111PM117|第111回 看護師国家試験 過去問

次の文を読み115〜117の問いに答えよ。午前9時頃、震度5強の地震が発生した。二次救急医療機関の救命救急病棟に勤務する看護師は、自身の身の安全を確保し、揺れが収まると病院の災害発生時のマニュアルに沿って行動を開始した。病棟には人工呼吸器を使用中の患者が1人、輸液ポンプを使用中の患者が3人、酸素療法中の患者3人が入院している。A君とBさんはともに入院して治療が始まった。発災から10日後、A君、Bさんの治療経過は良好で合併症もなくバイタルサインは安定していた。Bさんから看護師に「Aは好きなお菓子を食べず、私のそばからずっと離れず甘えてきます。昨夜はおねしょをしていたようで、びっくりしました。どうしたらよいのかわかりません」と相談があった。看護師の対応として適切なのはどれか。

解答・解説を見る

正解: 4

正答

4.「A君が甘えてきたら抱きしめてあげましょう」

この問題のポイント

被災体験後の子どもにみられるストレス反応(退行・分離不安・食欲低下)を理解し、不安を抱える保護者に具体的な関わり方を助言できるかを問う問題です。手がかりは次の2点です。1つ目は、発災から10日後で身体的には安定していることです。2つ目は、「好きなお菓子を食べない」「そばから離れず甘える」「おねしょ」という行動の変化です。子どもの反応を「異常な事態に対する正常な反応」として受け止め、安心感を与える関わりを母親に伝えることが鍵になります。

解説

問題文から読み取れること

A君と母親のBさんは地震で被災し、ともに入院しています。発災10日後の時点で治療経過は良好で、合併症もなく、バイタルサインも安定しています。そのため、今回の変化を身体疾患の悪化によるものと考える材料はありません。Bさんが語ったA君の変化は次の3つです。

  • 好きなお菓子を食べない:食欲の低下、楽しみへの関心の低下
  • そばから離れず甘える:分離不安、赤ちゃん返り(退行)
  • おねしょ:Bさんが「びっくりした」と話していることから、夜間の排尿がすでに自立していた子どもに再び夜尿が現れたと読み取れます(退行)

Bさんは「どうしたらよいのかわからない」と困惑しています。看護師には、A君の状態の意味を伝え、Bさんが実行できる関わり方を示すことが求められています。

被災後の子どものストレス反応と関わり方

災害で強い恐怖や生活の急変を体験した子どもには、心身にさまざまな反応が現れます。

  • 退行:夜尿、指しゃぶり、赤ちゃん言葉、抱っこをせがむなど、以前できていたことができなくなる
  • 分離不安:保護者から離れられない、後追いする、1人で眠れない
  • 身体症状:食欲低下、頭痛や腹痛、睡眠の乱れ、悪夢
  • 情緒・行動の変化:物音への過敏、イライラ、地震ごっこなど体験を遊びの中で再現する

子どもは不安を言葉で表す力が未熟なため、こうした行動や身体の変化として表れやすいのが特徴です。これらは多くの場合、安心できる環境と周囲の支えの中で、時間とともに落ち着いていきます。

この時期の子どもに最も必要なのは、「もう安全だ」「大切な人がそばにいる」という安心感です。甘えや後追いを叱ったり突き放したりせず、抱きしめる、手をつなぐ、添い寝するといったスキンシップで受け止めます。これが安心感の回復を助けます。あわせて、保護者には次の点を伝えます。

  • 夜尿や甘えは被災後によくみられる反応なので、叱らず、恥ずかしい思いをさせない
  • 子どもが話したいときには聞き、無理に体験を話させない
  • 可能な範囲で食事・睡眠などの生活リズムを整える

発災から1か月を過ぎても症状が続く場合や、悪化して生活に支障が出る場合は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)なども視野に入れます。そのうえで、小児科医や児童精神科医、こころのケアの専門職につなぎます。

保護者への支援という視点

Bさんも被災して入院している当事者で、子どもの変化に戸惑い、自身も強いストレスの中にいます。保護者の不安は子どもに伝わりやすく、保護者が落ち着くことが子どもの安定にもつながります。

看護師はまずBさんの気持ちを受け止めます。そのうえで、A君の反応が自然なものであることを説明し、「甘えてきたら抱きしめる」という今日から実行できる方法を伝えるのが適切です。これは甘やかしてしつけを後退させることではありません。安心を取り戻し、再び自立に向かうための土台づくりです。

選択肢の確認

1.「お母さんがしっかりしましょう」:Bさん自身も被災して入院中の患者であり、困惑して相談してきた母親をさらに追い込む言葉です。子どもの変化の原因が母親の態度にあると受け取られるおそれがあり、A君の反応の意味も具体的な関わり方も伝えていません。保護者の不安が強まれば、結果的に子どもの不安も強まります。まずBさんの気持ちを受け止め、A君の反応が被災後の自然な反応であると説明する対応が求められます。

2.「A君が1人になる時間をつくりましょう」:分離不安を示している子どもを保護者から引き離すと、見捨てられるのではないかという不安が強まり、しがみつきや退行がかえって悪化するおそれがあります。少しずつ1人で過ごす経験を増やす関わりは、平常時の発達支援では自立を促す意味をもちます。しかし、被災後で安心感が損なわれている時期には適しません。今は保護者がそばにいて安心させることが先です。

3.「A君に水分を控えるよう声をかけましょう」:今回の夜尿は災害のストレスによる退行と考えられます。子どもに水分を控えるよう求めると、おねしょを失敗として意識させ、恥ずかしさや自責感を強めてしまいます。被災後や入院中の子どもの水分制限は、脱水の危険にもつながります。夕方以降の水分量の調整は、5歳以上で夜尿が続く夜尿症の生活指導で用いられる方法であり、今回の一時的な退行と取り違えないようにします。叱らず、就寝前にトイレに誘うなど自然な形で支えます。

4.「A君が甘えてきたら抱きしめてあげましょう」:正答。甘えや後追い、夜尿は被災体験による退行・分離不安です。スキンシップで受け止めることで、「安全だ」「守られている」という安心感を与えられます。困惑している母親にとっても、すぐに実行できる具体的な関わりを示す助言になります。

覚えるポイント

  • 被災後の子どもの反応には、退行(夜尿・指しゃぶり・赤ちゃん返り)、分離不安(後追い・しがみつき)、食欲低下・睡眠障害・悪夢、災害ごっこなどがあり、「異常な事態に対する正常な反応」ととらえます。
  • 対応の基本は安心感の提供です。甘えを受け入れてスキンシップで守られていることを伝え、叱らない、突き放さない、無理に体験を話させないことが大切です。
  • 保護者も被災者です。不安を受け止めて反応の意味を説明し、具体的な関わり方を示すことが子どもの安定につながります。
  • 夜尿症(5歳以上で月1回以上の夜尿が3か月以上続くもの)とストレスによる一時的な退行を区別し、被災後の夜尿に安易な水分制限を指示しません。
  • 反応が1か月以上続く、悪化する、生活に支障がある場合は、PTSDなども考慮して専門職・専門機関につなぎます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する([email protected])までお知らせください。確認して修正します。

関連問題

← 111PM116111PM118 →
学習アプリでこの問題を解く(記録・メモ・カード化)