112AM064|第112回 看護師国家試験 過去問

新生児の呼吸窮迫症候群〈RDS〉 respiratory distress syndrome で正しいのはどれか。

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正解: 4

正答

4.肺サーファクタントの欠乏が原因で生じる。

この問題のポイント

新生児の呼吸窮迫症候群〈RDS〉について、原因・発症しやすい児・発症時期・症状を問う知識問題です。「肺サーファクタントが足りないため肺胞がつぶれる」という病態を軸にすると、3つのことが導けます。在胎週数の短い早産児に多いこと、出生直後から発症すること、呼吸数が増えることです。過期産児に多い胎便吸引症候群や、呼吸が止まる未熟児無呼吸発作と混同しないことも大切です。

解説

病態:肺サーファクタントと肺胞の虚脱

肺サーファクタントは、Ⅱ型肺胞上皮細胞がつくる界面活性物質です。リン脂質(主成分はレシチン)が中心で、肺胞の内面の表面張力を下げます。表面張力が高いままだと、息を吐き終えたときに小さな肺胞ほどつぶれやすくなります。

サーファクタントが不足すると、肺胞は呼気のたびに虚脱して無気肺になります。吸気のたびに大きな力で肺胞を開き直す必要があるため、呼吸の仕事量が増え、ガス交換も障害されて低酸素血症になります。これがRDSです。肺胞に硝子膜ができることから、硝子膜症とも呼ばれます。

発症しやすい児

サーファクタントの産生は妊娠後半に増え、在胎34週前後でおおむね十分な量になります。そのため、それより前に生まれた早産児ほど発症しやすく、在胎週数が短いほど頻度も重症度も高くなります。

早産以外の危険因子には次のものがあります。

  • 糖尿病の母親から生まれた児(胎児の高インスリン血症がサーファクタントの合成を抑える)
  • 男児
  • 陣痛が始まる前の帝王切開
  • 新生児仮死

胎児の肺の成熟度は、羊水中のレシチン/スフィンゴミエリン比(L/S比)で評価できます。出生後は、胃液を使ったマイクロバブルテストで判定する方法があります。

症状と経過

出生直後から数時間以内に発症し、その後しばらく進行性に悪化します。主な症状は次のとおりです。

  • 多呼吸(1分間に60回以上):1回の換気量が少ない分を回数で補います。
  • 呼気性呻吟:声門を狭めて息を吐くことで肺胞内の圧を保ち、虚脱を防ごうとする代償反応です。
  • 陥没呼吸(肋間、胸骨下、剣状突起部)と鼻翼呼吸
  • チアノーゼ

呼吸困難の程度はシルバーマンスコアで評価します。5項目を各0〜2点で採点し、合計点が高いほど重症です。胸部エックス線では、網状顆粒状陰影と気管支透亮像がみられ、重症になると肺野全体が白く見えます。

治療・予防と看護

治療の中心は、人工肺サーファクタントの気管内投与です。あわせて、持続的気道陽圧(CPAP)や人工呼吸器による呼吸管理と酸素投与を行います。妊娠34週未満で早産が予測される場合は、分娩前に母体へ副腎皮質ステロイドを投与し、胎児の肺の成熟を促します。

看護では、次の点が重要です。

  • 呼吸数、呻吟、陥没呼吸、SpO2、皮膚色を継続して観察する
  • 保温に努める(低体温は酸素消費量を増やし、呼吸状態を悪化させる)
  • 酸素の過剰投与を避ける(未熟児網膜症の危険がある)
  • 刺激の少ない環境を整える

選択肢の確認

1.呼吸数が減少する。:RDSでは低酸素を補うために呼吸数が増え、1分間60回以上の多呼吸になるため、この記述は誤りです。新生児の正常な呼吸数はおおむね40〜50回/分です。呼吸数の減少や呼吸の停止が問題になるのは未熟児無呼吸発作です(20秒以上の呼吸停止、または徐脈やチアノーゼを伴う呼吸停止)。RDSの特徴的な症状ではありません。

2.過期産児に発症しやすい。:RDSはサーファクタントが十分になる前に生まれた早産児に多い疾患です。肺が成熟している過期産児は発症しにくいため、この記述は誤りです。過期産児に多い呼吸障害は胎便吸引症候群です。胎児機能不全によって子宮内で胎便が排泄されて羊水が混濁し、その羊水を吸い込むことで起こります。「早産児ならRDS、過期産児なら胎便吸引症候群」と対にして覚えましょう。

3.生後24時間ころから発症する。:RDSの症状は出生直後から数時間以内に現れるため、「生後24時間ころから」では発症時期が遅すぎます。症状はしばらく悪化が続いたのち、児自身のサーファクタント産生が増えてくると改善に向かいます。なお「生後24時間」という区切りは、新生児黄疸の問題で出てくることが多い基準です。24時間以内に現れる黄疸は早発黄疸として病的とみなします。この基準と混同しないようにしましょう。

4.肺サーファクタントの欠乏が原因で生じる。:正答。Ⅱ型肺胞上皮細胞がつくる肺サーファクタントが不足すると、肺胞の表面張力を下げられず、呼気のたびに肺胞が虚脱します。その結果、ガス交換が障害されることがRDSの本態です。治療として人工肺サーファクタントを気管内に投与するのも、この原因を補うためです。

覚えるポイント

  • RDSは、肺サーファクタント(Ⅱ型肺胞上皮細胞が産生し、肺胞の表面張力を下げる物質)の欠乏によって肺胞が虚脱する疾患です。別名は硝子膜症です。
  • 発症しやすいのは早産児(在胎34週未満)、糖尿病の母親から生まれた児、男児、陣痛前の帝王切開で生まれた児です。予防として、分娩前に母体へ副腎皮質ステロイドを投与します。
  • 出生直後から数時間以内に発症します。症状は多呼吸(60回/分以上)、呼気性呻吟、陥没呼吸、鼻翼呼吸、チアノーゼです。重症度はシルバーマンスコアで評価します。
  • 胸部エックス線では網状顆粒状陰影と気管支透亮像がみられます。治療は人工肺サーファクタントの気管内投与と、CPAP・人工呼吸による呼吸管理です。
  • 鑑別のポイントは次のとおりです。過期産児で羊水混濁があれば胎便吸引症候群、正期産の帝王切開児で軽症かつ数日で改善すれば新生児一過性多呼吸、呼吸停止を繰り返せば未熟児無呼吸発作を考えます。

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