111AM077|第111回 看護師国家試験 過去問

脳の外側面を左右から見た模式図を示す。右利きの健常成人の Broca〈ブローカ〉の運動性言語中枢はどれか。

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正解: 4

正答

4.④

この問題のポイント

大脳の機能局在のうち、運動性言語中枢(Broca〈ブローカ〉野)の位置を、左右の大脳半球を外側から描いた図の中で見つける問題です。最初の手がかりは「右利き」という条件です。右利きの人の言語優位半球は左なので、「左」と表示された図(図の右側)に候補を絞ります。次に、Broca野は前頭葉の下前頭回後部、Wernicke〈ウェルニッケ〉野は側頭葉の上側頭回後部という前後の位置関係を、図の向きと照らし合わせて判断します。

解説

図の向きの読み取り

図には2つの脳が向かい合うように描かれています。図の左下には「右」、右下には「左」と書かれています。つまり、左側の図は右半球を右側から、右側の図は左半球を左側から見たものです。どちらの図も小脳と脳幹が図の両端寄りの下にあり、側頭葉の先端が図の中央を向いています。したがって前頭葉は図の中央側、後頭葉は図の両端側にあります。外側溝(シルビウス裂)は側頭葉を前頭葉・頭頂葉から分ける溝で、側頭葉の上縁に沿って前から後ろへ走っています。

2つの図は鏡に映したように左右対称です。①と⑤はどちらも外側溝の後端付近(側頭葉後部)、②と④はどちらも側頭葉前部のすぐ上(前頭葉の下部)にある領域です。③は左右両方の前頭葉の最前部を同時に指しています。図の左側にあるからといって左半球だと思い込むと、②を選んでしまうので注意が必要です。

言語優位半球と2つの言語中枢

言語の中枢は左右どちらか一方の半球に偏って存在します。その半球を言語優位半球といいます。右利きの人のほとんど(9割以上)は左半球が優位で、左利きの人でも過半数は左半球が優位です。問題文の「右利きの健常成人」という条件は、言語中枢が典型的な位置、つまり左半球にある人を想定するためのものです。この時点で、右半球を示す①②は候補から外れます。

優位半球の中で、2つの言語中枢は前と後ろに分かれています。

  • Broca野(運動性言語中枢):前頭葉の下前頭回後部(弁蓋部・三角部)にあります。一次運動野(中心前回)のうち、顔面・舌・喉頭などの運動を担う下部のすぐ前方です。話したい内容を発話の運動として組み立てる、言葉を「出す」側の中枢です。「運動性」はこの意味であり、筋を直接動かす一次運動野そのものではありません。
  • Wernicke野(感覚性言語中枢):側頭葉の上側頭回後部、外側溝の後端付近にあります。一次聴覚野(横側頭回)の後方に隣接し、聞いた言葉の意味を理解する、言葉を「受け取る」側の中枢です。
  • 両者は弓状束という神経線維の束で結ばれています。この連絡が障害されると伝導失語が起こり、理解や自発話に比べて復唱がとくに難しくなります。

「話す中枢は運動野の近く(前方)、聞いて理解する中枢は聴覚野の近く(後方)」と、隣り合う領域と結びつけると位置を忘れにくくなります。左半球の図に残る③④⑤のうち、③は前頭葉の最前部、⑤は外側溝の後端付近の側頭葉後部です。前頭葉の下部で側頭葉前部のすぐ上にある④が下前頭回後部、すなわちBroca野です。

失語症の違いと看護への生かし方

Broca野とWernicke野は、どちらも中大脳動脈から血液を受ける領域にあります。そのため、左中大脳動脈の閉塞による脳梗塞では失語と右片麻痺が起こりやすくなります。一方、右中大脳動脈の閉塞では左片麻痺と左半側空間無視が起こりやすくなります。

  • Broca失語(運動性失語):言葉の理解は比較的保たれます。一方で発話は非流暢で力を要し、助詞の抜けた電文体(単語を並べたような話し方)になりやすく、復唱も障害されます。本人が障害を自覚していることが多く、もどかしさを感じやすい状態です。運動野に近いため、右片麻痺を伴いやすいのも特徴です。
  • Wernicke失語(感覚性失語):発話は流暢ですが、言い誤り(錯語)が多く、意味の通じない話になることがあります。理解と復唱が強く障害され、本人は障害を自覚していないことが多いです。

