112PM120|第112回 看護師国家試験 過去問
次の文を読み118〜120の問いに答えよ。午前10時、A県内で大規模災害が発生した。A県内の救命救急センターに、家屋等の倒壊現場から救助された傷病者の受け入れ要請があり病院に搬送された。直ちにトリアージが行われた。搬送されてきたBさん(45歳、男性)には頻呼吸が認められ、胸部と背部の痛みを訴え、吸気時に胸郭が陥没し、呼気時には膨隆している。Cさんは直ちに入院となり、緊急で血液透析が開始されることになった。集中治療室のベッドサイドで血液透析が開始され、Cさんのバイタルサインは安定した。下肢の腫脹、感覚障害は持続している。Cさんは「家族は無事なのか」「また地震がきて病院が停電になったら、透析の器械は止まらないのか」と不安な表情で担当看護師に訴えた。Cさんの家族は避難所にいると連絡があったことを伝えると、Cさんは少し落ち着いた表情となった。担当看護師は、次々と搬送される傷病者の受け入れ準備をするよう、リーダー看護師に声をかけられた。この時点でのCさんへの対応で担当看護師が優先して連携するのはどれか。
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正解: 4
正答
4.臨床工学技士
この問題のポイント
災害で負傷し、緊急の血液透析を受けている患者の訴えのうち、この時点で何が未解決で、どの職種ならそれに専門的にこたえられるかを見極める問題です。鍵は「また地震がきて病院が停電になったら、透析の器械は止まらないのか」という訴えで、生命維持管理装置の安全に直結します。そのため、装置の操作と保守点検を担う臨床工学技士と連携し、確認と説明につなぐことが最優先です。管理栄養士、社会福祉士、理学療法士も急性期から関わる職種ですが、この時点で残っている訴えにこたえる職種ではありません。
解説
場面の整理
連問の前半に出てくるBさんには、頻呼吸と胸部・背部痛があります。さらに、吸気時に胸郭が陥没し、呼気時に膨隆する奇異呼吸を示しています。これはフレイルチェスト(動揺胸郭)を示す所見です。本問で問われているのは、別の傷病者であるCさんへの対応です。
Cさんも同じ災害で搬送された傷病者です。直ちに入院となって緊急の血液透析が必要になり、下肢の腫脹と感覚障害も続いています。倒壊現場から救助されたという状況とこの経過から、**クラッシュ症候群(挫滅症候群)**が考えられます。これは、長時間の圧迫から解放されたあとに起こる病態です。圧迫されていた筋肉が壊死し、圧迫が解除されて血流が戻ると、カリウムやミオグロビンなどが一気に全身へ流れ込みます。その結果、次のような状態が起こります。
- 高カリウム血症による致死性不整脈
- ミオグロビンによる急性腎障害
- 損傷した筋肉へ体液が移動することによる循環血液量減少性ショック
治療は大量輸液と高カリウム血症の是正が中心で、必要に応じて血液透析を行います。Cさんは透析開始後にバイタルサインが安定しました。しかし、高カリウム血症や腎障害の管理を透析に頼っている段階なので、治療の中断は生命に関わります。
訴えを分けて考える
Cさんの訴えは2つあります。
- 家族の安否:家族が避難所にいるという連絡を伝えたことで、少し落ち着いた表情になっています。当面は一区切りついた訴えです。
- 停電で透析装置が止まらないか:まだ誰もこたえていない訴えです。
2つ目の不安は現実的なものです。大規模地震のあとは余震が続き、停電も起こり得ます。透析中に血液ポンプが止まると、体外循環の回路内で血液が停滞して凝固するおそれがあります。返血できなければ、回路内の血液を失うことになります。治療が中断すれば、高カリウム血症の是正もできなくなります。つまり、この訴えは気持ちの問題であるだけでなく、生命と安全に関わる問題です。
このような訴えに、看護師が根拠なく「大丈夫ですよ」と保証するのは適切ではありません。確認すべきことは、次のような点です。
- 装置が非常用電源に接続されているか(非常用電源でも、発電機に切り替わるまでの間は一時的に電源が途切れることがあります)
- 停電時に装置がどう動作するか(バッテリーで運転を続けられるかは機種によって異なります)
- 停電時に手動で返血する手順と、その準備が整っているか
これらを専門職が確認し、Cさんにわかる言葉で説明することが、不安の軽減と安全の確保の両方につながります。
連携先を選ぶ考え方
臨床工学技士は、臨床工学技士法に基づく国家資格の専門職です。医師の指示の下に生命維持管理装置の操作と保守点検を行います。生命維持管理装置とは、人の呼吸、循環または代謝の機能の一部を代替・補助する装置のことです。人工呼吸器、血液浄化装置(血液透析装置)、人工心肺、補助循環装置などが含まれます。停電時の装置の動作や緊急時の対応を最も具体的に確認・説明できるのは、この職種です。
