111AM058|第111回 看護師国家試験 過去問
新生児の出血性疾患で正しいのはどれか。
解答・解説を見る
正解: 2
正答
2.母乳栄養児は発症のリスクが高い。
この問題のポイント
「新生児の出血性疾患」とは、ビタミンKが不足して凝固因子が十分に働かなくなる新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症のことです。原因がビタミンK欠乏であると押さえておけば、発症時期(早発型・古典型・遅発型)、危険因子(母乳栄養など)、予防(ビタミンK2シロップ)、症状(消化管出血・頭蓋内出血)を順に判断できます。
解説
新生児がビタミンK欠乏に陥りやすい理由
ビタミンKは脂溶性ビタミンです。肝臓で作られる凝固因子のうち、第Ⅱ(プロトロンビン)・第Ⅶ・第Ⅸ・第Ⅹ因子が働ける形になるために必要です。不足すると、これらは機能をもたない前駆体(PIVKA-Ⅱなど)のまま血中に出るため、止血がうまくいかず出血します。新生児がビタミンK欠乏になりやすい理由は次のとおりです。
- 胎盤を通過するビタミンKが少なく、出生時の貯えがわずかである。
- 出生直後は腸内細菌叢が未確立で、腸内細菌によるビタミンK産生が乏しい。
- 肝臓が未熟で、凝固因子を合成する力そのものが低い。
- 生後早期は哺乳量が少なく、とくに母乳はビタミンKの含有量が少ない。
母乳栄養が危険因子になる理由
人工乳はビタミンKが強化されていますが、母乳のビタミンK含有量は人工乳より少なくなっています。さらに母乳栄養児の腸内では、ビタミンKをほとんど作らないビフィズス菌が優位になります。このため母乳栄養児は発症の危険が高く、とくに遅発型の多くは母乳栄養児にみられます。ただし、母乳育児をやめる必要はありません。ビタミンKを補充したうえで母乳育児を続けることが基本です。
発症時期による分類
- 早発型:生後24時間以内に起こります。母体が抗てんかん薬(フェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピンなど)、抗結核薬(リファンピシン、イソニアジド)、ワルファリンを服用していた場合に起こりやすくなります。
- 古典型:生後2〜7日ごろに起こります。吐血・下血などの消化管出血が中心で、従来「新生児メレナ」と呼ばれてきました。臍出血や皮下出血もみられます。
- 遅発型:生後2週以降、おおむね生後2か月ごろまでに起こります。頭蓋内出血が多く、予後不良や神経学的後遺症につながります。危険因子は、母乳栄養のほか、胆道閉鎖症などの胆汁うっ滞性疾患(脂溶性ビタミンの吸収障害)、慢性の下痢、抗菌薬の投与などです。
予防と治療
日本では、ビタミンK2シロップを経口投与する方法が広く行われてきました。投与時期は、哺乳が確立した出生後、生後1週または産科退院時、1か月健診時の3回です。3回法でも遅発型を完全には防げないため、生後3か月まで週1回の内服を続ける方法(3か月法)も推奨されています。経口投与が難しい早産児などでは静脈内投与を行います。発症した場合は、ビタミンKの静脈内投与を行い、重症例では新鮮凍結血漿も使います。
症状・検査と鑑別
- 早期に現れる所見:吐血、下血(黒色便)、臍断端からの出血、採血・注射部位の止血困難、紫斑などです。
- 遅発型の頭蓋内出血を疑う所見:哺乳不良、不機嫌、嘔吐、けいれん、大泉門膨隆、顔色不良(貧血)などです。
- 検査:PT・APTTが延長し、ヘパプラスチンテストは低値、PIVKA-Ⅱは陽性になります。血小板数は正常です。
- 鑑別:分娩時に飲み込んだ母体血による吐血・下血は仮性メレナと呼ばれ、治療は不要です。アプト試験(アルカリ変性試験)で見分けます。胎児ヘモグロビンはアルカリに抵抗性で赤色を保ち、母体血は褐色に変わります。
臨床では、看護師がビタミンK2シロップの投与時期を確認し、退院後や1か月健診での内服を保護者に説明します。あわせて、黒色便、出血斑、哺乳不良、不機嫌といった受診の目安を伝えることが大切です。
選択肢の確認
1.生後48時間以内には発症しない。:生後24時間以内に発症する早発型があり、古典型も生後2日目ごろから起こるため、生後48時間以内にも発症します。とくに母体が抗てんかん薬、抗結核薬、ワルファリンを使用していた場合は、出生直後から出血徴候を観察する必要があります。「生後2〜7日の古典型」だけを覚えていると選んでしまいやすい選択肢です。
2.母乳栄養児は発症のリスクが高い。:正答。母乳はビタミンKが強化された人工乳より含有量が少なく、母乳栄養児の腸内はビタミンKをほとんど産生しない菌が優位になります。そのため母乳栄養児は発症の危険が高く、とくに遅発型(頭蓋内出血)の主要な危険因子です。対応はビタミンK2シロップによる補充であり、母乳育児の中止ではありません。
3.予防としてカルシウムを内服する。:この疾患の原因はカルシウムではなくビタミンKの不足であり、予防にはビタミンK2シロップを内服させます。カルシウムは第Ⅳ因子として凝固反応に関わるため、紛らわしく感じるかもしれません。しかし、カルシウムの補充が問題になるのは新生児低カルシウム血症(テタニー、けいれん)などです。カルシウムの吸収を助けるビタミンD(不足でくる病)と、凝固に必要なビタミンKを区別して覚えましょう。
4.早期に現われる所見に蕁麻疹 urticaria がある。:蕁麻疹は、Ⅰ型(即時型)アレルギーなどで起こる、かゆみを伴う一過性の膨疹です。凝固因子の不足による出血とは機序が異なります。早期に現れるのは、吐血・下血、臍出血、穿刺部位の止血困難、紫斑などです。皮膚所見であれば、圧迫しても消えない点状出血・紫斑が出血を示し、圧迫で消える紅斑・膨疹とは区別します。
覚えるポイント
- 新生児の出血性疾患の原因はビタミンK欠乏で、第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子が働かなくなります。PT延長・PIVKA-Ⅱ陽性で、血小板数は正常です。
- 分類は、早発型(24時間以内、母体の抗てんかん薬・抗結核薬・ワルファリン)、古典型(生後2〜7日、消化管出血=新生児メレナ)、遅発型(生後2週〜2か月ごろ、頭蓋内出血)の3つです。
- 危険因子は、母乳栄養、胆道閉鎖症などの胆汁うっ滞、抗菌薬投与、慢性の下痢です。母乳育児は続けてかまいません。
- 予防はビタミンK2シロップの内服です。出生後・生後1週(退院時)・1か月健診の3回法のほか、生後3か月まで週1回投与する方法もあります。
- 仮性メレナ(母体血の嚥下)はアプト試験で鑑別します。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する([email protected])までお知らせください。確認して修正します。