失語症は言語機能そのものの障害で、話す・聞く・読む・書くのいずれにも影響します。構音障害は発声・発語器官の運動の障害で、理解や読み書きは保たれるため、失語症とは区別します。

看護の場面での対応は次のとおりです。

  • 運動性失語の人には、「はい」「いいえ」やうなずきで答えられる閉じた質問を使い、急がせずに待ちます。
  • 感覚性失語の人には、短い文でゆっくり話し、身振り・絵・実物などを添えて、理解できたかを確かめます。
  • 聴力の障害ではないので、大きな声で話しても理解は改善しません。
  • 五十音表は文字を選ぶときに言語機能を使うため、失語症では役立たないことが多いです。

選択肢の確認

1.①:右半球(図の左側)の外側溝の後端付近、上側頭回後部に示された領域で、左半球のWernicke野と左右対称の位置にあたります。前頭葉ではなく側頭葉にあるので、Broca野の位置とは異なります。しかも右利きの健常成人では、右半球は言語の優位半球ではありません。右半球の頭頂葉から側頭葉後部にかけての障害では、失語よりも左半側空間無視などが起こりやすくなります。

2.②:右半球(図の左側)の前頭葉下部で、側頭葉前部のすぐ上に示された領域であり、Broca野と左右対称の位置(右の下前頭回後部)にあたります。脳回としてはBroca野と同じ場所ですが、右利きの健常成人の言語優位半球は左なので当てはまりません。図の左側に描かれているため、左半球と取り違えやすい選択肢です。言語優位半球が右にある一部の人(左利きの人の一部など)であれば、ここが運動性言語中枢になります。

3.③:左右両方の前頭葉の最前部(前頭極の周辺)を同時に示しており、前頭前野(前頭連合野)にあたります。前頭前野は思考・判断・計画・意欲や、感情・行動の抑制などを担います。障害されると、人格の変化、衝動を抑えられない脱抑制、意欲の低下、物事を段取りよく進められない遂行機能障害などが生じます。言語中枢は下前頭回後部と上側頭回後部にあり、しかも片側の半球に偏って存在します。両側の前頭葉前端を示すこの選択肢は当てはまりません。

4.④:正答。左半球(図の右側)の前頭葉下部で、側頭葉前部のすぐ上に示された小さな領域であり、下前頭回後部にあるBroca野です。右利きの健常成人の言語優位半球である左半球にあります。中心前回下部の顔面・口腔・喉頭の運動野のすぐ前方に位置し、発話の運動を組み立てる運動性言語中枢として働きます。

5.⑤:左半球(図の右側)の外側溝の後端付近、上側頭回後部に示された領域で、Wernicke〈ウェルニッケ〉の感覚性言語中枢にあたります。優位半球にある言語中枢ですが、担っているのは聞いた言葉の理解です。発話を組み立てる運動性言語中枢ではありません。障害されると、流暢に話せても錯語が多く理解が障害される感覚性失語になります。

覚えるポイント

  • 右利きの人の言語優位半球はほとんど(9割以上)が左です。左利きの人でも過半数は左半球が優位で、「左利きなら右半球優位」とは限りません。
  • Broca野(運動性言語中枢)は前頭葉の下前頭回後部にあり、外側溝前部の上、中心前回下部の前方です。Wernicke野(感覚性言語中枢)は側頭葉の上側頭回後部にあり、外側溝の後端付近、聴覚野の後方です。両者は弓状束で結ばれています。
  • 運動性失語は、発話が非流暢で力を要し、理解は比較的保たれ、右片麻痺を伴いやすいです。感覚性失語は、流暢でも錯語が多く、理解が障害され、本人の自覚に乏しいことが多いです。
  • 失語症の人には、閉じた質問、短い文、ゆっくりした話し方、身振りや絵を用います。大声は無効で、五十音表は役立たないことが多いです。言語機能が保たれる構音障害とは対応が異なります。
  • 脳の図は「右」「左」の表示と、小脳・側頭葉の向きで前後を確かめます。あわせて、一次運動野は中心前回、体性感覚野は中心後回、視覚野は後頭葉、聴覚野は側頭葉(横側頭回)にあることも覚えます。

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