さらに、担当看護師はリーダー看護師から、次の傷病者の受け入れ準備を指示されています。災害時は人員が限られます。装置に関する確認と説明を臨床工学技士につなげば、Cさんの安全と安心を確保したまま、看護師は次の業務に移ることができます。説明のあとにCさんが納得できたかを確かめることと、下肢の腫脹・感覚障害の経過を観察し続けることは、引き続き看護師の役割です。
なお、本問が問うのは不安への対応です。実際に装置が止まるなどのトラブルが起きたときは、まず患者の状態を確認して安全を確保します。そのうえで、並行して医師と臨床工学技士に連絡するのが原則です。
一方、管理栄養士、理学療法士、社会福祉士も、集中治療室に入院した段階から関わる職種です。集中治療を受ける重症患者でも、早期から栄養療法や離床・リハビリテーションを行い、退院支援も入院早期から始めるのが標準的な考え方です。出題当時の診療報酬にも、集中治療室での早期離床・リハビリテーションや早期の栄養介入を評価する加算が設けられていました。
本問でこれらの職種が選ばれない理由は、急性期だからではありません。この時点でCさんに残っている訴え、つまり停電時に透析装置が止まらないかという安全に関わる不安に、専門的にこたえる職種ではないからです。連携先の優先順位は、そのとき未解決で、生命と安全に直結するニーズが何かによって決まります。
選択肢の確認
1.管理栄養士:急性腎障害で透析を受ける患者では、病態に合わせたエネルギー量・たんぱく質量や、カリウム・水分・塩分の調整が必要です。集中治療室でも早期から栄養療法に関わる職種です。しかし、Cさんがこの時点で訴えている未解決の不安は、停電で透析装置が止まらないかという装置の安全に関するものです。栄養管理はこの訴えにこたえるものではないため、この場面で優先して連携する相手にはなりません。
2.社会福祉士:病院では医療ソーシャルワーカーとして、経済的な問題や利用できる制度の相談、被災後の生活再建、家族との連絡調整などを担います。退院支援は入院早期から始めるのが原則です。被災して住まいを含む生活の課題を抱えている可能性がある患者には、早い段階からの関わりが重要です。ただ、家族の安否については避難所にいるという情報がすでに伝わり、Cさんは少し落ち着いています。残っている不安は透析装置の安全性に関するもので、この職種の専門領域ではありません。そのため、この時点で優先する連携先ではありません。
3.理学療法士:下肢の腫脹と感覚障害が続いているため、機能の評価や、関節拘縮・廃用症候群の予防、早期離床に向けた関わりが必要になる職種で、集中治療室でも早期から介入します。しかし、Cさんがこの時点で訴えているのは、停電時に透析装置が止まらないかという不安です。これはリハビリテーションの専門性でこたえられる内容ではないため、この場面で優先して連携する相手ではありません。
4.臨床工学技士:正答。血液透析装置を含む生命維持管理装置の操作と保守点検を担う専門職です。非常用電源への接続状況、停電時の装置の動作(バッテリーの有無など)、手動で返血する手順と準備を確認し、Cさんに具体的に説明できます。装置の安全確保と不安の軽減を同時に図れます。また、担当看護師が次の傷病者の受け入れに移らなければならない状況でも、Cさんへの対応を確実に専門職へつなぐことができます。
覚えるポイント
- 臨床工学技士は、医師の指示の下で生命維持管理装置(人工呼吸器、血液浄化装置、人工心肺、補助循環装置など)の操作と保守点検を行う職種です。装置の動作や停電時の対応に関する不安には、臨床工学技士と連携して確認・説明します。装置のトラブル時は、まず患者の状態を確認して安全を確保し(人工呼吸器が停止したら用手換気に切り替えるなど)、並行して医師と臨床工学技士に連絡します。
- 訴えが複数あるときは、すでに解決したものと未解決のものを分け、残っている訴えの中身を見極めます。根拠のない保証はせず、専門的にこたえられる職種による確認と説明につなぎます。
- 連携の優先順位は、その時点で未解決かつ生命・安全に直結するニーズにこたえられるかで決めます。管理栄養士(早期の栄養療法)、理学療法士(早期リハビリテーション・早期離床)、社会福祉士(入院早期からの退院支援)も急性期から関わる職種で、「急性期だから後回し」ではありません。
- クラッシュ症候群の特徴は、圧迫解除後の高カリウム血症(致死性不整脈)、ミオグロビンによる急性腎障害、循環血液量減少性ショックです。治療は大量輸液と高カリウム血症の是正が中心で、必要に応じて血液透析を行います。
- フレイルチェストは、隣り合う複数の肋骨がそれぞれ2か所以上で骨折し、胸壁の一部が周囲との連続性を失った状態です。吸気時に陥没し、呼気時に膨隆する奇異呼吸がみられます。
- 病院の非常用電源のコンセントは、一般に赤色で区別されています。生命維持管理装置は非常用電源に接続します。発電機に切り替わるまでの一時的な停電も想定して、停電時の装置の動作を確認しておきます。
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