112AM065|第112回 看護師国家試験 過去問

小児期から青年期に発症し、運動性チック、音声チック及び汚言の乱用を伴うのはどれか。

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正解: 2

正答

2.Tourette〈トゥレット〉障害 Touretteʼs disorder

この問題のポイント

問題文にある「運動性チック」「音声チック」「汚言」という症状の組み合わせから、疾患名を答える問題です。チックを主症状とするのはチック症群です。そのうち、運動性チックと音声チックの両方が長く続くものをトゥレット障害といいます。併存しやすいADHDや、小児期の発作性の症状と混同しやすいてんかん症候群との違いも押さえておきましょう。

解説

問題文の手がかりは3つです。「小児期から青年期に発症」は、発達期に始まる神経発達症の範囲であることを示します。「運動性チック」と「音声チック」の両方がそろっていることが次の手がかりで、さらに「汚言」はトゥレット障害を象徴する症状として知られています。この3点がそろえば、トゥレット障害を選べます。

チックの性質

チックは、突発的で速く、繰り返し起こる、リズムのない運動または発声です。本人が意図して行うものではありません。ただし短時間なら意識して抑えることができます。多くの場合、チックが出る直前に「むずむずする」「出さずにいられない」という感覚(前駆衝動)があります。

  • 運動性チック:単純なものは、まばたき、顔しかめ、首振り、肩すくめなどです。複雑なものには、跳びはねる、物に触る、他人の動作をまねる(反響動作)、卑猥な動作をする(汚行)などがあります。
  • 音声チック:単純なものは、咳払い、鼻を鳴らす、うなる、短く叫ぶなどです。複雑なものには、単語や句を言う、他人の言葉を繰り返す(反響言語)、自分の言葉を繰り返す(同語反復)、卑猥な言葉や罵りの言葉を発する(汚言、コプロラリア)などがあります。

チックは緊張・不安、疲労、興奮で増えます。反対に、好きなことに集中しているときや睡眠中には減ります。症状の強さには波があり、出る部位や種類も時期によって移り変わります。

チック症群の分類とトゥレット障害

DSM-5では、チック症群はADHDや自閉スペクトラム症と同じ「神経発達症群」に分類されています。いずれも18歳未満での発症が要件で、持続期間とチックの種類によって次の3つに分けられます。

  • 暫定的チック症:運動性・音声チックのどちらか、または両方があり、持続が1年未満のもの
  • 持続性(慢性)運動または音声チック症:運動性チックと音声チックのうち、どちらか一方だけが1年以上続くもの
  • トゥレット障害:多彩な運動性チックと1つ以上の音声チックがあり、初発から1年以上続くもの(両者が同時期に出ている必要はありません)

トゥレット障害は男児に多い疾患です。多くは幼児期後半から学童期に、まばたきなどの単純な運動性チックで始まり、のちに音声チックが加わります。思春期ごろに最も重くなり、青年期から成人期にかけて軽快することが多いとされます。

汚言はよく知られた症状ですが、実際に出るのは一部の患者だけで、診断に必須ではありません。ADHDや強迫症の併存が多く、学業や対人関係の困難はチックそのものより併存症によることも少なくありません。

看護・支援の視点

チックは本人の意思や性格、しつけの問題ではありません。「やめなさい」と叱ったり、いちいち指摘したりすると緊張が高まり、かえってチックが増えることがあります。汚言も本人が言おうとして言っているのではないため、道徳的に責めないことが大切です。

支援の中心は、次のような環境づくりです。

  • 家族や学校にチックの性質を説明する
  • からかいやいじめを防ぐ
  • 過度な緊張や疲労を避けて、自尊心を守る

治療は心理教育と環境調整が基本です。生活への支障が大きい場合には、行動療法や抗精神病薬などの薬物療法を検討します。なお、トゥレット症候群は発達障害者支援法の対象となる発達障害にも含まれています。

選択肢の確認

1.Down〈ダウン〉症候群 Downʼs syndrome:21番染色体が1本多い21トリソミーによる染色体異常症です。出生時から特徴的な顔貌(眼瞼裂斜上、内眼角贅皮、鼻根部の平坦など)、筋緊張低下、知的障害がみられます。先天性心疾患(房室中隔欠損〈心内膜床欠損〉など)、十二指腸閉鎖、甲状腺機能低下症、白血病、環軸椎不安定性などを合併しやすい疾患です。先天的な疾患なので「小児期から青年期に発症」には当てはまらず、チックや汚言を特徴とするものでもありません。母親の出産年齢が高いほど頻度が上がることも、あわせて問われやすい知識です。

2.Tourette〈トゥレット〉障害 Touretteʼs disorder:正答。18歳未満で発症し、多彩な運動性チックと1つ以上の音声チックが、初発から1年以上続くチック症です。一部の患者には汚言や反響言語などの複雑音声チックがみられ、問題文の3つの条件すべてに当てはまります。

3.注意欠如・多動性障害〈ADHD〉 attention-deficit/hyperactivity disorder:不注意と多動性・衝動性を中核症状とする神経発達症です。DSM-5では、症状のいくつかが12歳になる前からあり、家庭と学校など2つ以上の場面でみられることが診断の要件です。トゥレット障害との併存は多いものの、チックや汚言はADHDの診断基準に含まれる症状ではありません。ADHDの衝動的な発言は、前駆衝動を伴って不随意に出る汚言とは性質が異なる点にも注意しましょう。治療は環境調整、ペアレントトレーニング、薬物療法(メチルフェニデート徐放剤、アトモキセチンなど)が中心です。

4.Lennox-Gastaut〈レノックス・ガストー〉症候群 Lennox-Gastaut syndrome:幼児期を中心に発症する難治性のてんかん症候群です。強直発作(特に睡眠中)、非定型欠神発作、脱力発作など複数の発作型があり、脳波では遅棘徐波複合がみられ、知的障害を伴うことが特徴です。West症候群から移行する例も少なくありません。看護では、転倒発作による頭部外傷を防ぐための保護帽の着用が重要になります。チックはてんかん発作と違い、意識が保たれ、短時間なら抑えられ、前駆衝動を伴う点で区別できます。

覚えるポイント

  • チックは、突発的・急速・反復的でリズムのない運動や発声です。前駆衝動があり、短時間なら抑えられます。緊張・疲労・興奮で増え、集中しているときや睡眠中に減ります。
  • トゥレット障害は、多彩な運動性チックと1つ以上の音声チックが初発から1年以上続き、18歳未満で発症するものです。一方だけが1年以上なら持続性(慢性)運動または音声チック症、1年未満なら暫定的チック症です。
  • 汚言(コプロラリア)はトゥレット障害を象徴する症状ですが、出るのは一部の患者だけで、診断に必須ではありません。併存症としてはADHDと強迫症が代表的です。
  • 支援は「叱らない・注目しすぎない・周囲に説明する」が基本です。チックは本人の意思や育て方の問題ではありません。
  • 鑑別の整理:Down症候群は21トリソミー(心内膜床欠損、十二指腸閉鎖、白血病、環軸椎不安定性)、ADHDは不注意・多動性・衝動性(12歳前から)です。Lennox-Gastaut症候群は幼児期の難治性てんかん(強直・非定型欠神・脱力発作、遅棘徐波複合)、West症候群は乳児期のてんかん性スパズムと脳波のヒプスアリスミアが特徴です。

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