111AM092|第111回 看護師国家試験 過去問

次の文を読み91〜93の問いに答えよ。Aさん(60歳、男性、会社員)は息子2人が独立して遠方で暮らしており、2年前に妻と死別して以来、1人暮らし。直腸癌 rectal cancer と診断され、腹会陰式直腸切断術、人工肛門造設術を行うと外来で説明を受けた。Aさんは看護師に対して「人工肛門を作ると聞いています。便が出てくる場所がどこなのかよくわからなくてイメージできない」 と話した。Aさんの手術は予定通り終了した。術後1日、会陰部から挿入されたドレーンからは、淡血性の排液が10 mL/時で流出していた。バイタルサインが安定していることを確認した後、Fowler〈ファウラー〉位にして15分が経過したところで、Aさんからナースコールがあった。看護師が訪室すると「おしりが濡れているような気がする」と言う。確認すると、会陰部のガーゼに淡血性の浸出液を認めた。Aさんへの対応で最も優先度が高いのはどれか。

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正解: 2

正答

2.ドレーンの屈曲を確認する。

この問題のポイント

腹会陰式直腸切断術の術後1日、会陰部ドレーンを留置している患者で、Fowler位にした直後に会陰部のガーゼが濡れた場面での優先度判断を問う問題です。判断の手がかりは3つあります。1つ目は「Fowler位にして15分後」という時間経過、2つ目は「ガーゼの浸出液がドレーン排液と同じ淡血性」であること、3つ目は「バイタルサインは安定」していることです。これらから、体の下敷きになったドレーンの屈曲・圧迫による流出障害を最初に疑えるかがポイントです。

解説

手術と会陰部ドレーンの目的

腹会陰式直腸切断術(マイルズ手術)は、肛門に近い下部直腸癌に対して、腹部と会陰部の両方から直腸と肛門を一括して切除する術式です。肛門がなくなるため、S状結腸を左下腹部に引き出し、永久的な単孔式人工肛門(ストーマ) を造設します。

直腸を摘出したあとの骨盤内には大きな死腔ができ、血液・リンパ液・浸出液がたまりやすくなります。会陰部からドレーンを留置するのは、次の2つの目的のためです。

  • たまった液を体外へ出し、骨盤内膿瘍や会陰創感染を防ぐ。
  • 出血などの異常を早期に知る。

問題文の手がかりを整理する

  • 術後1日で、排液は淡血性、10 mL/時です。術後の排液は血性から淡血性、漿液性へと薄くなり、量も減っていくのが通常の経過で、この時点の性状・量に異常を示す情報はありません。
  • バイタルサインが安定していることを確認してからFowler位にしています。循環動態の急変を示す情報はありません。
  • Fowler位にして15分後に「おしりが濡れている」と訴え、会陰部ガーゼに淡血性の浸出液がみられました。

ドレーンが正しく機能していれば、排液はチューブを通って排液バッグへ流れます。挿入部周囲のガーゼが濡れることは通常ありません。ガーゼが濡れたということは、行き場を失った排液がドレーンの周囲から創外へあふれ出た可能性を示しています。

Fowler位では上半身が起き、体重が殿部・仙骨部にかかります。会陰部から出ているドレーンは殿部と寝具の間に挟まれやすく、屈曲や圧迫を受けやすい位置にあります。体位変換の直後に症状が出たという時間経過は、この機序とよく一致します。

一方、ガーゼの浸出液はドレーン排液と同じ淡血性で、バイタルサインも安定しています。新たな大量出血を第一に疑う状況ではありません。

したがって最初に行うべきことは、流出を妨げている原因を確かめることです。挿入部から排液バッグまでチューブをたどり、次の点を確認します。

  • 屈曲やねじれがないか
  • 体の下敷きになっていないか
  • 接続部が外れていないか
  • 抜けかけていないか

確認後の対応と実践での意味

屈曲や圧迫があれば解除し、排液がバッグへ流れ出すようになったかを確かめます。そのうえで濡れたガーゼを交換します。湿ったガーゼは細菌が増えやすく、皮膚トラブルの原因にもなるためです。その後は、排液量と性状の推移、ガーゼ汚染の程度、バイタルサインを継続して観察します。

