こります。
- 穴が小さすぎる場合:ストーマを圧迫し、粘膜の損傷や血流障害を招きます。
このため、ストーマゲージ(計測用の型紙)で定期的に大きさを測り、面板の穴を合わせ直すよう指導します。これが正答です。
装具交換の基本
- 交換間隔:製品の種類(短期・中期・長期装着用)や皮膚の状態によって異なりますが、数日に1回程度が一般的です。はがした面板の裏で皮膚保護剤がどの程度溶けているかを見て、漏れる前に交換できる間隔に調整します。
- 清潔の程度:ストーマ粘膜は腸の粘膜で、もともと腸内細菌にさらされている部位です。交換は手洗いをして清潔に行えば十分で、無菌操作は必要ありません。
- スキンケア:剥離剤を使い、皮膚を押さえながら面板をゆっくりはがします。周囲の皮膚は弱酸性の石けんを泡立ててこすらずに洗い、ぬるま湯で十分に流し、押さえ拭きで乾かしてから新しい面板を貼ります。
- 交換のタイミング:食後は腸蠕動が亢進して排便が起こりやすいため、食前など排泄の少ない時間帯が行いやすいです。入浴に合わせて交換する方法もよく用いられます。
観察と退院後の支援
交換のたびに、次の点を確認するよう伝えます。
- ストーマ粘膜の色:正常は赤〜鮮紅色で湿潤しています。暗紫色や黒色は血流障害を疑います。
- ストーマの出血、形、大きさ
- 周囲皮膚の発赤、びらん、かゆみ
- 面板裏の溶け方
- 便の性状
1人暮らしのAさんには、ストーマ外来や皮膚・排泄ケア認定看護師など、異常時の相談先を具体的に伝えておくことが重要です。
仕事への復帰に向けては、次のような助言も役立ちます。
- 腹圧のかかる重量物の持ち上げを避ける(傍ストーマヘルニアの予防)
- 外出時は予備の装具を携帯する
社会資源としては、永久ストーマは身体障害者手帳(ぼうこう又は直腸機能障害)の対象になります。手帳を取得すると、日常生活用具としてストーマ装具の給付を受けられます。装具の費用が継続的にかかるAさんにとって、大切な支援です。
選択肢の確認
1.「面板は1日2回交換してください」:面板の交換は、製品や皮膚の状態に応じて数日に1回程度が一般的であり、1日2回では頻回すぎます。はがすたびに粘着による剥離刺激で角質が傷つき、ストーマ周囲の皮膚障害を招きます。装具費用の負担も大きくなります。1日に何回か行うのは、ストーマ袋にたまった便を排出口から捨てる処理です。面板の交換と混同しないようにします。ただし便が漏れた場合は、予定にかかわらずすぐに交換します。
2.「装具の交換は滅菌手袋を使用してください」:装具交換は日常生活の中で行う清潔ケアで、無菌操作を必要としません。本人が自宅で行う場合は、石けんと流水で手を洗えば素手で行えます。医療者が病棟で交換する場合は、排泄物に触れるため標準予防策として未滅菌の使い捨て手袋を着用しますが、滅菌手袋を使う場面ではありません。滅菌手袋を求める指導は手間と費用を増やし、1人暮らしのAさんのセルフケアの継続を妨げます。
3.「面板除去部の皮膚はお湯で洗浄してください」:面板をはがした部分には、皮膚保護剤の残り、汗や皮脂、便の汚れが付着しており、お湯だけでは十分に落ちません。弱酸性の石けんをよく泡立てて優しく洗い、ぬるま湯で石けん成分が残らないよう十分に洗い流すのが正しい方法です。熱いお湯は皮脂を奪い、乾燥や刺激の原因になります。洗い流しに湯を使うこと自体は誤りではありませんが、石けん洗浄が抜けているため指導として不十分です。
4.「定期的に人工肛門の大きさを確認してください」:正答。術後早期のストーマは浮腫により大きく、数週間から数か月かけて縮小します。体重変化や合併症でも大きさは変わります。ストーマゲージで定期的に測り、面板の穴をストーマより2〜3 mm程度大きく合わせ直すことで、排泄物による皮膚障害やストーマの圧迫を防げます。自己管理を続けるAさんに欠かせない指導です。
覚えるポイント
- 腹会陰式直腸切断術(マイルズ手術)では、永久的な単孔式S状結腸ストーマを左下腹部に造設し、便はほぼ有形便です。
- ストーマは術後の浮腫で大きく、数週間から数か月で縮小します。定期的に計測し、面板の穴はストーマ外径より2〜3 mm程度大きく切ります。
- 面板の交換は数日に1回程度で、面板裏の皮膚保護剤の溶け具合を見て間隔を調整します。頻回に交換すると皮膚障害の原因になります。
- 装具交換は清潔操作(手洗い)で十分で、滅菌手袋や無菌操作は不要です。
- 周囲の皮膚は弱酸性の石けんを泡立てて洗い、ぬるま湯で十分に流し、押さえ拭きで乾かします。
- 永久ストーマは身体障害者手帳(ぼうこう又は直腸機能障害)の対象で、日常生活用具として装具の給付を受けられます。
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