111AM075|第111回 看護師国家試験 過去問
災害発生時に行う START 法によるトリアージで最初に判定を行う項目はどれか。
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正解: 4
正答
4.歩行
この問題のポイント
START法は、大規模災害などで多数の傷病者が出たときに、限られた医療資源で救える命を最大にするための一次トリアージの方法です。評価は「歩行→呼吸→循環→意識」の順に進めます。最初に「歩けるかどうか」で軽症者をまとめて分けることが判断の鍵です。平時の救命処置で最初に行う意識(反応)の確認と混同しないことが問われています。
解説
トリアージとSTART法の位置づけ
トリアージは、傷病者の重症度と緊急度に応じて、治療や搬送の優先順位を決めることです。災害時は傷病者の数が医療資源を上回ります。そのため、目の前の1人に最善を尽くす平時の医療とは考え方が異なり、「最大多数の傷病者に最善を尽くす」ことが目的になります。
現場ではまず、短時間で大まかに分ける一次トリアージとしてSTART法(Simple Triage And Rapid Treatment)を行います。救護所などでは、生理学的評価と解剖学的評価を加えた二次トリアージ(PAT法)で、より詳しく判定します。START法は1人あたりおおむね30秒程度での判定を目標にしています。医師でなくても実施できるよう、観察項目を少数に絞っているのが特徴です。
判定の流れ
- 歩行:自力で歩ける人は緑(区分III、保留群)とします。現場では「歩ける方はあちらへ移動してください」と呼びかけ、移動できた人をまとめて緑とします。
- 呼吸:歩けない人について、呼吸の有無を確認します。
- 呼吸がなければ気道を確保し、それでも呼吸がなければ黒(区分0、死亡群・救命困難群)とします。気道確保で呼吸が出現すれば赤(区分I、最優先治療群)です。
- 呼吸があれば呼吸数を数えます。わが国で一般に用いられる基準では、毎分9回以下または30回以上なら赤とし、10〜29回なら循環の評価に進みます。
- 循環:橈骨動脈が触れない場合、または毛細血管再充満時間(CRT)が2秒を超える場合は赤とします。
- 意識:「手を握ってください」などの簡単な指示に従えなければ赤、従えれば黄(区分II、待機的治療群)とします。
なぜ歩行が最初なのか
災害現場の傷病者の多くは、歩ける程度の軽症者です。最初に「歩けるか」を一斉に確かめれば、1人ずつ触れて観察しなくても大勢を一度に緑へ振り分けられます。その分、限られた人手を歩けない傷病者の評価に集中できます。
また、自力で歩けるということは、気道・呼吸・循環・意識がある程度保たれていることを間接的に示しています。こうして対象を絞ったうえで、生命に直結する順に、呼吸→循環→意識と評価していきます。
実践上の注意
- 処置は最小限にとどめる:START法の途中で行う処置は、気道確保や圧迫止血など、短時間でできる救命処置に限ります。気道確保でも呼吸が戻らない人に心肺蘇生を続けると、ほかの多くの傷病者の評価が止まってしまいます。そのため、黒と判定して次の傷病者へ進みます。
- トリアージは繰り返す:緑と判定された人の中にも、内臓損傷による出血などで時間とともに悪化する人がいます。状態の変化に応じて、トリアージを繰り返し行います。
- トリアージタッグの付け方:判定結果はトリアージタッグに記入します。判定した色が最下端に残るように下の部分を切り離し、原則として右手首に付けます。
選択肢の確認
1.意識:START法での意識の確認は、歩けない人に対して呼吸と循環を評価したあとに行う最後の項目で、簡単な指示に従えるかどうかで赤と黄を分けます。一次救命処置(BLS)では最初に反応(意識)を確認するため、その手順と取り違えやすい選択肢です。災害現場で1人ずつ声をかけて意識から評価していくと、多数の傷病者を短時間でふるい分けられません。
2.呼吸:呼吸は、歩けないと判断された人に対して最初に評価する項目であり、判定全体の最初の項目ではありません。呼吸の有無、気道確保への反応、呼吸数によって黒または赤を判定し、呼吸数が基準の範囲内であれば循環の評価に進みます。「生命維持に最も重要だから最初」と考えて選びやすい選択肢ですが、START法ではまず歩行で対象を絞り込みます。
3.循環:循環は、呼吸の評価のあとに続けて行う3番目の項目で、橈骨動脈の触知の有無や、CRTが2秒を超えるかどうかで判断します。成人の心肺蘇生では胸骨圧迫(循環)を早期に始めることが重視されるため、その知識と混同しやすい選択肢です。トリアージの判定順とは別のものとして整理しておきましょう。
4.歩行:正答。START法では最初に自力で歩けるかどうかを確認し、歩ける人を緑(区分III)としてまとめて振り分けます。これにより評価の対象が大きく絞り込まれ、歩けない人の呼吸・循環・意識の評価に人手を集中できます。
覚えるポイント
- START法は一次トリアージの方法で、判定の順序は「歩行→呼吸→循環→意識」です。1人約30秒での判定を目標にします。
- 歩行:歩ける人は緑(III、保留群)とします。緑でも悪化することがあるため、トリアージは繰り返し行います。
- 呼吸:呼吸がなければ気道確保を行い、それでも呼吸がなければ黒(0)、呼吸が出現すれば赤(I)です。呼吸数が毎分9回以下または30回以上なら赤です。
- 循環と意識:橈骨動脈が触れない、またはCRTが2秒を超えれば赤です。簡単な指示に従えなければ赤、従えれば黄(II)です。
- 色と区分:黒0(死亡群)、赤I(最優先治療群)、黄II(待機的治療群)、緑III(保留群)です。二次トリアージはPAT法で行います。
- トリアージ中の処置は気道確保と圧迫止血程度にとどめ、心肺蘇生は行いません。タッグは原則として右手首に付けます。
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