111AM078|第111回 看護師国家試験 過去問
眼の遠近調節を行う筋はどれか。
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正解: 3
正答
3.毛様体筋
この問題のポイント
遠近調節(調節)とは、見る距離に合わせて水晶体の厚みを変え、網膜上にピントを合わせるしくみです。水晶体の厚みを変えるのが毛様体筋であると知っていれば解けます。あわせて、眼球を動かす外眼筋、まぶたを上げる筋、瞳孔の大きさを変える筋の役割を区別できるかが問われています。
解説
遠近調節のしくみ
眼に入った光は、角膜と水晶体で屈折して網膜に像を結びます。屈折力が最も大きいのは角膜ですが、角膜の屈折力はほぼ一定で変えられません。見る距離に応じて屈折力を変えられるのは水晶体だけで、この働きを調節といいます。
水晶体は、周囲をZinn〈チン〉小帯(毛様小帯)で毛様体につながれ、吊り下げられています。
- 近くを見るとき:毛様体筋が収縮する → 毛様体が前内方へ寄り、輪が小さくなる → Zinn小帯がゆるむ → 水晶体が自らの弾性で厚く(丸く)なる → 屈折力が増し、近くにピントが合う
- 遠くを見るとき:毛様体筋が弛緩する → Zinn小帯が張る → 水晶体が引っ張られて薄くなる → 屈折力が減る
「筋が収縮すると吊りひもがゆるむ」という逆向きの関係で混乱しやすいので注意します。毛様体筋は水晶体を輪状に取り囲んでいると考え、輪が縮まれば吊りひもがたるむ、とイメージすると覚えやすくなります。遠くを見ているときは筋が休んでいる状態です。近くを長時間見続ける作業で眼が疲れやすいのは、毛様体筋が収縮し続けるためと説明されます。
支配神経と近見反応
毛様体筋は平滑筋です。動眼神経に含まれる副交感神経線維が毛様体神経節を経由して支配しています。近くを見るときには、次の3つが同時に起こります。
- 調節:毛様体筋の収縮
- 縮瞳:瞳孔括約筋の収縮
- 輻輳:両眼の内転
これを近見反応といいます。縮瞳も近見時に起こりますが、瞳孔の役割は光の量の調整と焦点深度を深くすることです。屈折力そのものを変えるのは、水晶体の厚みの変化です。
臨床とのつながり
- 老視:加齢で水晶体が硬くなり弾性が落ちると、毛様体筋が収縮しても水晶体が厚くなりにくくなります。その結果、近くが見えにくくなります。一般に40歳代ごろから自覚され、近用の凸レンズで補正します。筋の障害ではなく、水晶体の変化が主な原因です。
- 散瞳薬・抗コリン薬:アトロピンなど副交感神経を遮断する薬は、瞳孔括約筋と毛様体筋の両方を弛緩させます。そのため散瞳と調節麻痺が起こります。眼底検査で散瞳薬を点眼した後は、数時間まぶしさや近くの見えにくさが続きます。車の運転を控えるよう説明し、転倒にも注意します。抗コリン作用は閉塞隅角緑内障の発作を誘発するおそれがあるため、禁忌の確認も重要です。
- 房水の産生:毛様体は房水をつくる場でもあります。房水は後眼房から瞳孔を通って前眼房へ流れ、隅角のSchlemm〈シュレム〉管から排出されます。
眼の筋の整理
- 外眼筋(骨格筋・眼球を動かす):上直筋・下直筋・内側直筋・外側直筋・上斜筋・下斜筋の6つです。外側直筋は外転神経、上斜筋は滑車神経、残りの4つは動眼神経が支配します。
- まぶたの筋:上眼瞼挙筋(骨格筋・動眼神経)がまぶたを上げ、眼輪筋(顔面神経)がまぶたを閉じます。
- 内眼筋(平滑筋・自律神経支配):毛様体筋(調節)、瞳孔括約筋(縮瞳・副交感神経)、瞳孔散大筋(散瞳・交感神経)があります。
選択肢の確認
1.下斜筋:眼球を上外方へ向け、外旋も担う外眼筋で、動眼神経が支配する骨格筋です。視線の方向を変える筋なので、水晶体の厚みには関与しません。近くを見るときの寄り目(輻輳)は主に内側直筋の働きで、これもピント合わせとは別の動きです。
2.下直筋:眼球を下方へ向ける外眼筋で、動眼神経が支配する骨格筋です。足元を見るときなどの視線移動を担いますが、屈折力の変化には関わりません。動眼神経麻痺ではこの筋を含む複数の外眼筋が働かなくなり、外側直筋と上斜筋の作用が残るため、眼球が外下方へ偏位します。
3.毛様体筋:正答。毛様体の中にある平滑筋で、動眼神経の副交感神経線維が支配しています。近くを見るときに収縮すると、Zinn小帯がゆるみ、水晶体が弾性で厚くなって屈折力が増し、網膜にピントが合います。遠くを見るときは弛緩し、水晶体は薄くなります。
4.上眼瞼挙筋:上まぶたを引き上げて眼を開く骨格筋で、動眼神経が支配しています。そのため動眼神経麻痺では眼瞼下垂が起こります。交感神経支配の上瞼板筋(Müller筋)が障害されるHorner症候群でも、軽い眼瞼下垂がみられます。まぶたの開閉は、水晶体の厚みとは関係がありません。
5.瞳孔括約筋:虹彩にある輪状の平滑筋で、動眼神経の副交感神経線維の働きで収縮し、縮瞳を起こします。対光反射や近見時の縮瞳を担い、眼に入る光の量を調節しますが、水晶体の厚みは変えません。選択肢3の筋と同じ副交感神経支配で、近見反応でも同時に働くため、取り違えやすい点に注意します。瞳孔を広げるのは、交感神経支配の瞳孔散大筋です。
覚えるポイント
- 近くを見るとき:毛様体筋が収縮 → Zinn小帯が弛緩 → 水晶体が厚くなる → 屈折力が増す。遠くを見るときはその逆です。
- 近見反応は「調節・縮瞳・輻輳」の3つで、いずれも動眼神経が関わります。
- 外眼筋の支配神経は、外側直筋=外転神経、上斜筋=滑車神経、その他の4つ=動眼神経です。上眼瞼挙筋も動眼神経が支配します。
- 瞳孔括約筋は副交感神経で縮瞳、瞳孔散大筋は交感神経で散瞳を起こします。
- 老視は水晶体の弾性低下で調節力が落ちた状態で、凸レンズで補正します。抗コリン薬や散瞳薬は、散瞳と調節麻痺を起こします。
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