111AM076|第111回 看護師国家試験 過去問

日本の政府開発援助〈ODA〉の実施機関はどれか。

解答・解説を見る

正解: 2

正答

2.国際協力機構〈JICA〉

この問題のポイント

日本の政府開発援助〈ODA〉を担う機関を、国際機関や国際的な人道機関と区別できるかを問う問題です。手がかりは「日本の」と「実施機関」の2語です。日本の機関であり、かつ政策の立案ではなく事業の実施を担うものを選びます。WHOとUNDPは国際連合の機関、ICRCはスイスのジュネーブに本部を置く中立の人道機関で、いずれも日本の機関ではありません。

解説

政府開発援助〈ODA〉とは

ODAは、政府やその実施機関が、開発途上国の経済・社会の発展や福祉の向上を主な目的として行う資金や技術の協力です。国際的な定義は、経済協力開発機構〈OECD〉の開発援助委員会〈DAC〉が定めています。日本の開発協力の基本方針は、閣議決定される開発協力大綱で示されます。出題当時は2015年に決定された大綱が有効で、現在は2023年に改定されたものが使われています。

ODAは、援助の経路によって二国間援助と多国間援助に分かれます。二国間援助は日本が相手国に直接行う援助で、多国間援助は国際機関への出資や拠出を通じて行う援助です。WHO、UNDP、国連児童基金〈UNICEF〉などへの拠出は多国間援助にあたります。二国間援助には、次の3つの手法があります。

  • 技術協力:日本の知識・技術・経験を活かす協力です。専門家の派遣、途上国からの研修員の受入れ、機材の供与などを通じて、途上国の開発を担う人材の育成や制度づくりを支援します。
  • 無償資金協力:返済の義務を課さずに資金を供与します。病院や学校などの施設、機材の整備などに活用されます。
  • 有償資金協力:円借款などで、低金利・長期返済という緩やかな条件で資金を貸し付けます。

立案は外務省、実施はJICA

日本のODAは、外務省が中心となって政策を企画・立案し、**独立行政法人国際協力機構〈JICA〉**が実施します。JICAは2008年に、国際協力銀行が担っていた円借款などの業務を引き継ぎました。あわせて、外務省が担っていた無償資金協力の実施業務の一部も引き継いでいます。これにより、技術協力・有償資金協力・無償資金協力の3つの手法を一元的に実施する機関となりました。ただし、外交上の必要から外務省が自ら実施する無償資金協力も一部あります。

JICAは、これらの援助に加えて次の事業も担っています。

  • JICA海外協力隊(青年海外協力隊など)の派遣。看護師・保健師・助産師も職種として派遣されています。
  • 国際緊急援助隊の派遣。海外で大規模な災害が起きたときに、被災国の政府などの要請を受けて救助チームや医療チームなどを派遣します。JICAが事務局として実務を担っており、医療チームでは看護師も活動します。

保健医療分野のODAでは、母子保健(母子健康手帳の普及支援など)、感染症対策、保健システムの強化、看護人材の育成などが行われてきました。技術協力の専門家として看護職が派遣されることもあります。国際看護の問題では、担い手ごとの役割を次のように整理しておくと対応しやすくなります。

  • 日本政府による援助の実施:JICA
  • 国際的な基準づくりや各国への技術支援:WHOなどの国連機関
  • 武力紛争下での中立的な人道支援:ICRC

正答に至る判断

まず「日本の」という条件から、国際連合の機関であるWHOとUNDP、スイスの民間団体であるICRCが外れます。次に「実施機関」という語から、政策を企画・立案する外務省ではなく、事業を実際に行うJICAが答えになります。多国間援助で日本の資金を受け取って活動する国際機関と、日本の援助を実施する機関を区別することが、この問題の要点です。

選択肢の確認

1.世界保健機関〈WHO〉:1948年に設立された、保健分野を担う国際連合の専門機関で、本部はジュネーブにあります。すべての人々が可能な最高の健康水準に到達することを目的とし、感染症対策、国際保健規則〈IHR〉の運用、国際疾病分類〈ICD〉などの国際基準の策定を行っています。日本は加盟国として分担金や任意拠出金を出しており、こうした拠出は多国間援助としてODAに計上されます。しかしWHOは日本の拠出を受けて活動する側の国際機関であり、日本のODAの実施機関ではありません。なお、日本はWHOの西太平洋地域事務局(マニラ)の管轄に属します。

2.国際協力機構〈JICA〉:正答。外務省が所管する独立行政法人です。技術協力・有償資金協力・無償資金協力という二国間援助の3つの手法を一元的に実施する、日本のODAの実施機関です。JICA海外協力隊や国際緊急援助隊の派遣も担っています。

3.国連開発計画〈UNDP〉:国際連合総会の下に置かれた開発支援の中心的な機関で、本部はニューヨークにあります。開発途上国の貧困削減や持続可能な開発目標〈SDGs〉の達成を支援しています。また、平均寿命・教育・所得の3つの側面から算出する人間開発指数〈HDI〉を掲載した『人間開発報告書』を発行しています。日本はUNDPに資金を拠出する側であり、UNDP自体は日本のODAを実施する機関ではありません。名称に「開発」が含まれるため政府開発援助と結びつけやすいので、注意が必要です。

4.赤十字国際委員会〈ICRC〉:1863年にアンリ・デュナンらがジュネーブで設立した、中立・独立の人道機関です。スイス民法に基づく民間の団体であり、どの国の政府機関でもありません。ジュネーブ条約に基づいて、負傷兵、捕虜、文民など武力紛争の犠牲者の保護と支援を行います。国際赤十字・赤新月運動は、ICRC、国際赤十字・赤新月社連盟〈IFRC〉、各国の赤十字社・赤新月社(日本赤十字社など)で構成されています。いずれも日本のODAの実施機関ではありません。

覚えるポイント

  • 日本のODAは、外務省が企画・立案し、JICAが実施します。JICAは、技術協力(専門家派遣・研修員受入れ・機材供与など)、有償資金協力(円借款など)、無償資金協力を一元的に実施します。
  • ODAは二国間援助と多国間援助(国際機関への出資・拠出)に分かれます。WHOやUNDPへの拠出は多国間援助ですが、これらの機関自体は日本の機関ではありません。
  • JICAは、JICA海外協力隊(青年海外協力隊など)と国際緊急援助隊(医療チームなど)の派遣も担っています。
  • 国連機関の役割:WHOは保健(ICD、IHR)、UNDPは開発(人間開発指数)、UNICEFは子ども、国連難民高等弁務官事務所〈UNHCR〉は難民、国連人口基金〈UNFPA〉は人口とリプロダクティブヘルスを担当します。
  • ICRCは、ジュネーブ条約に基づいて武力紛争の犠牲者を保護する中立・独立の人道機関です。IFRCは各国の赤十字社・赤新月社の連合体で、主に災害時の国際救援の調整などを行います。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する([email protected])までお知らせください。確認して修正します。

関連問題

← 111AM075111AM077 →
学習アプリでこの問題を解く(記録・メモ・カード化)