屈曲がないのに流出が回復しない場合は、凝血塊による閉塞やドレーン先端の位置のずれも考えられるため、医師に報告します。

ドレーンは、体位変換・離床・移送など体を動かした直後にトラブルが起こりやすい器具です。「排液が本来の出口から出ていない」「排液が予想より急に減った」と気づいたら、まず回路全体を目で見て確かめます。これは胸腔・腹腔・脳室など、どの部位のドレーンにも共通する基本です。

選択肢の確認

1.Fowler〈ファウラー〉位から仰臥位にする。:体位を戻せば殿部の圧迫は変わるかもしれませんが、原因が屈曲なのか、接続外れ・閉塞・抜けかけなのかは、ドレーンそのものを見なければ判断できません。また、術後のFowler位には、横隔膜が下がって換気が改善する、骨盤底側に液を集めてドレーンから誘導しやすくする、といった目的があり、体位そのものをやめる必要はありません。原因を確認して解除し、ドレーンが圧迫されないよう整えれば、Fowler位は継続できます。「体位変換がきっかけだから体位を戻せばよい」と短絡的に考えるのが、この選択肢のひっかけです。

2.ドレーンの屈曲を確認する。:正答。Fowler位への体位変換の直後に、ドレーン排液と同じ淡血性の浸出液が会陰部ガーゼに出てきたことから、殿部の下敷きになったドレーンの屈曲・圧迫による流出障害が最も考えられます。原因に直接働きかけられ、侵襲がなく、その場ですぐ実施できるため、最優先の対応です。屈曲とあわせて、ねじれ、接続部、固定の状態、バッグ内に排液が流れ込んでいるかも確認します。

3.排液バッグを交換する。:排液は10 mL/時と少量で、バッグが満杯になっている、破損しているなど、交換が必要だと示す情報は問題文にありません。バッグ交換は閉鎖された回路を開放するため感染の機会にもなり、必要なとき以外に行う処置ではありません。仮にバッグの満杯が流出を妨げていたとしても、それは回路を確認して初めて分かることであり、確認より先に行う行動ではありません。

4.会陰部を消毒する。:濡れたガーゼの交換と創部の観察は必要ですが、排液があふれる原因が残っている限り、消毒してもすぐにまた濡れてしまいます。消毒は創部の清潔を保つためのケアであり、流出障害という原因への対処にはなりません。優先順位は、選択肢2でドレーンの状態を確認し、流出を回復させた後になります。

覚えるポイント

  • 腹会陰式直腸切断術(マイルズ手術)は下部直腸癌が対象で、肛門を含めて切除し、左下腹部にS状結腸の永久的単孔式ストーマを造設します。骨盤内の死腔に対して会陰部ドレーンを留置します。
  • ドレーン留置中に創のガーゼが濡れた、または排液が急に減ったときは、まず屈曲・ねじれ・圧迫(体の下敷き)・閉塞・接続外れ・抜けかけを、挿入部からバッグまでたどって確認します。
  • 体位変換・離床・移送の直後はドレーントラブルが起こりやすい時期です。操作後は必ず回路を確認し、排液バッグは挿入部より低い位置に保って逆流を防ぎます。
  • 術後排液は血性→淡血性→漿液性と薄くなり、量が減っていくのが通常の経過です。急に血性が濃くなる、量が増える、バイタルサインが変化する場合は術後出血を疑い、医師に報告します。
  • 「最も優先度が高い」を問われたら、原因に直接働きかけ、すぐにできて侵襲の少ない行動を選びます。ガーゼ交換や消毒のような「結果への対処」は、原因を確認した後に行います。
  • マイルズ術後は、会陰創感染のほか、骨盤内自律神経の損傷による排尿障害・性機能障害も頻出の合併症です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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